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n217(エヌ・ニイナ)
しめさば
#ファンタジー
コメント
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いや、第1話から引きがすごいな…! 酒場の雰囲気とか、酔っ払いの噂話の生々しさがめっちゃ伝わってきたわ。で、噂と矛盾する騎士の話→鎧の集団登場で空気ぶち壊し→さらにラストの倒れ込み。展開の畳み掛けがうますぎる。主人公(店主?)の「今日は厄介な1日だ」って台詞、めちゃくちゃ味あっていいな。続きが気になりすぎる🔥
「なぁ……あの噂本当だと思うかぁ…?」
ガヤガヤと騒がしい店内でひっそりとした声でそう問いかける一人の男。
「あの噂とはなんの事だい?お客人」
2時間ほどこのカウンターで飲み食いし、だいぶ酔いが回ってきたようだった。
酔いが回ると気分が良くなる。少しだけタカが外れはじめると人は何を話すな分からないものだ。
「酒も料理も美味いし……何よりアンタは別嬪さんだぁ……何も残さねぇのは男が廃るってもんよ……」
話さない方がいい事だとは分かっていても、人は元来、そういった話題に敏感で好む傾向にある。
「そうかい。ありがとね。それだったらお話より、金の方が嬉しんだが」
ウィンクをしながらそう言うとたまらないと言わんばかりに、笑い始める男。
「たぁー!勘弁してくれ!店主さん!こちとら、この不景気で金に余裕なんざねぇもんだ。」
額を抑え天を仰ぎながらそういう男。
「だからよぉ……俺がこの前仕入れてきた活きのいい噂話を……」
顔は赤くなり、身体はゆらゆらと揺れ、目線は合わず、酔っぱらいの典型のようだが、その声音には真剣さがある。
「我等が帝国様のよぉ…守護神と名高い騎士様について2つ噂があってよぉ……」
片手で口元を覆いヒソヒソと話し始めた。
「失踪したって噂話がひとつ…」
「失踪……?」
「あぁ、失踪だとよ。妙な噂だよなぁ?」
戦争だらけのこの世界で死より、失踪の噂がたつとは……
余程強く死ぬことが考えられないのか、影響力が強く生きている事にしたいのか……
「しかもよ、そんな噂が出回っているにも関わらず…英雄様は元気に今でも首都でその姿を見せてるって話だ。」
「首都にいるのに失踪って……その噂…矛盾だらけだな。」
「ああ!全くそうなんだ!」
勢いよく頷く酔っぱらい。
「普通はそんな噂たちまち消えちまうもんだぁ……だが、ここ暫く消える気配すらねぇ……」
頬杖をつき神妙な面持ちに変わる。
「ここは首都から離れてるからいいが、この噂……口にすることを制限されてるって話だ。」
ガヤガヤと周りは変わらず騒がしいが、酔っぱらいとの間に静かな時間が流れる。
「そして、もぉひとつぁ…」
片手に持っていたお酒を煽り、再び口を開こうとしたその時。
チリン チリン チリン
酒場の入口の鈴が3回鳴り、ガシャガシャと鎧の音を立てながら数人の人物が入ってきた。
この場とあまりに合わない登場人物に先程までの浮かれた空気が台無しだ。
「ここの店主はいるか。」
その問いかけに店内の視線が一斉にこちらを向く。
「私が店主だ。」
手をひらりと上げる。
「そうか。」
ガシャガシャと音を立てながらこちらへ歩いてくる。自然と近くの席に座っている者はぶつからないよう身を縮こめている。
先程噂話をしていた客はやや青ざめた表情。すっかり酔いは覚めたようだ。
「移動式の酒場だと聞いた。この人物を見た事はないか?」
鎧の人物が1枚の紙を差し出す。
そこには1人の人物が描かれていた。
もの柔らかそうな整った顔立ち。金髪碧眼の美丈夫な青年だった。
「うーん。見覚えはないね。目立つ容姿だ。1度見かけたら忘れないさ。」
「そう…か…」
鎧の奥からやや落胆したような声が漏れる。
「あぁ。力になれなくて悪いね。」
「いや、こちらこそ営業の邪魔をした。協力感謝する。」
礼儀正しくピシッと返事すると踵を返し、店の出口へと向かっていった。
チリン チリン チリン
鈴の音と共に鎧の音も遠くへと去っていった。
すっかり酒の席とは思えないほどしらけてしまった店内。
ぱん。と手を叩き店内の関心を再び自身に戻す。
「ふぅ……さぁお客人たち。すっかり酔いが冷めてしまったね。今日は早めに閉店にするよ。さ、頼んだものをちゃちゃっと食べてしまってくれ。」
そう問いかけると「そうだなぁ」「仕切り直すのもまぁ…」「けっ!折角なのによぉ」
などなど様々な感想を口々に注文した品を片付けていく。
「悪いね。また巡り合うことがあったら来ておくれ。」
最後の客が帰り、いつもより少し早く閉店準備を始めた。
すると再び鈴がなった。
リーン
「悪いね。もう閉店だよ。」
その人物からは返答はない。そのかわり鈍い音がした。
入口へ目線を向けるとその人物は全身赤黒く、床に倒れていた。
「………今日は厄介な1日だ…」