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(敦士のヤツ、俺の悪夢のせいで、無駄に悩んでいるんじゃないだろうか――)


仕事をしながら頭の片隅で、恋人のことを考えてしまった。他にもドジしがちな性格を考えると、仕事に穴をあけて、叱られている可能性まで思いついてしまう始末。

“浮気”という言葉まで出して、敦士に試すような質問をされた時点で、なにかしら対処しなければならないのに、思わず躊躇してしまった。

敦士の心の傷を考えたら、今までのことを素直に吐露して、フォローすべきだったというのに――。

自分がおこなってきた非道を知り、心底嫌われることを恐れて口を噤んだせいで、こうして悩むことになろうとは、あのときは思いもしなかった。


「忘れてくださいなんて言われても、気になってしょうがないだろ」


小さな呟きは、事務所宛にかかってきた電話の音によってかき消された。だがモヤモヤする気持ちまでは消すことができず、悪いことばかり考えつく。


(とりあえず今日の仕事を早めに終えて、スーパーに寄ろう。敦士の好きなものを作って、ちょっとでも雰囲気を良くしなければ……)


少しでも関係を良くした上で話し合いをすれば、見限られることなく、スムーズに解決できる気がした。

敦士が納得するような話をしなければと、いろいろ対応に苦慮したのだった。

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