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ゆっくりんぼーダンス
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猫塚ルイ
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#戦闘
そう思うと、絶望と恐怖で金玉まで縮こまった。
俺は思わず目を強く瞑り、身構える。
しかし
「なんだ、誰もいないじゃん?」
「は…?」
耳を疑い、恐る恐る目を開けて玄関の外を盗み見る。
確かに、マンションの廊下は静まり返っていた。
昼下がりの、何の変哲もない、ただのコンクリートの廊下。
そこには本当に誰もおらず、さっきまでの女の姿は跡形もなく消えていた。
風が通り抜ける音だけが、虚しく響いている。
安堵するどころか、別の種類の不安が込み上げてきた。
確かに見たはずだ。
あの狂気じみた女の顔を、あの声を。
「…いや、だってさっき…昔俺を刺したあの女の声もしたし……っ!絶対俺を殺しに来たんだっつーの!!顔だって…」
「ちょ、あきらってばホスト時代に刺してきた姫のこと言ってるの?」
「そうだって!!」
「えー?こんなところ来るわけないじゃん、もう4年も経ってんのに」
俺の震える肩をぽんぽんと叩きながら、颯太はヘラヘラしている。
全然深刻に捉えていないみたいだ。
その手の温かさだけが、妙に現実味を帯びて伝わってくる。
「あきらさ、酒の飲みすぎかなんかで幻でも見たんじゃない?」
「俺の…げん、かく…声も、幻聴だったってのか……っ、?」
あんなに鮮明だったものが、すべて自分の脳のバグだったというのか。
その事実の方が、かえって底知れない恐怖となって背筋を這い上がってくる。
「絶対そうだって、ホスト辞めてすぐに家特定して刺しに来るならまだ分かるけどさ、今更あきらのこと刺しに来る理由がないじゃん」
「い、言われてみれば…まあ、確かに……?」
なんだか妙に腑に落ちない俺だったが
そこに女がいないのだから、颯太の言う通りで間違いないのだろう。
颯太の呆れたような、確信に満ちた言葉に、無理やり脳を納得させるしかなかった。
「にしても、もう4年も経ってんのにそんなビビってかわいいねぇ…」
「ざ、ざけんな!ビビってねぇし!」
「うそばっか、子鹿みたいに震えてたけど~?」
いつもと変わらない軽薄な態度に、少しずつ落ち着きを取り戻していくのを感じた。
颯太のうざったいほどのからかいが、尖りきっていた俺の神経を少しずつ弛めていく。
「ま、とりあえず部屋戻ろ?お腹空いちゃったしさ〜」
「…お、おう」
心臓はまだバクバク鳴っていたが、少なくとも命の危機は去ったようだった。
冷や汗でじっとりと濡れたシャツが肌に張り付くのを感じながら
俺はゆっくりと深呼吸をする。
ひとまず安心して、俺は颯太と共に部屋に戻った。
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