謎の女子高生、夜桜さん…。
この人、一体何者なんだ──!?
夜桜さんが俺の隣に座り始めてから、
ずっーーとクラスメイト達がこっちを
見ている…。
視線がグサグサ俺の心に刺さる感覚。
心臓が痛い……。
コソコソと小声で話す声が教室の空気を
もっと悪くしてんだよ………。
──俺の隣だったらなぁー。
──後で話しかけてみよう。
──恨んでやる…恨んでやる……!!
………とか。
……いや、あんた達が俺を恨むのは
どうでもいいけど!!
俺は、先生を恨むわ!!!
だって、先生があんなこと言わなかったら
俺の隣に来なかったわけだし!!!
今、俺の隣に座っている夜桜さんの
反応は……?
チラリと横目で彼女を見る凪。
・・・無(む)。
間違えた…無反応。
何ともいえない表情。
笑顔でもなく、ただきょとんとしている。
天然系女子なのか?
それともぼっーとするのが好きなのか
未だ不明。
「凪君のこと、ずっと見てますよ?」
「あはは………。」
いやいやいや!俺達を見ているんですよ…!
─なーんて、夜桜さんに言っても………
無駄だよなー。
予想しよう…この朝礼が終わったら
コイツらは彼女の席に…つまり俺の周りに、集まる。つまり質問コーナーの時間がくる。
今まで俺は、この無意味な質問コーナーを
なんとなく避けてた。
冷静に考え始めてから、
他人と仲良くなれるためには”情報収集”が
必要だと分かり始めた。
だから、今回も!!
この謎の女子高生と仲良くなるために、
情報収集、情報収集!!
凪の予想は見事に的中する。
朝礼が終わるチャイムと同時に
ぞろぞろと凪の周りにはクラスメイト達が
集まり、さらに他のクラスの生徒も。
「”みれい”って可愛い名前だよね!」
美しいの”美”に、綺麗の”麗”(れい)と書いて
”美麗(みれい)”と読む。
「ありがとうございます。」
ニコリと微笑む夜桜さん。
「好きな食べ物って何ですか!?」
──きた!!
好きな食べ物!!
「──秘密です。」
「じゃあ、趣味は?」
「──秘密です。」
「えっと~、た、誕生日は?」
「──秘密です。」
───え?
クラスメイト皆がそう思った。
何を聞いても”秘密です。”と返事が
かえってくる。
爽やかな笑みで返事をかえす夜桜さん。
「私、秘密主義なんです。」
全然悪いと思っていないのか、ニコニコと
笑っている様子。
「凪君、もし良かったら…
この学校内を案内してくれませんか?」
………はい?
え、いきなり?
「え……あ、別にいいですけど……。」
いきなりの言葉にさすがに動揺する。
何で俺なの?と心の中で思いながら
夜桜さんの方を見ると本当に嬉しそうな顔をしていた。
「わぁぁ…!ありがとうございます!」
幼い子どもの様に両手を軽くぺちぺち叩く
姿が凄く可愛い。
「美麗ちゃん、案内なら俺がするよ!」
「佐伯より、俺にしなって!」
周りにいた男子生徒達は凪を軽く押し、
夜桜さんの目の前まで近づき必死に、
アピールをしている。
──うわぁ…男子達…気持ち悪い……。
──夜桜さんのこと好きなんでしょ。
──名前で呼んでるし…。
女子達から罵倒されても、男子達はどうでもいいらしい……。
俺、今押された…?
いや…夜桜さんに近づきすぎだって。
可愛いのは分かるけど!!
夜桜さんにグイグイ近づく男子達。
「あの……?凪君から返事はもらいました。
なので、お気持ちだけ──」
「そう言わずにさぁ?」
「佐伯一人じゃ心配だから!!」
何、俺一人じゃ心配って。
お前ら…離れろよ…。
夜桜さん…困ってるし…仕方ないな。
「─いい加減にしなよ。」
もう我慢の限界だ。
「凪君……?」
「夜桜さん、困ってるだろ。それに案内は俺一人で十分。頼りないかもだけど。」
「……ふん。」
「行こーぜ…。」
凪の目の前にいる男子二人組は、
彼女に気づかれないように舌打ちすると
パタパタと早足で何処かに行ってしまった。
「……ほら、行こう?夜桜さん。」
「……はい…!」
すたすたと歩きながら一緒に教室から出る。
「─で、ここが図書館で、隣が音楽室。」
「ふむふむ、なるほど。」
夜桜さんに頼まれた通り、学校内を案内している凪。昇降口から屋上まで一応一通り。
「あの、凪君。」
「はい?」
「助けてくれてありがとうございました。」
「いやいや。夜桜さんが困っていたから、
助けただけで……そんな…!」
夜桜さんから”ありがとう”と言われて、
内心とても嬉しい凪だがふと思いだした。
何でこの人は俺の名前を知ってるんだろう。
──と。
「夜桜さん、聞いてもいいですか?」
「はい、何ですか?」
「何で俺の名前知ってるんですか……?」
夜桜さんの瞳が一瞬揺れている様に見え
これは動揺をしているサインでもある。
「それは───」
ごくりと唾を飲み込む。
「──秘密です。」
「───はい?」
………夜桜さんは秘密主義らしい。
はぁ……また”秘密です。”だ……。
だって、明らかに怪しすぎるし!!
「……そんなに知りたいんですか?」
「………はい……。」
知りたい、知りたい!!!
「──好きな食べ物は?」
「え?」
「凪君の好きな食べ物は何ですか?」
え、いきなり?
「俺は、寿司かな。夜桜さんは?」
ちょっと待て!!
もしかして情報収集!!?
「私は──トリュフです。」
はい?ト、ト、トリュフ!!?
トリュフってあの!!?
「勘違いしないでください。」
へ?勘違い?
「私は君だから教えるんですよ?」
……俺だから?
「さぁ、そろそろ教室に戻りましょう?」
「あ……えっと……、はい。」
「凪君、可愛らしいですね。」
「夜桜さん、秘密主義なんじゃ…?」
秘密主義なのに、どうして凪には自分のことを教えるのか。未だ不明。
「そうですよ?秘密主義です。」
「え……?」
「私は凪君以外の方には秘密主義なので。」
「何ですか…それ…。」
「ふふっ。」
謎の女子高生、夜桜さんは
”秘密主義”だが凪にだけ自分のことを教える
ちょっと変わった人。
夜桜さんの秘密が知りたい凪。
凪のことを可愛がる夜桜さん。
相性が良いのか、悪いのか、未だ不明。
二人でのんびり廊下を歩いていると、
前方からゾロゾロと生徒が物凄い勢いで
走ってきた。
「うわっ…!?な…何!?」
「………何でしょうか?」
人混みに紛れ、凪達も生徒達についていく。
校庭に出ると、いきなり雨が降ってきた。
ポツリポツリと降る雨。
「あれ…雨?」
「……嫌な予感がします…。」
「え?」
嫌な予感?
今日は確か晴れだったよな?
何処からか聞こえてくる風鈴の音色。
チリン…チリン…。
「風鈴?今の時期に?」
今は、5月。
少なくともまだ暖かい。
「………やはり…アナタですか…?」
「よ、夜桜さん…?」
凪の隣にいる夜桜さん。
夜桜さんは何やら警戒している。
姿は見えないが、風鈴の音色が少しずつだが近づいてきているのは間違いない。
チリン……チリン……、と。
「そろそろ姿を現してはどうですか?」
『……え~~。』
何処からか聞こえてくる声。
夜桜さんの言葉に反応したのか、突然
霧のような煙がもくもくと近づき
そして、ぱっ、と声の主が現れた。
『”夜の桜は美しく綺麗”──。』
「”五月に訪れる不思議な雨──。」
な、何を言ってんだ!!?
「久しぶりですね、”五月雨”クン?」
『コッチの台詞だよ。美麗サマ。」
声の主──五月雨という少年だった。
ショートカットのエメラルドグリーンの髪。
右目を前髪で隠しており、雫型の髪飾りを
前髪の上につけている。
雫柄の甚平のような着物に、青いショートブーツ。見た目は、6歳の子どもと同じくらいの身長。120cmくらいだろうか。
くりくりとした可愛らしい目元、頬に
たくさんの絆創膏。
やんちゃな性格が一目で分かる。
『おっ?そのチンチクリンが、
美麗サマの新しいオトモダチ???』
チ……チンチクリン!!?
俺の事!?
「えぇ。そうですよ?」
『ふ~ん、悪趣味だね~。』
五月雨は動揺する凪の目の前まで来ると─
『よく聞いておけ、チンチクリン!!
ボクの名前は五月雨だ!』
「よ……よろ…しく……。」
チンチクリンという言葉が気になるが、
夜桜さんの知り合いのようだからここは
大人しくしておこう……。
突然現れた、謎の少年─五月雨。
夜桜さんとはどういう関係なのか?
───────3話へ続く
〈キャラクタープロフィール〉
名前:佐伯凪(さえきなぎ)
誕生日:3/12♂
好きな物:寿司、漫画
嫌いな物・苦手な物:五月雨、勉強
気になる人:夜桜さん(?)
この物語のツッコミキャラでもある。
いつも夜桜さんに振り回されている
可哀想なごく普通の男子生徒。
名前:夜桜美麗(よざくらみれい)
誕生日:不明(教えてくれない。)♀
好きな物:トリュフ(他は不明)
嫌いな物・苦手な物:特になし
気になる人:凪君!!!
この物語の主人公─及びヒロイン的キャラ。
なぜか、佐伯凪のことを知っており
凪にだけ、自分のことを教えている。
未だ不明な情報多数あり。
*五月雨のプロフィールは3話に─
コメント
9件
そういえば私の学校に凪ってやついるわw