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プロローグ
そのアパートは、古くて、少しだけ傾いていた。
壁紙は黄ばんで、天井には薄い染みがある。だが、家賃は相場の半分以下。主人公――佐藤悠真は、それを「運がいい」と思った。
初めての夜、静まり返った部屋に横たわっていると、壁の向こうから音がした。
カサ……カサ……
ネズミか、虫か。そう思って耳を塞ぐ。しかし音は途切れない。規則的に、まるで呼吸のように。
そして、確かに聞こえた。
「……まだ、見てるよ。」
壁の隙間から漏れてきた声だった。