テラーノベル
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80話投稿して♡数6000台ってやばくね?
1話100も♡ついてないってことでしょ?(頭弱弱人間)
薄暗い寝室の空気は、昼間の喧騒をすべて吸い取ったかのように静まり返っていた。カーテンの隙間からこぼれる月明かりが、絡まり合う二人の影を淡く、けれど鮮明に浮かび上がらせている。
太宰は中也の逞しい胸板に顔を埋め、その温かな鼓動を耳の裏で感じていた。両腕は、中也の腰回りを折れそうなほど強く抱きしめている。細い指先が彼のTシャツをきつく握りしめ、布地が白く引きつっているのが、彼女の隠しきれない独占欲の表れだった。
「……なぁ、太宰。……苦しいんだけどよ。お前、いつまでそうしてんだ」
中也が少し困ったような、けれど隠しきれない甘さを孕んだ声で呟いた。彼は少しだけ身体を離して、太宰の顔を覗き込もうとする。しかし、太宰はそのわずかな拒絶に敏感に反応し、さらに力を込めて彼にしがみついた。
「……やだ。……離れない、で……っ」
太宰は中也の胸に顔を擦り付け、その心地よい石鹸と、彼特有の熱い匂いを深く吸い込んだ。彼女の柔らかな髪が中也の顎をくすぐり、吐息が彼の鎖骨を直接撫でる。
「……なんで、……離れるの……? ……私のこと、……もう……嫌いになっちゃった、の……?」
太宰は、潤んだ瞳で中也を見上げた。まつ毛が微かに震え、頬は「ぽぽぽ、」と熱を帯びて赤らんでいる。その上目遣いは、捨てられた子犬のような、それでいて相手の理性をじわじわと削り取るような、残酷なまでの可愛らしさに満ちていた。
「……っ、……なっ、……バカ言うんじゃねえよ」
中也は喉の奥で息を呑んだ。 いつもは「大っ嫌い」だの「いじわる」だのと言って逃げ回っているくせに、一度こうして「甘えモード」に入った彼女は、どんな劇薬よりも恐ろしい。中也の胸の奥にある庇護欲と、それ以上に暴力的な独占欲が、彼女のその一言で一気に沸騰させられてしまう。
「……嫌いなわけねえだろ。……お前が、……あんまりにも可愛すぎて、……俺がどうにかなりそうっつってんだよ」
中也は観念したように溜息をつくと、大きな掌で太宰の頭を優しく、けれど逃げられないように抱え込んだ。
「……じゃあ、……もっと、……ぎゅって、して……。……中也の、……体温がないと……、……私……、……また……暗いところに、……行っちゃいそう、だから……っ……」
太宰は「ふにゅ、」と声を漏らし、中也の腕の中に自分から潜り込んだ。 彼女の猫背の背中を、中也の掌がゆっくりとなぞる。昨夜まで、そこには羞恥と恐怖が張り付いていたはずなのに、今はただ、愛されていることへの全肯定と、底なしの甘えだけが充満していた。
「……お世辞、じゃないよ……。……中也……、……愛して、る……。……だから……、……どっこも、行かないで……っ……」
「……ああ、行かねえよ。……お前が『もういい』って泣いて逃げ出すまで、……一生、こうしててやるよ」
中也は太宰の耳元で囁き、彼女の柔らかい耳朶を甘く噛んだ。太宰の身体が「びくんっ」と跳ね、喉の奥から「んんっ……」という、昨夜の動画よりもずっと甘く、無防備な鳴き声が漏れる。
中也は、彼女を毛布ごと包み込み、自分の身体の上に太宰を乗せるようにして抱き上げた。太宰は彼の首に腕を回し、まるで重力から解放されたかのように、すべてを彼に委ねている。
「……ちゅう、や……。……あったかい、ね……。……お家、……みたい……」
「……お家、か。……そうだな。……俺が、……お前の帰る場所だわ」
中也は太宰の鼻先を自分の鼻で軽く突き、ふっと柔らかく笑った。その表情は、学校の連中が見たら腰を抜かすほどに、慈愛に満ち溢れている。一軍の王様としての傲慢さはどこへやら、今の彼は、ただ一人の少女を愛し抜くためだけに存在する、一介の少年に過ぎなかった。
太宰は中也の顔をじっと見つめ、その形の良い唇や、鋭くも優しい瞳を、指先でなぞった。
「……ねぇ、……ちゅうや……。……明日は、……学校……、……お休み、しちゃう……?」
太宰が少しだけ悪戯っぽく、けれど切実な響きを混ぜて尋ねた。
「……なんでだよ。お前、勉強遅れるぞ」
「……だって、……ちゅうやと、……一日中、……こうして……いちゃいちゃ、してたい……んだもん……っ。……お外に、出たくない……。……中也の、……腕の中だけで……、……ずっと……溶けていたい……っ……」
太宰は「ふにゅ、」と中也の頬に自分の頬を寄せ、すりすりと甘えるように動かした。 その無垢な誘惑に、中也の自制心はもはや風前の灯火だった。
「……お前、……それ、……分かってて言ってんだよな……?」
中也の声が、一段と低く、熱を帯びる。 彼は太宰の腰をぐいと引き寄せ、自分たちの身体が密着する感触を確かめさせた。太宰の身体は、中也の熱に当てられて、また「ぽぽぽ、」と赤くなっていく。
「……分かって、……ないかも、しれない……し……、……分かってて、……言ってるかも……しれない……っ。……でも、……ちゅうやが、……私を……可愛がってくれるなら……、……なんでも……いいの……っ……」
太宰の瞳に、再び涙が滲んだ。それは悲しみの涙ではなく、あまりの幸福に心が溢れ出してしまった証拠だった。彼女は中也の首筋に深く、深く顔を埋め、彼の呼吸と自分の呼吸が混ざり合うのを、うっとりと楽しんでいる。
中也は、彼女のそんな様子を見つめながら、昨夜撮った動画のことなんて、もうどうでもよくなっていた。あんなデジタルな記録よりも、今、自分の腕の中で、自分を唯一の神様であるかのように求めてくる、この生身の温かさこそが、彼の求めていたすべてだった。
「……ああ、分かったよ。……明日は、……二人でサボりだ。……誰にも邪魔させねえよ」
中也はそう言うと、太宰を優しくベッドに押し倒した。 昨夜のような、無理やりな拘束も、実況も、カメラもない。 ただ、二人の呼吸と、肌が触れ合う柔らかな音だけが、部屋を満たしていく。
「……ちゅうや……、……だ、だいすき……だよ……っ……」
「……おう。……俺もだ、太宰。……お前なしじゃ、……もう生きていけねえわ」
中也は、太宰の三つ編みを解き、ベッドに散ったその長い黒髪に、何度も、何度も、慈しむような口づけを落とした。 太宰は、彼に触れられるたびに、自分の心の欠けたピースが、一つずつ埋まっていくのを感じていた。
もう、自傷の疼きはない。 自分を否定する囁きも、遠ざかっていく。 この部屋、この腕、この男。 それが太宰にとっての、世界で一番甘くて、世界で一番安全な、たった一つの真実だった。
二人は、夜が明けるまで、どちらともなく名前を呼び合い、何度も唇を重ね、愛を確かめ合った。 言葉なんて、本当はいらなかった。 肌を合わせ、互いの体温を確認し合うだけで、二人の魂は、一つに溶け合っていく。
「……おやすみ、……ちゅうや……」
「……ああ。……おやすみ、太宰。……愛してるぜ」
中也の低い子守唄のような声に包まれながら、太宰は幸せな、本当に幸せな目眩を感じながら、深い眠りへと落ちていった。
窓の外では、少しずつ東の空が白み始めていたけれど、この部屋の時間は、まだしばらく、二人だけの甘やかな停滞の中に留まり続けていた。 太陽が昇っても、二人の「秘密」は、より深く、より濃厚に、二人の心に刻み込まれていくのだった。