テラーノベル
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魔神族によって引き起こされたあの壮大な聖戦が幕を閉じ、それから数年後荒れ果てていたキャメロット王国に広がる街並みは復旧していき、人々達の活気も戻っていた。そんなとある日メリオダス達はアーサーからキャロットへ招待され、向かう事になった。
「すっかり元の日常に戻ったな」
「ええ、そうですね」
彼らは再び再生していく街並みを眺めながら、平穏な光景に浸っていた。そんな話をしていると、
「お待ちしていましたよ、メリオダス殿方!」
「随分と久方振りだな」
「あれから、見ての通り街の復旧が進んで、元の平穏な日常に戻りました」
「無事に平穏が取り戻せて何よりだ!それでー……今日俺達を招集した理由って…何なんだ?」
「そこまで大した事ではないのですが……復旧して平穏を戻していっているその過程を見て頂きたかったので……それとあれから色々と変化もありますしアーサーはそう言い、メリオダス達を案内し始めた。
再び再生していく街並みを眺めて歩幅を進めていく。ここでマーリンがとある事が気になったようで、「そういえば、まだあの二人を見かけていないような気がするんだが……」と。
マーリンが言う『あの二人』と言うのは言わずもがなゴウセルとリーシアの事だ。「ああ、あの二人の事なら案内しますよ、では着いてきて下さい」
アーサーはそうして、メリオダス達をゴウセルとリーシアが居る場所へ案内し始めた。二人の居場所のところへ案内に、足を進めようとしたその時、「アーサー王、宜しければ我々もそれに同行しても宜しいですか…?」と話しかけてきたのはラディリオともう一人の魔神族の者。
「お前ら、もう傷は大丈夫なのか……?」
「ああ、治癒魔力を持つ医者から治療を受けて何とか治った」
「それで‥…、貴方方達は、これから姫様の……いや、リーシア様とあの大罪人に会いに行かれるのですよね、それに我々も同行しても?」
「分かった、一緒に行こう」
こうして、リーシアとゴウセルの元へ向かうのだが、アーサーによれば二人は王宮付近の場所に設けられた建物に二人で住んでいるらしい。
暫く移動する事数分後、それらしき建物が見えた。
「あ、着いた…此処です」
「此処が……」
「では彼に少々話をして許可を貰ってきますね」
「………?、どう言う事だ?直接は会えたりしないのか?」
とメリオダスは困惑な反応を見せた。
「会う事は出来ますが……彼女、あれからゴウセル殿に対しての依存症状が重症化して、依存による重度の精神病と診断されたらしく、彼以外の人物との接触をしないようになっていて、どうやら彼に近付こうとする人物全てを彼に危害を加える対象と捉えてるようで……」
「成る程な、過去の出来事の記憶が残ってるから余計に警戒しているのかもな、それにこれまで散々自分の目の前で彼奴が傷付いていく瞬間を目にした訳だから、そうもなるか……」
「ええ」
「そういう事なら仕方ないな、じゃあ事情説明任せたぞ」
「はい、では……」
アーサーがゴウセルに交渉している間メリオダスらは待っている事に。「交渉した結果、大丈夫との事ですが、ただ彼女にあまり刺激を与えないように一定の距離を離して接して欲しいとの事です」
「分かった」
アーサーが同伴の下、メリオダスらは二人と数年振りの再会を果たした。
「久方振りだな、ゴウセル」
「…………ああ」
ゴウセルは何も動じる事なく接するが、その一方でリーシアは警戒しているようで彼らの方を見ていない。「リーシア、大丈夫だ。怯えなくて良い、だからそんなに警戒しないでくれ‥敵ではない」
アーサーから色々二人についての情報も離して貰い、キャメロットでの進境を知れた。
と、そこでエリザベスがリーシアのとある箇所に注目した。
「あの……もしかしてリーシア様、今…妊娠を…」
「ああ、その通りだ」
「精神病もその身籠りが発覚したのと同時期に分かったようで、それだけじゃない、彼の方に大きな問題がある事も…… 」
「大きな問題……?どう言う事だ…?」
「メリオダス殿、彼と離して違和感を感じませんでしたか?」
「言われてみれば……え……まさか、お前…あの時リーシアを蘇生する為に差し出した代償って……」
「ああ、俺はあの時自分の記憶の中の大部分を対価として差し出した。だから、こうして団長達と話しているのも、微かに残った記憶を頼りにしている、最初は持っている記憶全てを差し出そうとしたが、やめたんだ」
「通りで反応が遅いし、記憶喪失でも起こしたかのような不自然な距離感な訳だった訳か」
「全てを失う事など、何より彼女が望んでいない事だ」
「でも、リーシア様が変わらずお元気なご様子で安心しました」
「私はもう敬いを受けるような立場などではない、そんな敬称もう不必要よ」
リーシアは『姫様』と呼ばれていた頃の存在でも、ましてやもう魔神族ですらもなくなった為に今となっては、姫様という呼称が気に食わないようだ。
「少し休むか?今の君は精神的に感情というものに敏感になっているようだからな」
「ゴウセル……ありがとう……私の事……色々気にかけてくれて……こんな私に優しく寄り添ってくれて……」
「君が心からの幸福を手にする事が出来たのなら、記憶を失おうが…痛みにもならないな 」
休息を取って、暫くすると彼女の精神状態は落ち着き、談話をする。
「にしても、知らない間に二人が結婚していて、まさか子供も出来ていたとはな」
「ええ、私も最初彼女から話を聞いた時は驚きを隠せませんでしたが、リーシアにとってはこれから永久的に続く心からの幸福を手に入れられて、本当に喜んでいるようです」
そう話していると、リーシアは徐々にメリオダス達に対しての警戒心が解け、一緒になって楽しく談笑し合う。
「ふふっ」
彼女は不意にゴウセルを抱擁した。彼に対しての依存や溺愛感情が高まったというのは、どうやら紛れもない真実のよう。「平穏な日々が戻って本当に良かった、もう…痛みにも苦しみにも囚われないで自由に生きていける…ゴウセル、私の事救ってくれて…本当に感謝してる、ありがとう」
リーシアはそう言ってゴウセルに微笑みかける。
「君は俺にとって何よりも最愛でかけがえのない存在だ、この先も君の傍に居続ける、それは永久に変わらない」
「ありがとう……」
すると、嬉しさのあまり、嬉し泣きをした彼女。その涙を隠すようにまた抱擁を求めた。泣いちゃうと、心配させてしまうから。
「溺愛依存が以前よりも益々増してるな、まあだから精神に大きな病を抱える事になっちゃってるんだろうけど…」
「はい、正直今回の交渉もてっきり失敗するかと思ってましたが…あの頃よりもリーシアはゴウセル殿に対して溺愛感情から来る独占欲もより強くなってる感じに見えます」
「……‥まさか子供を恵まれる日が来るなんてね、守りたい存在がまた増えたね、もうすぐ……もうすぐでこの子に会える…、私達が結ばれて……また幸せの象徴が」
リーシアは妊娠に伴い、月日を追うごとに膨らみ行くお腹に手をそっと当てて、見つめていた。
「ああ、だが無茶だけはしないでくれ、以前の君は苦しみと不幸ばかりだった、だからこそ今度こそは君には、苦しみなどない…平穏な日々を歩んで欲しいんだ」
「ありがとう……ゴウセル……!心配してくれて‥…」
リーシアはまた彼の優しさに嬉しくなって微笑を溢した。そんな幸せな瞬間を、アーサー達はそっと静かに見守っていた。
「ゴウセル殿、彼女の事やこの国の平穏を取り戻して下さった事、誠に感謝致します」
「俺は最初から彼女を救うつもりだった、それ以外に理由はない」
「良かったね、リーシア。本当の意味で幸福な日々の中で暮らしていけるようになって願いが…叶ったね 」
「うん………」
「リーシア…?」
「依存症状と精神病を患ってしまった弊害で他者には警戒心が高まって、言わば人間不信になっているようだ、だが今は以前とは違いリーシアに対しての人間達からの理解も随分進んでいる筈だが…それでも治らないようだな」
「ええ、間違いないですね。それに今はお腹に子供を身ごもっていますから、今のリーシアにこれ以上のストレスや負荷をかけない為にも、我々は一旦離れますね」
「ああ、すまないな」
そうしてアーサー達は部屋を出て二人きりの状態の空間環境にした。
「………ごめんなさい……また迷惑かけちゃったね」
「君が自分を責める必要などない、君は君の身体を大切にしてくれ、それにもうずっとこの先も離れる事などなく、永久に一緒だ」
二人は手を握り合い、互いに温もりを感じ合う。「ふふっ、こっちも暖かいね…元気にこの子が動いてる鼓動を感じる……こんなにも幸せを肌で感じれる日が来るなんて、想像も出来なかったよ」
「そうか。君が幸せを感じれているのなら、それだけで十分だ」
リーシアは妊娠中のお腹に触れ、そこから感じる胎動で…宿っている我が子の存在を感じ取る。彼女は既に妊娠後期に入っており、子供との待望の瞬間を迎えるのも近々の頃合いになっていた。
「もっと貴方に甘えておきたいところだけど、少し休憩するね。もうすぐでこの子に会えるから」
「ああ、良い判断だろう。俺は君の傍から離れる事など……君を孤独になどしない、だから君は今の身体を労っていてくれ」
「ふふっ、ありがとう…けど、その前に……」
「……‥?」
すると、リーシアは彼女にぎゅっと寄り付いて抱擁をし、さらにメリオダス達が離れている今が好機だと思い、溺愛、依存の証として口付けも。
「ふふっ、貴方と居る瞬間が一番幸せよ、もう手離したくない…誰にも貴方を触れさせない…ゴウセル、ずっと永遠に貴方の事を愛してる」
「………このような言葉を言うのには、あまり慣れていないが…君になら言える、リーシア…君の事を愛してる」
そう言って、二人は抱擁した。と二人が愛に満ちたひと時を過ごしている間、メリオダス達は二人の家から少し離れたところで、色々と話していた。
「あの頃と変わらない様子で安心したな、まあ全く変わってないって訳じゃなかったけどさ」
「そうですね、説明した通り彼女……見知った関係性の者であっても最近は特に何かと誰であってもゴウセル殿に何か危害を加えるんじゃないかって警戒してるのが、殆どで…気持ちが大きく膨らみ、深まったのも相まって依存感情や溺愛感情をやたらと示したりと、まあ今はそれだけじゃなく本能的に警戒心が強まってもおかしくない時期のタイミングです、仕方ない側面もあるのですがね…」
「ああ、だな」
「けど、ほんとに驚いたよ!まさか二人に子供まで出来てたなんて!」
アーサーとメリオダスらはその後も語り合い、すると此処でアーサーから、「この国の平穏が戻った事を祝して祝祭をやるのですが、 メリオダス殿方達もどうですか?まあ、開くとしてもちょっと先の話にはなりますが……」
「俺達まで……良いのか?けど、この国の窮地とリーシアを救い出したのはゴウセルだろ?」
「彼は英雄騎士としての特別な称号を確りと与えるつもりでいます。何より、メリオダス殿方達の協力もあってこの国は救われたのですから、この国の王としてきちんと感謝の気持ちをお伝えしたいのです」
「そういう事なら出席させて貰うか!」
「祝祭か〜、凄く楽しみ!」
「態々此方へ来てもらったのに、何もお礼をしないのはも申し訳ないですからね。祝祭当日までは自由にしてて貰って構いません」
「おう!じゃあ、お言葉に甘えてそうするか」
アーサーからの誘いを受けたメリオダス達は祝祭を開催するとの事で、それが開催される当日までの間、再びこのキャメロット王国に滞在している事になった。
平穏に戻った街並みを気ままに見歩き、「あんなに荒れ果てていたのに、まさかこんな早く復旧が進んでいたとはな」
「ですね、人々が笑い合い…微笑ましい光景が広がっていますね」
「うん…!」
と歩いていると、バンとキングの二人は何だか見覚えのある後ろ姿を見つけた。あの時駆けつけてくれた人物達の中の一人……、そう、エレインだ。
「え……?エレイン…!!?、どうして……だって君は……」
「驚いた……?ふふっ……私も何でかは理解出来てないけど、でもこうして兄さんやバンに再会出来た」
「お前にはもう会えねえーって思ってたけど、まさかこんな事もあるなんてな〜」
「この国……良い景色が広がってるね 」
「…………だな」