テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「リーシア……今助けに行こう」
ゴウセルはそう小さくぼやきながら、リーシアがいる方へと向かう。「しかし……かなり深刻な状況だな、彼女に眠っている力というものは、やはり相当恐ろしいものだった、これが……心が憎しみや恨みの感情で支配された末路か……」
と彼は彼女がいる場所の追跡を急ぐ。と、その途中に彼女の抑制を図っていたが、その末に重傷を負って倒れてしまった二人をゴウセルは見かけた。
「お前達は何故こんなところで倒れているんだ?まさか‥…彼女を止めようとしていたのか……?」
「あ、ああ……そうだ、姫様は……憎しみと恨み‥……怒りで狂われておられる……かつての人間達に対しての復讐の制裁を下そうとしている………色欲の罪を背負う大罪人‥…姫様の事をお救い出来るのは、貴方しか居ない……だから、姫様を……救い出してくれ………」
「ああ、そのつもりで俺は彼女を追っている。お前達は早く安全なところへ逃げ、その傷を治療して貰った方が良い」
「申し訳ないけど……我々はそうさせて貰う‥‥頼んだ…姫様の命運とこの国の未来は貴方に懸かっている」
そう二人は告げ、傷を抱えながら彼にリーシアの事を託して退避した。ゴウセルはリーシアの元へと足を進め、気配を探知しつつそれを頼りに進んでいくと……「リーシア、此処に居たのだな、そしてその姿……随分と変わり果ててしまったようだ」
「何なの?また邪魔者……、!!!!??、あ…………あ………」
リーシアは自身に近づいてくる対象者を全て敵と認識している状態だが、それは一転し彼と理解した途端に、動揺した。
リーシアは眠りし本来の自分が目覚めた…その前提的な事実は変わらない。だからこそ、もうゴウセルは生きていない……死んでいると、そう認識していたから、彼が目の前に立っていると分かった瞬間、立ち尽くしたのだ。
だが、それも束の間、押し寄せてくる憎しみや恨みが湧き上がり、「はあ、あの人間共が憎くて仕方ないわ、一人残らず…排除しなきゃ、湧き上がる怒りが止まらない……私の復讐を邪魔する奴らは排除する、我々魔神族の永劫なる誇りの為に…」
「リーシア、その怒りを鎮めてくれないか?それにそれは君自身の感情というより、君の中に呪いと共に棲む魔神の怒りだろう?君自身はこんな事したくないと思っている筈だ、魔神の感情に支配されるな、それに俺はこうなった以上、君を救い出す役目がある……君をその憎しみと恨み、怒りで縛られた苦しみから解放しよう」
ゴウセルはそう彼女に言い放った。
「救う?どうやって救うというのかしら……?ふふっ。散々な目に遭わせてきたあの醜き人間に復讐の制裁を下して侮辱してきた重罪の懺悔の宣告を告げるの、我々魔神族を侮辱したら……どうなるか……死よりも恐ろしい処刑で知らしめてやる…!ふふっ…… 」
リーシアはただ一つ、復讐に心を囚われているようで人間達を哀れむような微笑を浮かべる。憎しみと恨み、怒りで満ちた彼女。
ゴウセルが現れた事で、少しは心に動揺が感じられた……と思ったが、どうやらそれさえも凌駕する程に抱え込んでいた復讐の怨念が強いようだ。
「闇に堕ちた事というのは、こうして君と対峙する前既に薄々勘付いていたが、そう安易には心は開かないか…だが、君と出会ったその奇跡を決して無駄にはしたくない、だから俺は君を例えどれだけ時間を要しようが、君を必ず救い出す 」
「救い出す……?、嘆かわしい……貴方に何が出来るって言うの?ふふっ、はははっ!邪魔しないでくれる?私はこの最期の灯火になったとしても、復讐を成さずに消滅はしない…私はこの国を滅亡させ、そして我々魔神族が、この国の支配者となる……! 」
「リーシア、本心ではこんな事したくないにではないか?君のその湧いてくる復讐心というのは、憎しみや恨みの果て……君自身の意思というよりも魔神の意思に操られているように思えるが…」
「煩い‥……煩い…!!私は魔神族の創造主…、失っていた記憶と力はもう全て戻った…あの醜き人間共に粛正し、鉄槌を下す…彼奴らの侮辱の過去‥忘れたことはなかったわ…!!」
リーシアが抱く憎しみが倍増し、無慈悲なる復讐の征戦を続ける。
「余程……君の中にいる魔神は過去の憎しみと恨みを積もられていたのだな。こうなってしまった以上君を容易に光へ導けないという事は分かっていたが、此処までとはな」
ゴウセルはそっとリーシアに近付き、彼女に対して躊躇いをみせながらも魔力行使でリーシアを深淵の闇から救い出す算段に出た。
「誰かを傷付けるという事に対して、こんなにも躊躇うという想いを抱く事になったのは君が初めてだ、心というものが存在しない……だからこそ、感情の共有は出来ないが、それでも君を苦しめるのは……慣れないな」
激情に満ち溢れ、復讐…憎しみ、恨み…怒り……蓄積し、一層強くなった彼女の表情はもう微笑さえなくなって、ただ……怒りだけがより際立っている。
「消え失せなさい……醜き憎しみの象徴…無様な愚者共よ…」
リーシアは未だかつてない程に自身に秘められていた内なる力を全解放し、徹底的にこの国を破滅へと陥れようと…。その一心に囚われたリーシア。
「相当な恨みと憎しみを永い月日の中塞ぎ隠していたんだな、君から感じる感情は憎しみと恨みで埋め尽くされている、君をその苦しみから解放しよう」ゴウセルはリーシアに寄り添うように、言葉をかけ、躊躇しつつも、彼女の事を救うのを決して諦めたりはしない。
「惨めな愚者共が……一人残らず…直々に制裁を下してあの忌々しき侮辱の罪を……命を持って償ってもらう……」
「リーシア……過去の苦しみに蝕められるな」
「…………ははっ……、この国は終焉を迎える、あの愚かな人間共は私の全てを解放させ、目覚めさせた、ほんとに愚かで哀れな種族ね」
止まらぬ憎しみの念、かつて人間達から受けた蔑みの数々……、それが彼女の中に眠る魔神の逆鱗に触れ、怒りを買い、その憎悪の感情が器であるリーシアに移り、リーシア自身も強い恨みや憎しみを感じていた。
「力が……沸々と湧き上がってくる‥…私に眠る力……ああ、本当に快感だわ…こんな膨大な力を肌で直に感じ取れる感覚は初めて……あははははははっ…!」
リーシアは狂人のような人格に成り変わり、力の放出も最高潮に達していた。「もういっその事どうなったって良い…どのみち……この身体は何れ膨大な力のエネルギーに耐えきれなくなって灰と化すだろう……もう、そうこの命も永くない」
リーシアは恨みと怒り、そして憎しみで心が支配されているこの現状で何れ舞い降りる終焉の訪れによる、『自身の最期』を悟り始め、もう全てを諦めたようだ。
一方で、ゴウセルはリーシアを闇の支配から救い出すべく彼女に立ち向かい続ける。
得意属性である精神魔力で、彼女が抱く負の感情の暴走を鎮めようと試みる。
「っ……!!、あ………あ……!!」
「君に対して……こんな荒技を使うなどしたくなかったのが本音だが、その様子では君としての自我も正気も全て魔神に呑み込まれてしまっているように思えるからな、その憎しみと恨みで埋め尽くされている鎮まらない感情を、君から消去するすれば、楽になるだろう」
ゴウセルは最大限に自身の力を発揮し、覚醒状態になったリーシアを止めるべく、しかしまさに極限状態のリーシアを前に苦闘を強いられる事になったゴウセル。
「さあ、滅びるが良い……」
リーシアは蓄積された膨大な量の魔力エネルギーを解放し、一気にこの国は混沌の渦に呑み込まれていく。
と、彼がリーシアを救い出す為に懸命に挑む中、メリオダス達は残る戦力……聖騎士長達と強大な力を持った強者、魔神族の血族者騎士団らの殲滅に少々時間がかかってる模様だが、一人でリーシアを止めに向かったゴウセルの戦況が頭に過り、「彼奴‥‥大丈夫なのか……」「分からない、しかし今は奴を信じる他ない、彼女を深淵の魔神の闇から救い出せる希望の一筋は、奴だけだ。我々は今目の前に立ちはだかっている事に専念しよう」
「ああ、だな…!!」
その頃……「所詮……その程度かしら、全く痛くも痒くもないわ、力を全て取り戻した私はもはや、この国を支配する覇者…愚かな者達は平伏すが良い、破壊の衝動が…暴れ狂うの……」
リーシアはやたら血気盛んな人格へ、破滅の終焉への刻が刻まれていく。
それに対抗するように、ゴウセルは精神魔力を断続的に放ち、リーシアの心に打ち込み……だが、彼女の中に眠る魔神が抱いている怒りや憎しみがリーシアを呑み込み、それらの手段さえも効力がなくなってしまい、無意味に等しいという、まさかの現実……。
「私が創り上げた世界の秩序を乱した……我々魔神族を呪われ者と称した者達、この私を蔑み、侮辱してきた愚か者共…全部たかが弱小種族が……ああ、怒りが収まらない…!!」
「まさか、こんなにも人間という種族に対し、これ程にまで強い感情を抱えていたとは…彼らもまた『罪人』という訳か……」
どうやら、闇に堕ちたリーシアに救いの光を差し伸べられるようになるようになるには、まだ暫し時間を要する模様。
憎しみに廃れた心は怒りや恨みに感情に、彼女の秘めたる力を放出させるリミッターとなり、その不穏な連鎖が、更なる感情の浮上に拍車がかかる。
「…………滅びなさい……」
リーシアは人間達へ、無慈悲なる制裁の鉄槌を下し続ける。
「私は魔神族を統べる覇者…あらゆる種族の脅威の存在の種族…我々は支配こそ、望ましい…だが、その一方で何故此処まで嫌悪されなければならないのか、理解が出来ない……」
怒りの感情が更に引き出された事で、彼女の要望は変貌を遂げ…これこそが本当の、彼女の本当の姿なのだろうか。
深淵に染まった闇、堕天使を彷彿とさせる翼に刻印や紋様が彼女を覆う。
「もう全てを破壊して滅亡させ、もういっその事この身体ごと楽になりたい……ああ、次々に湧いてくる止まらぬこの衝動……ああ、とても最高な気分ね」
リーシアは自らの有り余る全ての力を使い果たしたその時、自身の身体は力の反動に耐え切れなくなって塵となり、消滅しゆくその結末を悟り、彼女はこれが……最期となってしまうのだと…。
「まずいな、このままでは……君を救い出さなければ…君は決して失わせはしない…必ず君を救い出す」
「…………魔神族には相応しくない意見ね、我々は破滅と支配の象徴‥…それこそが魔神族に相応しいの、あははははっ、ははははははっ…!!」
ゴウセルは終焉の最期という運命を辿ってしまうリーシアの運命を変えるべく立ち上がる。「…………滅んでしまえば良い……国ごと全部…」
枯れた表情で……人間を見下すかのような、冷酷な目つきで、人間達を見下ろす。
「リーシア、君は何があってもこの身体が、例え傷だらけになろうが……君を救い出す、その瞬間まで諦めない 」
まだまだリーシアとゴウセルとの対峙は続きそうだ。その頃、一方メリオダス達は手こずっていた末に、やっと無数に立ちはだかっていた敵の軍団を全て倒し終わった。
「やっと……終わったか……」
「ああ、だが……やはり奴の方はまだ時間を要するようだな。後の結末は全て奴に懸かっている」
あの無数の騎士団軍団との戦闘を制したメリオダス達は、急いでゴウセルと合流する事にし、「ゴウセル…!!」
「…………邪魔者の気配がした…はあ………」
リーシアは冷酷な面持ちで近付いてくる気配の方向へ向いた。だが、リーシアはメリオダス達にまともに目もくれず、ゴウセルに視線を戻した。
「…………人数が増えようがどうでも良い、破滅の淵に叩き落す良い餌食が増えたってだけの事、どうせ私は朽ちていくのよ、それならいっその事……全て……邪魔な存在をこの国ごと…!もう苦しみから……呪われた存在でしかない私は……穢れ者だ、まあ侮辱された屈辱は……忘れなどしない、あの人間共は死して当然よ」
彼女は極大なる制裁を振るう。
「…………復讐の邪魔をしないでくれる?」そう言ってリーシアは翼を広げ、飛び立った。「リーシア、待っていてくれ、君は何があっても必ず救い出す」
そう言い残し、ゴウセルはリーシアを追いかけて行った。「団長、追わなくて良いの?」
「リーシアの事を救い出せる唯一の救世主は、彼奴しか居ねえ。今は彼奴を信じて待つしかねえー」
「ああ、彼奴ならリーシアを救い出せるとそう信じていよう。何より彼奴はリーシアとの絆や信頼、親睦もより深まり続けている、その証拠に恩恵の数々がリーシアに反映されたのも事実……時間はかなり要する事になるだろうが、今は信じて待つとしよう 」
「ゴウセル殿………」
アーサーを含め、メリオダスらは不安な思いを抱え込みながらもゴウセルの運命を願う。その頃、リーシアは…………未だ激情のまま、収まらない復讐の矛先を人々に向け続ける。
「リーシア、見つけたぞ」
「何なの、私の事をずっと追ってきて……復讐の邪魔をする気?消え去って…この地は……我々魔神族が支配する……」
「俺は君の事を取り戻しにきたんだ、君を呪縛の全てから解き放ち…幸福なる未来を紡ぎ出す為に……」ゴウセルはそう言ってゆっくりとリーシアの方へ歩き出し、「まだそんな戯言を言ってるなんて、貴方に私の何が分かるって言うのかしら?魔神族こそ、種族の頂点に相応しいの、そんな種族を侮辱してきた哀れな人間共は滅びるべきよ」
「リーシア…………」
「全てを支配し、破滅させる……私を侮辱した罪はまさに死罪も同然よ、愚かな人間共にはその鉄槌を下す刻……」
「全ての記憶と力が舞い戻った今…一気に込み上がってくる…ああ、忌々しいわ!!この私を蔑んできた愚かな奴らは……一人残らず、粛正する…!!」
「やはり、まだ怒りは収まらないか、それ程君と…君の中に封じ込められた魔神は根深い感情を抱いて時を刻んできたのだな」
「………………ふふっ……ふふふふっ…また力が沸々と湧いてくる……もう…どうなったって良い……私は……破滅の終焉と共に消滅の刻を散らす」
「ここまで憤りの感情が募っていたとは…それならこんなにも復讐というものに対し、執着するのも無理はない。だが、君自身自らの破滅の運命を悟っているのなら、朽ち果てる運命から逃れたい、その意志が少なからず君には、あると感じた。憎しみや怒りが君を支配しているが、だからこそ、君をそんな状況から救い出したいんだ」
「っ……!!!、何なの……私に同情すれば…私が大人しく鎮まると思ってるのかしら?感情がない貴方に……私の過去の苦しみが分かる?」
収まらない彼女の憤怒と憎しみ……でも真の‥‥彼女の終焉の刻まで、もうそんな猶予はない。
「君の記憶を覗いた。勿論それは全てではないが、だが多少なりとも…君がどんな生涯をこの時まで歩んできたのかも把握済みだ。魔神族であるが故に、人々からは忌み嫌われ…軽蔑の眼差しを向けられていた事……更には種族内での反乱、君が保っていた均衡バランスが崩壊し、何時しか力によって支配されていた……」
「だから何なの……?はははっ……はははっ…!!」
リーシアは次第に、もはやこの地ごと滅亡させる…という最悪の方向へ陥れようと考え、もう力尽きるまで時間がないから。
「あああああああああああああっ…!!!!!」
怒り、憎しみ更には哀しみも混ざり合って感情の混同によって力が膨大化し、彼女に在る全ての魔力エネルギーが大きく…、「…………最初の時点で安易に説得する事は難航な状況にあった事は分かりきっていたが、これはそう安易に収まるような事態ではない…しかし、君と出会った以上…君を救うと誓い決めた以上、俺には立ち向かう理由がある… 」
「ああ、醜い‥‥憎い……」
終焉の終末を迎える事になるのか…、それとも希望の光がその運命を救うのか……。
「リーシア……」
「滅ぼして…………やる……」
復讐心は止まる事知らずの状況で、激情の憎しみと怒りは彼女の心を覆い尽くす。「終焉の訪れの時は……満ちた‥……」
リーシアは秘めたる力を全開放し、蓄積された魔力エネルギーは大いなる絶大な力へと成り変わり。彼女は秘められし眠っていた全てを取り戻し、完全体が完成した。
「これこそが……本当の私……ああ、ずっと眠っていた力……あはははっ……はははっ……」リーシアは無情な、乾いた微笑を溢した。「ああ……あああ…!!、あ………」リーシアは怒りに満ち溢れ、同時に膨大なる力が膨大化した影響で、彼女の身体は限界を超え…段々と身体が朽ちてきている。
「リーシア……?」
ゴウセルは彼女の身体が朽ち果てて、消滅の時を刻み始めている事を悟り、もうこれ以上は時間をかけている場合ではないと、そう思い迅速に彼女を光へ引き戻す。
「もうどうなったって良い……私は……この国全土の消滅と共に……消滅する……あははは……」
「闇に囚われながらも、死への恐怖には抗おうとしているのか…光へ引き戻すなら、今が好機か」
ゴウセルはリーシアを救い出そうと食らいつき、彼女を絶望なる深淵の闇から救い出したい、その一心で……!。
そのゴウセルの強い意志が彼女を救う一筋の光となり、「なんだ……?魔力エネルギーが…湧き上がってくる……しかし何故このタイミングで……」
彼に突如として伝う力、それはリーシアからの……【助けて、救い出して欲しい】というメッセージなのかも知れない。「何故このタイミングで、力が宿ってきたのかは知らないが、この力なら、リーシア……君を蝕むその感情から救い出せそうだ」
ゴウセルはそう言って、彼女にゆっくりと接近し、彼は彼女の身体に触れようと手を伸ばす。「っ……!!、やめ……なさい……っ」
「あ………ああ‥‥‥あああああああああああっ…!!!」
リーシアは叫び喚き、そして膨大な量の魔力エネルギーの力に身体が耐えきれなくなり、抑えきれない状況になった。
ゴウセルが導いた一筋の光によって、深淵の闇から救われたリーシア……だったが、元の姿に戻ったリーシアは朽ち果て、その生命の灯火は…………消えた。
「リーシア……??」
そうしてリーシアとの決着をつけたゴウセルはメリオダスらに合流を促す為に再度指示を伝達した。
「ゴウセル……!!」
「団長……」
「無事で何よりです、ゴウセル殿!それで……彼女は…… 」
アーサーがそう尋ねると、ゴウセルは一点を指差した。そこには……力尽きて朽ち果てたリーシアが倒れていた。
「姫様……!!」
アーサー達は彼女に駆け寄った。
「姫様………そんな…………っ……!」
「リーシア……」
「もう完全に彼女の生命は尽きてしまったようだ…呪いの支配によって彼女が滅び、最期を迎えた…この瞬間を彼女は悟っていたのだろうな、やけに死に対する感情は諦めていたようだった」
「完全なる目覚めを遂げた以上……これが最期となる事は我々も‥承知していた…けど…だけど!!」
泣き崩れる魔神族の血族者…と、もう一人がこう提案したのだ。
「呪いを完全に消し去れば、姫様はまた生き返る…もう二度と呪いで苦しまれないように魔神族という種族から逸脱させれば……もう晴れて姫様は自由の身になれる…」
「ああ、確かにその手はあるが……けど代償が必要だ、あのお方を蘇生し、その上種族を変えるには、それ相応の対価が絶対条件だ」
「代償なら俺が背負う、だからリーシアの事を蘇生してくれないか?」
「正気かい?安易に代償といえども、蘇生と種族解離をさせるには、かなり重い代償を貴方は払う必要が在る‥……君の中に在る『何か』を失う覚悟はある?」
「ああ、当然だ」
「そう……なら今すぐ始めるとしよう。準備自体はそんなに手間はかからないから、それに姫様の亡骸は時間の経過と共に、段々と塵となっていく、そうなる前にやってしまおう」
「ああ、頼む」
「じゃあ姫様の隣に寝てくれる?そしたらすぐに始める」
そうしてゴウセルは言われた通り、リーシアの側に仰向けになった。すると何やら詠唱と同時に眩い光が発生し、その光は二人の意識と脳内に語りかけ、対価として差し出す代償を問いただした。
「願いを叶える前に、お前が差し出す代償を答えよ」
「記憶の半分を差し出す」
「良いだろう、では願いを言いたまえ」
「リーシアの種族を魔神族という枠組みから除外して欲しい、そして彼女に永遠なる生命と不老不死の生涯を与えて欲しい」
「面白い‥ではその願い、叶えてやろう」
等価交換の交渉は成立し、こうして次に彼が目覚めると、願いは無事叶いリーシアは生き返っていた。
「ゴウセル‥…!!」
「………リーシア、どうやら成功したようだな」
「ゴウセル……ごめんなさい……ごめんなさい……」
彼女はぎゅっとゴウセルに抱きつき、涙を溢した。「リーシア、もう泣かなくて良い‥‥全て終わり、これからは平穏な日々に戻れる」
「ゴウセル‥…ありがとう…救い出してくれて…」
「無事決着が着きましたね」
「ああ、この国の滅亡すらも危ぶまれてたが、これで平和が戻るな!」
「ええ」
こうして終焉の終末は回避でき、このキャメロット王国にまた平穏が訪れるようになった。この国の復旧は勿論、アーサーは改めてリーシアの事を国民達に話し、和解も成立した。
その一方で、聖騎士達や首謀者を含めた魔神族達はキャメロットの聖騎士達に捕られ、連行された。旅路も終わり、リーシアは故郷であるこの国に残り、それに伴いリーシアの意向と意志でゴウセルもキャメロット王国で暮らす事になり、メリオダスらとは終わるをする事になった。
「これで、もう怯えなくて良い。自由に生きていける」
「ああ、そうだな」
永きに渡る彼女の旅路は幕を閉じたのだった………。
次回、いよいよ最終回!!