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ゆっくりんぼーダンス
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猫塚ルイ
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#戦闘
《コウくん…どうして返事してくれないの?ここ、コウくんのお部屋だよね》
その声とともに、インターホンの画面いっぱいに女の顔が移り、俺は絶句した。
レンズに擦り付けられるようにして映し出された、歪んだ笑みを浮かべる女の貌。
その見た目から昔の記憶が蘇ったのだ。
源氏名「夜神コウ」でホストクラブで働いていた、俺が新米ホストだったころ
調子に乗って本営を同時に10人の姫にかけ
その 1人に店の屋上に呼び出され、刺されたことがあった。
ギラギラとした夜の街、生暖かい血の感触
突き刺さる痛みがフラッシュバックする。
名前すら忘れたトラウマの元凶である客だってのに
そんなやつが俺の家のインターホンを鳴らしたという事実が受け入れ難かった。
あのときの女が、今まさに扉の向こうに立っている。
「…っ!」
俺は、震える手で応答ボタンを再度叩き、スピーカーから漏れる声を強引に遮断した。
ブツッという雑音と共に、女の不気味な声が消える。
しかし、モニターに映る女の口元は
まだ執拗に「コウくん」と動き続けているように見えた。
「…ぁ、ああ…ぁ、あの、とき……っ、俺を刺した…っ、」
どうしてこいつがいるんだよ……っ?
どうやって俺の家を特定した…?
ホストを辞めた俺に会いに来るか?
もうホストを辞めて4年も経ってるのに、今更また俺を殺しにでも来たのか
嫌な予感が頭の中をグルグルと回る。
呼吸が浅くなり、視界の端がチカチカと暗くなっていく。
恐怖が全身を支配する。
そんなときだった
「あきらぁ?なーにしてんの」
「ひっ…!!!」
突突然後ろから腰を抱き寄せられて、思わず情けない悲鳴を上げた。
完全に硬直していた身体が、背後からの接触に過剰に反応して跳ね上がる。
「おおお、おまっ、いきなりくっつくんじゃねーよ!」
「え、めっちゃ震えててウケるw借金取りでも来たの?」
「ち、違ぇよ!あ、あぁ…っ、あいつ、が…」
「あいつ?」
今にも過呼吸を起こしそうなほど動揺を隠せない俺とは違い
颯太の声はどこまでもいつも通りで、その温度差に脳が追いつかない。
颯太は俺の腰から手を離すと、警戒することなく玄関に向かった。
迷いのない足取りで、鍵のつまみに手をかける。
「ちょっ!おい待てって……!!今開けたらお前まで…!」
俺の制止も虚しく、颯太は躊躇することなく扉を開けてしまった。
ガチャリと、非情な金属音が響き、外の空気が流れ込んでくる。
「…っ!」
もうダメだ
包丁を持ったあの女が、狂気に満ちた目で飛び込んでくるに違いない。
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