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深夜。スマホと財布、ゴムをポケットに突っ込んで暗い家を出る。、。
目的地は近所のホテル
ホテルのエントランスでスマホをいじって待っていると若い男が寄ってきた
「やっほ。アオイ君」
「久しぶりだね」
その彼に肩を抱かれてホテルに入る
「今日何時まで?」
「お金さえ先に払ってくれれば朝まででもいーよ」
そう答えると彼は三万円をナマでよこす
「ん。」
それを受け取って財布にしまう
「ジュン君は脱がせたいんだっけ?」
「そそ。」
それだけ言われてベッドに押し倒される
ジュン君は割と顔も良いし体の相性もいいから今日は当たりなほうかな
そっからはとにかくヤるだけだ
『あっん///···そこっ···ジュン君奥っ』
『はぁっはぁっ···ぅあっ』
しばらくヤって朝方、満足して寝ている彼をおいてホテルを出る
俺がやっていることは受けをやって金をもらう、簡単に言えば援交かな
別に金に困っているわけではない
···ただ何となく退屈な夜に小遣い稼ぎに援交をするだけ
セックスは嫌いじゃないし男とヤっているのも儲かるからってだけ
まあまあ気持ちいいし、ストレス発散みたいなもので金が貰えるんだから利に叶っていると思う
家に戻って二時間ほど寝てから大学に向かう
あー結局朝方までやったから腰痛った···
授業は大して重要でもない事をしゃべっているだけで興味がなかったのでほとんど寝ていた
「おーい。青葉、講義終わった」
「んんー。ゆっきー?」
まどろみの中で聞きなれた低い声をかけられて目をさますと、ゆっきーこと雪斗がいた
彼は大学でよく行動を共にしている友達だ
たまにプラベでも遊んだりする
「お前今日バイトあるって言ってたろ」
「んぁーそだった」
なおも寝ぼけた様子の俺を見て雪斗は苦笑している
「いっつも眠そうだよな。大丈夫?夜なんかやってんの?w」
「あはっちょっとね。てか心配してくれるんだやさし」
「普通だろw」
少し苦笑を混ぜながらにっと笑った彼に俺も思わず頬が緩む
ゆっきーってかっこいいよなぁ。なんでみんな気づかないんだろ。
雪斗は切れ長のつり目にオオカミみたいな三白眼、シャープな輪郭に口や鼻も綺麗に収まっていて、イケメンに分類される顔立ちだ
しかし、雪斗はマッシュめの黒髪にやや大きめな黒渕のメガネをしていて印象的なかっこいい目が見えづらくなってしまっている
そんなことを考えていつの間にか黙ってしまっていた俺の顔をゆっきーが覗き込んできた
「青葉?やっぱ体調悪い?」
「んーん。大丈夫」
優しくて温かくて雪斗といると心地いい
好きだなぁ
···でも心配も迷惑もかけたくない
ぐっとのびをして立ち上がる
「ゆっきーはまだ講義でしょ。じゃねー」
「じゃあな」
大学を出てカフェのウェイターのバイトをして家に帰る
いつも通り、買ってきた晩ごはんを食べてスマホをいじって時間が過ぎる
ふと時計を見ると時間はもうすぐ0時といったところだった
時間を見て、いつもの虚無感に襲われる
自分しかいない家が静か過ぎて、自分の部屋ががやけに広く感じて、空気が薄くなったような息苦しさを感じる
こんなのは今日だけじゃない
仕事ばかりでろくに家にいない親から愛情なんてまともに受けてない
だから幼い頃からいつも寂しかった。だけど夜中はより孤独で暗闇がもっと俺を独りにした
援交なんてものに手を出したのはいつだったか
薄っぺらい言葉。一晩だけの愛にすがるようになったのはいつだったか
俺はまたスマホと財布、ゴムをポケットに突っ込んで家を出た
そしてヤリモクの奴らがたむろするサイトで適当な相手を見つけて、またホテル近くに待ち合わせる
別に金に困っている訳じゃない。
ただ退屈で···息苦しい夜をやり過ごすために援交をするだけ
「君がアオイ君?」
スマホをいじっていると男が声をかけてきた
「そうだよ」
俺が愛想よく肯定すると男は歪んだ笑みを浮かべ俺の手首をかなりの力でつかんできた
あっこれ···やばいかな···ちょっと怖いかも···
「君キレーな顔してんだねぇ。こんなホテルじゃなくてさボクの家でヤらない?」
俺はさりげなくみをよじって距離をとろうとするもこの男のひょろい体のどこにあるのかと言う力でつかまれていて離れられない
どうしよ···家はさすがに···何されるかわかんないし
「家すぐだからさぁ」
「ちょっ···」
抵抗もむなしく腕を引っ張られてよろける
やばいやばい···どうしよどうしよ···
「すいません。彼、嫌がってますけど?」
焦って頭が真っ白になりかけていた時、聞きなれた低い声が聞こえた
はっとして顔を上げるとそこには雪斗がいた
「お前誰だよっ!関係ないだろ」
まさかの人物に絶句していると俺の手をつかんでた男が逆上して雪斗につっかかった
その拍子に男が俺の手を離したのでさっと距離をとる
「関係ありますよ?俺こいつの彼氏ですもん」
思わぬ雪斗の言葉に逆上していた男だけでなく俺も呆気にとられる
「あとこいつまだ未成年ですから。犯罪ですからね?じゃ!」
そこまで言って雪斗は俺の手をとって走り出す
さっきの男とは全然違う、優しい力で包まれた手が引かれるままに走ると、いつのまにか俺の家の前だった
「なあ···さっきのって」
少し躊躇うように問われた言葉に俺もごまかせないなと分かった
「青葉···いつも眠そうだよな。いつもしらねぇ男とヤってんの···?」
そういった雪斗は少し辛そうな表情をしていた
[雪斗目線]
俺の隣で講義を聞かずに寝ている彼を見て思わず頬が緩む
男にしては少し長いウルフカットの髪をそっと耳にかけてやると彼もとい青葉はその綺麗な顔をくすぐったそうに歪める
ははっ可愛いな
俺は青葉の事が好きだ。友達としてじゃなく恋愛対象として
青葉をこういう目で見始めたのはいっだったか。その質問には答えに窮する。青葉と関わって青葉を知っていくうち。多分いつの間にか。
だから夜中、コンビニから帰る途中にラブホテルの前で男と二人でいる青葉を見た時は驚いた
なぜそんなことを···何か理由があるのだろうか
声をかけようか迷っていると青葉がその知らない男に腕を掴まれていた
そのまま歩き出そうとしている男に青葉は抵抗しているように見える
それを見た瞬間俺は迷いも忘れて二人の間に割り込んだ
なんとか青葉を連れ出して青葉の家までくる
「なあ···さっきのって」
聞きたいことは結構あった。でも何を聞けばいいのか分からなかった
「青葉···いつも眠そうだよな。いつもしらねぇ男とヤってんの?」
そう問いかけた自分の声は我ながら情けないもので
俺じゃ駄目なのか
なんて、声には出せなかった
[青葉目線]
「ここじゃなんだからさ、家入ろ?」
雪斗にはちゃんと説明しようと思ったが、うまくまとめられる気がしなかったので取り敢えず雪斗と家に入る
やっぱり俺からちゃんと話さなきゃ駄目だよね
「さっき、ゆっきーが言ってたことは本当だよ。好きでもない奴と金もらってヤってる」
俺がそう言うと雪斗はやはり少し辛そうな表情をした
「っでも、別に金に困っている訳じゃないんだよ」
雪斗の辛そうな表情を見ていたくなくてあわてて補足すると急に雪斗に肩を掴まれた
「じゃあなんでしらねぇ奴に股開いてんだよ」
声をあらげた雪斗の表情は怒っているというよりむしろ今にも泣き出しそうなもので
なんて答えたらいいか分からなかった
だから俺はたどたどしく言葉を絞り出す
「···俺···寂しくて···誰もいない家が嫌で」
「俺じゃ駄目かよっ」
そんな中投げられた雪斗の言葉に一瞬思考が停止する
「···え?」
「しらねぇ奴とヤるくらいなら何時になっても俺をよべよ」
懇願に似た雪斗の訴えに戸惑う
「なんでそんな···」
俺がそう聞くと雪斗は我に返ったようで、少しばつが悪そうに目をそらし、口を開く
「···好きな奴が援交なんかしてて気分が言い訳ねえだろ」
「好き···?」
俺が聞き返すと雪斗は頬を赤らめて頷く
「同じ気持ちだったんだ」
「同じ?」
思わず口からこぼれた言葉を雪斗が拾う
「俺も···ゆっきーの事が好き。俺の寂しさを埋めてくれるのがゆっきーならいいなって思ってた」
震える声でそう伝えると俺は抱き締められた
今までで一番温かくて優しいハグ
「なら、俺のだけのものになって?」
そのハグと同じくらい優しい声でささやかれた問いかけに俺は迷わず頷いた
あれからもう援交はやってない
雪斗が純粋な愛をくれるから、一晩だけの偽物の愛にすがる必要なんて無くなったから
雪斗のお陰で夜の息苦しさもだいぶましになった
それでもどうしても寂しい夜は電話をしたり直接会ったり
たまにそうゆうこともしたり
相変わらず親は仕事ばかりでろくに家にいないけど雪斗のお陰で楽しく過ごせるようになった