母がこんなにも弁護士を勧めるのには理由があった。
母は弁護士の家系に生まれ育ち幼少期から英才教育を受けて育った。
その為母も弁護士を目指してありとあらゆる時間を全て勉強に費し難関大学に挑んだ。
しかし、合格には届かず厳しい家庭で育った母は家族から冷たく見放されたという。
母「涼香にはそんな思いして欲しくないの。お母さんの代わりに弁護士になってくれる?」
小さい頃に言われた事を思い出した。
最初は同情心からだった。
母の一心に答えたく代わりに弁護士を目指すことを決意した。
しかし、成長するに連れて好きなことが見つかり気付けば母に強制されるのを内心拒むようになっていた。
部屋に戻った瞬間、解放された気がして畳に倒れ込んだ。
涼香「言いづらいなぁ…」
ピロンッ
スマホの画面には拓海からの着信が1件。
拓海「明日10時に俺ん家集合。寝坊すんなよー!」
(そうだ明日は皆で海なんだった!楽しみ〜)
涼香「双葉達どんな水着なんだろう」
こんな事もあろうかと事前に海で遊ぶ事を考慮して水着を持ってきていたのだ。
涼香「ちょっと高かったけどオシャレなの買っちゃった〜。皆に見せるの楽しみだなぁ」
翌朝出掛ける支度を済まし一階へ降りると母が朝食を作っていた。
涼香「おはよう。お母さん」
母「おはよう。もうすぐで出来るから」
朝食が出来上がるまでの間テレビから流れるニュースをただボーッと見ていた。
(へー、快晴…)
母「出来たからテレビ消して」
涼香「はーい」
涼香「ごちうさまでした」
時計を見ると8:30だった。
(あ、日焼け止め塗ってないや。まだ時間もあるし一度部屋に戻ろうかな)
部屋に戻り早速日焼け止めを全身に塗る。
私の経験上、 夏の海を甘く見てはいけない。
(塗り忘れて酷くボロボロに剥がれたんだよなあ。そしてこんがり焼けた)
そうこうしてるうちに時刻は9時を過ぎていた。
急ぎ荷物を抱え部屋を飛び出す。
ドタバタと騒がしい音を聞きつけて母がリビングから顔を出した。
母「騒々しいわね。何してるの?」
涼香「出掛けてくる!」
靴紐を結びながら母の問い掛けに答える。
母「いけません!勉強が優先に決まってるでしょ。弁護士を目指すなら遊びに行ってないで机に向かいなさい!」
涼香「また弁護士……」
(もうその言葉には聞き飽きた)
母「何ボソボソ言ってるの!部屋に戻りなさい。あなたは『弁護士』を目指すのよ」
母の言葉と金切り声に耐え切れず私は家を飛び出した。
止める母を無視しその声が聞こえなくなるまで走り続けた。
涼香「はぁー……はぁー……」
これで二度目の反抗。
しかし、私の中で変わったことが一つある。それは一度目と比べ、母を恐れる気持ちを微塵も感じなくなったことだ。
ピンポーン
チャイムを鳴らすとインターホン越しの拓海から家まで上がって来るよう指示された。
言われた通り玄関を開けお邪魔する。
涼香「お邪魔しまーす」
拓海母「あら涼香ちゃん?!久しぶりね〜!綺麗になって!」
涼香「お久しぶりです。おばさんも前に会った時よりも更に美しくなりました?」
拓海母「やだもー///上手いんだから!」
菜月「やっと来た!こっちこっち」
私の手を引きながら二階へと連れていく。
菜月「着替えて無いのはもうすずだけだよ。私達その間浮き輪膨らませとくから隣の部屋使って着替えて!」
そう言い終えると部屋に戻って行った。閉まる前に見えたのは顔を真っ赤にしながらボールを膨らます双葉の姿だった。
(酸欠にならないといいけど)
私も隣の部屋に入って着替え始めた。
鏡を見ながら新しく買った水着に興奮する。
涼香「やっぱ可愛い!」
私が買ったのは紺色のシンプルなハイウエストビキニに水色のシースルーワンピースだ。
涼香「この透け感がまたいい。あ!急がないと 」
上から大きめのジャージを羽織る。
(よし、これならお尻見えない。逆に大き過ぎて膝上まで隠れてる)
隣の菜月達の部屋へ入るがそこには空気の入った浮き輪たちとぐったり倒れている二人が居た。
涼香「大丈夫?!気をしっかり持って!泳ぐ前に死ぬなあー!」
何とか二人を復活させ事なき終え無事男子たちと合流出来た。
拓海「遅いぞー!」
涼香「ごめんごめん」
モリピー「じゃあ行くか」
拓海の家から海までは歩いて10分もかからないところにある。
しばらく歩いていると海岸が見えてきた。思ったより人は少なかった。
パラソルを立てシートの上に荷物を置いた男共は早速海に飛び込んで行った。
双葉「海に帰って行ったね」
涼香「そうだね」
各々が着てきた水着を見せ合う時が来た。
(ワクワクする)
涼香「か、可愛い!!」
双葉はピンクの水着に下はスカートの様になっており、肩周りの白いフリルレースが可愛さを更に引き立てる。
菜月は黄色と白のスポーティーな水着だがその上から着る同じ柄のオーバーサイズのシャツがいい味を出している。
(つまり二人共可愛いってこと)