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稽古場の隅っこ、二人掛けの机に、寿司子は金髪の少女に押し込まれるように座っていた。
顔が近い。
「……面白かったのに腹立ったんですか?」
寿司子は、彼女を見上げて、疑問をそのままぶつける。
「いやぁ…よう分からんけど、あんたのネタ、ぶっ飛んでて、めっちゃツボったんよ!
うち、心ん中でツッコミまくってたんや、
『握る言うて、出てくんの巻きモンかい!』とか
『そこで神さん食うんかい!?』とか…
もうツッコミたくてツッコミたくて、腹立ってしゃあなかったわ!!
…ほんで最後の講師とのやりとり!
あれ仕込みか思て、つい吹いてもうたわ」
金髪の彼女は目を輝かせ、興奮気味にまくし立てる。
寿司子は、自分のネタをここまで具体的に、そして楽しそうに褒めてくれる人がいることに驚いた。今まで「難しい」と言われるばかりで、ここまで熱量を持って評価されたことはなかったからだ。
「あの…確か同期の…?」
「あ、うち稲瀬リコ!よろしくな!」
寿司子は思わず笑った。こんなに一方的に人懐っこい子、地元にはいなかった。養成所に入って初めて笑顔になれたかもしれない。
「あのな…お願いあんねんけど…」
リコが、さらに顔を近づける。
「な、なんですか…?」
「いっぺんツッコませてくれへん?
優しゅうするから♡」
「ひ、ひいっ!!」