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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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私は今日から国単位の実験に参加する被験者。パパやママと離ればなれになるのは寂しいけど、貰ったお金で海外旅行を約束したから今はやる気で一杯!




会場に着いたら先ず小難しい事が沢山書かれた同意書にサインを入れた。その後は職員に説明を聞いて着替え。職員に聴いた話を纏めると


看護婦とは基本筆談


緊急時以外は呼べない


実験期間はデータが得られる迄


風呂は一週間に一回5分


持ち込みは禁止


大まかな事はこんな感じ。思い出したら又書き込むわ。因みに用意された服は白の長袖ながずぼん。




そうそう、実験の部屋に移る時もう一人の被験者と一緒だった。其の子は髪が肩ぐらい迄で私より短かった。顔付きも美人では在ったけど暗い感じだったわね。それで私の隣の部屋に入るみたい。



いよいよ入室。私の後ろには看護婦が歩いていて、顔は白い布で覆われて見えなかった。もう実験は始まってるみたい。看護婦が重々しい扉を開けると、私は何とも云えぬ恐怖感に襲われた。




ぎぃと音を立てて扉を閉められる。其処はもう立派な個室否、孤室の方が相応しい。部屋の壁と床はコンクリート剥き出し。部屋の置物はベットと、和式トイレ、素朴な机にノートと鉛筆。窓も時計も無く時間の確認は一切できない。


寒々しい、殺風景な部屋だ。この部屋に何日も閉じ込められると考えたら恐ろしくて、粟立ってきた。

私はすることが何も無いので暫くベットで仰向けで横になり天井をじっと見つめる。



秒針がカチカチと音を立てることもないので体内時計が狂いそうだ。天井を穴が空くほど見つめると遠くの方から野太い男の叫び声が聞こえた。


「あ゛ーぁ」「頼む出してくれ、、、頼むっ゛」


可笑しい、職員は私達しか居ないと云っていたのに。幻聴を疑ってみたが私は超健康児、幻覚の類とは無縁。私は此の儘考え続けても不毛だと思ったので取り敢えず職員が付いた嘘だと飲み込んだ。




そう云えば入室してからどのくらい経っただろうか。私の体内時計がまだ狂っていなければ一時間半経った頃か。


未だ半日も経っていないのに何の娯楽もないからだろう疲労が少し溜まって来たような気もする。




此の儘では何だか腐ってしまいそうだったので机の上のノートに手を付けた。紙を糊で張り合わせたノートサイズのメモ帳という方が近いだろうか。ぺらぺらと適当に捲っていると紙が一枚、軽々と舞い冷たいコンクリートの上に落ちた。私は其れをひょい、と拾い上げる。



【此のノートには此処での生活で感じたこと何でもを残してください。絵でも文学でも簡単に日記でも。この用紙は配膳時に回収します】



配膳時に回収するのか、私以外の人がいた痕跡なのにな。なんて事にため息をつく、こんな生産性のない事しか考えることがないので、私は暇つぶし程度に日記を付けてみる。何故日記なのかって?




そんなの私に画力と文才がないからに決まっているでしょう。






『〜月〜日 今日は実験開始の日。少し怖いし寂しいけど海外旅行に家族皆んなで行くために私は頑張ろうと想う』



今日という一日が始まってすぐ何もない部屋に入れられたものだから、日記は数行で終わってしまった。私の頭の出来がバレてしまう。

例の紙片に何でも書けと書いてあったので、最後に「暇だ」と書き足し余った処は不細工な犬や猫、兎なのか熊なのか判らないもので埋まった。


コンコン


鉄の扉を硬いもので叩く音がした。扉の下方に付いている小さな扉を横にスライドすると食事が雑に置いてある。然し私はこの施設に入る前に既に昼食は済まして居るのだ。


置かれているので仕方なく食事は受け取り紙片を扉の向こうの床に投げカンッと乱暴に扉を閉めた。




今此の配られた食事はおやつ、若しくは夕飯か。けれども此の何もない殺風景な部屋で幾ら質素と云えどパンとスープは輝いて見えた。私は現在、消化されているであろう昼食のことなど考えずに頬張った。





腹も膨れ、そろそろ昼寝(昼か夜かは判らないが)でもしようかと思い、ベットに横たわる、が全く眠くない。




正直今私は此の施設に興味津々なのである。


先程聞こえた声の持ち主は誰なのか、其の人以外にも人は居るのか、いたとしたらどんな人間か。そして此の場所は何処にあって、どんな名前で、どんな理由で存在してるのか。私が受けている此の治験はなんのためのものなのか。


考え出すと謎が次々と浮かび上がり私の胸も踊る。



元々ミステリは嫌いではないが己が其のような状況に置かれると少々の恐怖心と好奇心が湧くのは人間の性なのだろうか?


探偵の如く様々な謎を脳内で捏ち上げては脳内で解釈を勝手にこじつけ華麗に解決するということは5回ほどすると私は途轍もない眠気に襲われた。






まぁすることが無さすぎるので探偵ごっこでもして潰そうかな〜こんな調子で何も深くは考えずに私は『食後』の唐突な眠気に身を任せ瞼をゆっくり閉じる。






私は目を覚ました時何一つ変わらない天井を見つめた。

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