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モリピー「すずは?将来どうすんの」
涼香「私はー……まだ決まってない(笑)」
拓海「今のうちに決めとかねぇとやべーんじゃねぇの?」
双葉「まだ考える時間だってあるし焦ってもろくな事ないよ。ゆっくり考えていこう 」
涼香「…うん」
正直私はカメラマンになりたい。しかし、親は許してくれないだろう。
(どうすればいいのだろうか)
モリピー「やっべー!鬼瓦の車だ!!」
モリピーがグランドを見ながら言った。
『鬼瓦』とは中学時代の体育教師の事である。ちなみに本名は古瓦勇次郎。鬼の様に怖い事から私達の間では鬼瓦と呼ばれる様になった。
その鬼瓦という名前に私達は一瞬固まったがすぐに来た状態に戻し教室を出た。
(捕まったら終わりだ…)
菜月「裏門から出よう」
駆け足で階段を下りていると一階から足音が聞こえて来るのが分かり一同一斉に駆け上って行く。
その足音に気付いた鬼瓦の怒号が校舎に響き渡る。
鬼瓦「コラー!!誰か居るのかー!捕まえたら生きて帰さねぇぞ!」
拓海「脅迫じゃん!教師の言っていい事じゃないって!」
菜月「二手に分かれよう。神社集合で!」
私・秀斗・菜月、モリピー・拓海・双葉に分かれて神社を目指す。
私達はトイレで身を潜め鬼瓦が通り過ぎるまで息を殺した。 足音がこちらに近付く度に心臓がドクドクと強く脈打つのがわかる。
(ーーー!!!)
ガチャッ
扉を開ける音がして一気に鳥肌が立つ。
鬼瓦「隠れても無駄だ〜」
一つずつ扉を開けていく鬼瓦。私は奥から二番目の個室に隠れていた。
一つ、二つとゆっくり開けて行く鬼瓦は完全に楽しんでいた。
そしてとうとう私の番。
扉越しに立った鬼瓦はゆっくりと扉を開ける。
ガシャーン
遠くで何かの割れた音が聞こえた。その瞬間、鬼瓦の動きがピタリと止まった。
鬼瓦「そっちか〜絶対捕まえてやるからな!!」
鬼瓦はトイレを飛び出して行き 私は安堵した。
(助かった……)
菜月「今のうちに外に出るよ。鬼瓦が行った方向からして三階だと思う」
私達は死に物狂いで走った。
裏門から外へ出て自転車を取りに行く。その間もずっと校舎からは鬼瓦の叫びが聞こえた気がした。
神社へ着くと既にモリピー達が居た。
モリピー「お前ら無事だったか!」
涼香「し、死ぬかと思った…」
拓海「鬼瓦の奴ヤバかったな。リアル鬼ごっこかと思ったぜ。ヒヤヒヤした〜」
ふと本殿の階段に目をやると双葉が座っていた。しかし、表情が暗い。
気になったので聞いてみることにした。
涼香「どうしたの双葉?」
双葉「花瓶を割っちゃったの。怖くて手が震えてそれで…」
(あー!あの音は花瓶の割れた音だったのか!)
涼香「ありがとう双葉!双葉のお陰で鬼瓦にバレずに済んだの!本当にありがとう!」
唐突な感謝の言葉に双葉は目をぱちくりさせていた。
それから私達は暫く思い出話に花を咲かした。
六時のチャイムで会話が途切れる。
涼香「もうそんな時間?!」
秀斗「夏は日の入りが遅いからね。僕もまだ昼だと思ってた」
拓海「そうだ!明日も皆で遊ばね?海行こうぜ!」
菜月「いいね〜!」
拓海「待ち合わせ場所は後で連絡する。俺もう帰んねぇとだからまたな!」
私達もその日は解散した。
家に帰ると母はやっぱり怒っていて、私は逃げるように二階へと駆けて行く。
最初に目についたのはテーブルに散らかった課題だった。
(片付けるの面倒いなぁ…)
涼香「────よしっ!」
一言気合を入れると、勢いのままに私は散らかった課題たちを片付け始めた。
母「涼香起きなさい!」
母に揺すられて目を覚ます。
涼香「……え?………もう朝…?」
母「何寝ぼけてんの!もう夕飯出来てるわよ!」
母は呆れた顔をしながら下へ降りて行った。
むくりと起き上がり時計を見るともう19時を過ぎていた。
涼香「なんで寝てたんだっけ?………あっ、思い出した。片付けが終わってまだ時間あったから寝転がってスマホ弄ってたんだ。寝落ちしちゃったのか〜」
外はオレンジ色に暮れていて、昼に比べると暑さは和らいだように感じる。
ぐう〜
(お腹空いたな…食べるか!)
リビングへ向かうと既に私以外の家族が食卓を囲んでいた。
私も席に座り手を合わせる。
食事を済ませ二階へ行こうとした私を母が呼び止めた。
涼香「なに?」
そう聞く私に母は一言「座りなさい」と椅子を引いた。
私は渋々椅子に座り身構える。
涼香「まだ怒ってるの?」
母「あれはもういいの。それより涼香、おばあちゃんちに来てから怠け過ぎなんじゃないの?」
涼香「そんな事ないけど…」
母「このままじゃ弁護士になんてなれないわよ!お母さんはあなたの事が心配なの!」
涼香「っっ!…………ごめんなさい…」
喉まで出かかった言葉を押さえ込んだ。実際、現実的に考えたら弁護士になった方が稼げるだろうし将来は安泰だ。
母「はぁ…部屋に戻ったら勉強しなさい」