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#借金
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#デートDV
廊下に出てから隣の部屋へ入ろうとすると、ドアの隙間から二人の話し声が聞こえてきた。
「さっき池上さんに私たちのことを話しちゃった……」
「そうだったんだ……。まぁ、瑞穂が良いなら構わないよ」
「ありがとう……そうしたらね、恵介があの家から私を連れ出してくれた日のことを思い出して……もし恵介があの日来てくれなかったら、私は今もまだあの暴力に耐えていたのかなって思ったら、今の幸せに感謝しかないの」
静かになったのでそろそろ部屋に入ろうかと中を覗いてみると、二人は抱き合ったままキスをしていた。そのため萌音は再び扉の影に隠れる。
「あの日は二人の転機になったよね……ようやく気持ちが通じ合って、瑞穂に夫がいるとわかっていても止められなくて何度も体を合わせて……」
「……自分の気持ちに嘘がつけなかっただけ。あの時のことは後悔してない……」
先ほどの話と繋げていけば、前夫からのDVに耐えていた家から連れ出してくれた日に、二人は結ばれたということだろうか。つまりまだ結婚している時だった……。
萌音はギリっと下唇を噛む。彼女にもしがらみがあったんだ。それでも抑えられない気持ちに正直になった事で、ようやく本当に愛している人と結ばれた。
きっかけが何であったにしろ、松島さんは自分の未来を自分で切り拓いたんだと気付く。
そしてハッとする。私だって今まで自分でやりたいことをやってきたじゃない。自分で未来を切り拓いてきたはず。それなのに今はもう父親の決めた未来を受け入れる覚悟でいる。
萌音は扉に寄りかかり、天を仰いだ。自分の正直な気持ちって? ここのところずっとモヤモヤしていることは一体何? その答えがようやく見えてきた気がする。
その時に二人がドレスについての話を始めたので、萌音は深呼吸をしてからドアを開けた。
「お待たせしました!」
すると二人は笑顔で萌音の方に視線を移す。
「きっと当日のブーケはもっと素敵だと思いますが、一応こちらの造花のブーケを持っていただいて、お写真を撮ってみるのはいかがでしょう?」
「いいんですか? 是非お願いします!」
瑞穂が靴を履いたのを確認して、ラグマットを取り外す。そして白い壁をバックに二人を立たせると、萌音は自分のカメラと恵介のスマホで写真を撮った。
幸せそうな二人の姿に、つい笑みが溢れる。彼女の選択が間違っていなかったことが、画面の中の写真からもしっかりと伝わってくる。
「松島さん、本当に幸せそう……」
「うふふ、とても幸せですよ」
瑞穂と恵介が見つめ合い、額を寄せ合う。その様子に萌音は胸が熱くなる。
そうよ、私ってば何をイジイジしてたのかしら。本当は翔さんとやりたいこと、彼にして欲しいことがたくさんあるの。せっかく翔さんと付き合えたんだし、後悔だけはしたくない。
萌音は顔を上げると、拳を握りしめて大きく頷いた。
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