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とある投稿サイトにて投稿したものです
初心者故、至らぬ所があるかと思いますが、そっと目を瞑ってくださると幸いです
※これは完全なる作者の幻覚です
※現実と妄想の区別がつかない方は閲覧なさらないでください
「ひーば、何食べてんの?」
「わあ゙ーっ!?」
後ろから突然掛けられた声に驚き、肩を跳ねさせる。
振り返ると、奏斗がニヤニヤして此方を見詰めていた。
「奏斗かよぉ……びっくりしたんだけど!」
「ごめんってwそんな驚くとは思わないじゃん?」
さわやかにウインクをキメてそう言う奏斗に、嘘つけ。と思わず言いたくなる。
だったら、その大成功とでも言いたげな顔はなんだってんだ。
俺は、わざとらしく溜息をついて奏斗から視線を外した。
奏斗は、そんなこと気にしないかのように俺の髪を弄りながら会話を続けた。
「んでさ、雲雀。それなに?僕知らないんだけど」
「ん?これ?ばあちゃんが荷物運んでたから手伝ったらくれたケーキ!うめえぞ、食う?」
「……お前、聖人かって」
「せいじん?そりゃ大人やけど」
「そのせいじんじゃない……けど、まぁ……てか、食べていいの?僕も」
「当たり前やん」
「えー……やっさしー……」
雲雀くんかっこいー、なんて声が背後から聞こえてくる。
もっと褒めたたえてくれてもいいと思う。
俺の後ろで髪を弄っていた奏斗は髪から手を離すと、俺の目の前に移動し、床に膝を突いて俺を見上げた。
そして、目を瞑ったかと思えば、奏斗は口を開いた。
暫しの沈黙。
「…………え、何……お前、もしかして待ってる?」
「え?うん。あー」
ぱか、と開けられた口に困惑する。
え?俺があげる感じ?いやまぁ、別にいいんだけど。
なんでだろ。すごい、そわそわする。
心臓も何故かバクバクとうるさいし。
……いや、なんで?別に奏斗にあげるだけじゃん。
ふぅ、と息をひとつ着いて心を落ち着かせる。
そして、ケーキを一口サイズに切り分け、、奏斗の口に近づけた。
……や、やっぱ無理。
口元に持っていった手を引いて、ケーキを皿の上に戻す。
恥ずかしくなってきた。
何だかいけないことをしているような気分になって、落ち着かない。
な、なんで俺……こんな照れてんだ?
チラリ、と奏斗を見ると、その口は開いたままだった。
ああ、完全に待ちの姿勢だ。
可哀想に見えてきた。
大丈夫、あげるだけ。口に入れるだけ。
そう言い聞かせて、奏斗の口元に運ぶ。
……無理だ……!
口元にケーキを持っていっては、その腕を引いてしまう。
なんでだ?この間はできたのに。
アキラとかセラおには、こんな気持ちにならないのに!
「……雲雀?」
「うぇあっ!?」
突然奏斗から声を掛けられ、ピンと背筋が伸びる。
「そんな驚く?てか、どうしたの、全然くれないし………………あれ?…お前……」
何かに気づいたような声を上げる奏斗。
奏斗の腕が、俺の頬に伸びてくる。
反射的に、俺は目を瞑った。
「……あはは。顔真っ赤じゃんお前」
「……へ、……?」
「恥ずかしくなっちゃったんだ、雲雀」
「あ、え、俺……っ?」
「はは!しかも無自覚〜?かわいいね」
「……はぁ!?」
可愛い、って言ったか!?俺に!?
自覚した途端、顔に熱が集まっていく感覚がした。
それを見て奏斗は、もっと赤くなっちゃった、なんて笑いながら言ってくる。
その何ともなさそうな態度に、悔しさが募っていく。
なんなんだよコイツ……!めっちゃ腹立つ!!
「もういい、やらん」
ふい、と顔を背けてそう言ってやる。
そうすると、奏斗は焦ったように声を上げた。
「え!?雲雀ぃ〜!!」
ごめんってぇ、なんて言ってくるけどもう遅い。お前が悪い。
奏斗にあげようとしていたものを口に運ぶ。
奏斗は、酷い!と叫んでいた。
「……あ、雲雀ー?」
「ん?」
もう一口ケーキを口に入れ、奏斗の方へ向く。
奏斗は、目に宿したアウイナイトを煌々と光らせていた。
ニコニコと笑う奏斗に首を傾げる。
「いただきまーす」
「は?」
突然そう言われ、間抜けな声が出る。
なんで?あげるなんて言ってないけど。
そう言おうとしたのに。
サラサラとした金色が俺の顔にかかる。
少し開かれた俺の唇に、ふに、と柔らかい何かが押し付けられた。
……え?
「ん゙……??ん゙なッ、ぁ゙!?」
キスしてる。キスしてんだけど。俺が、奏斗と!
ダラダラと冷や汗が背中を伝う。
なんで?どういう流れで?はぁ??
言いたいことは山ほどあるが、今は口が使い物にならない。
とりあえず離れろ、というように奏斗の背中をバシバシと叩く。
フスッ、と漏れた奏斗の息が顔にかかった。何笑ってんだよ!俺はこんなに焦ってんのに。
口の隙間から侵入してきた奏斗の舌に、更に焦りを感じ始める。
何してんの。何しちゃってんの。
「ん…………ん!ん〜」
口の中に残っていたケーキをすくい取られたと思えば、賞味するような声が聞こえてくる。
何味わってくれちゃってんだよ、人の口の中で。
ちろちろと舐められる感覚に、あるはずも無い快楽を感じているような気がしてしまう。
その後、奏斗に何も無い口内すら荒らされ、息の仕方が分からない俺はへとへとになっていた。
一通り楽しみ尽くしたのか、奏斗の顔が離れていく。
力の抜けた俺は、ぼすっ、とソファの背もたれに倒れ込んだ。
睨むように奏斗を見ると、奏斗は目を細めて舌舐りをした。
「……ん。ありがとね、美味かった」
「……うまかった、じゃねぇよ……」
荒い息を整えながら奏斗に文句を言うと、ごめーん、なんて軽い謝罪が飛んできた。
もっと丁寧に謝れ。この男は本当に。
「あ、そうだ。味の感想なんだけどー、まぁ、美味しかったよ?でもぉ、もうちょい冷えててもいいかもなーって」
なんて普通のテンションで言ってくる奏斗に、頭可笑しいの?と言いたくなる。
当たり前だろ。人の口の中にあったもんなんだから。
そう言いたいけど、そんなことを言う気力もなかった。
あ、それとー。と奏斗は言う。
「因むと、これ僕の初キスね?」
だってさ。
溜息をつかなかった俺を褒めて欲しい。
「……ほんと、何してんだよ…………俺もだけどさぁ」
「え、そうなの?あはは、ごめん」
奏斗は俺の横に腰掛け、こちらの顔を覗き込んだ。
「でも、悪くなかったでしょ?」
「……」
否定は出来なかった。
でも、肯定したくなくて、口を噤む。
そうすると奏斗は満足気に笑った。
「好きだよ、雲雀」
奏斗が愛おしそうな顔をしてこちらを見つめてくる。
その顔と声で、肩の力が一気に抜けるのを感じる。
……あー。そっか。そうなんだな。
奏斗に対してだけ恥ずかしくなるのも、勝手にキスされても嫌ではなかったのも、舌入れられてあるはずない快楽を感じたのも。
全部全部、そういうこと?
「……俺も……好きかも…………」
「え、あはは!何それ、かもなの?」
ケラケラと横で笑う奏斗を軽く肘で小突く。
いて、と零す奏斗は楽しそうにしていた。
「ねぇ、もう1回しよ?さっき、本当は雲雀に夢中で味わえてないんだよね」
「はぁ?お前馬鹿やん」
「あ、ひどー」
「てか、さっきの感想嘘ってこと?」
「何でもいいじゃん。いいでしょ、やろうよ」
ね、なんて優しく言われれば拒否なんて出来なくて。
最後の一欠片、ケーキを口に放り込んで奏斗に口付ける。
今度は俺が奏斗に夢中で、ケーキの味なんてしなかった。