「キヨ、24日って空いてる、?」
突然フジからそう言われた。
24日……24日……。恋人にとって大切なイベントがあることをすっかり忘れていた俺は、「空いてるけど、何?実況でも一緒に撮る?」とフジに言った。すると、「空いてるんだね。やった!」と子供みたいに無邪気にはしゃいだフジは、俺に向けて
「デート行こ!!!キヨ!!!クリスマスだよ!!!」
と言い、ニコッと笑った。
その言葉を聞いて、俺は瞬時に理解した。
24日。それは「クリスマスイブ」。恋人同士が愛を深め合う日。それは俺とフジも___例外では無い___。
うぃーす。どーもキヨでーす。
俺はキヨ。個人でのゲーム実況はもちろん「最終兵器俺達」略して「最俺」としても活動している人気ゲーム実況者だ。
俺は、そのメンバーである「フジ」と付き合うことになった。
フジと付き合ったのは、12月の初め。
冬になり、すっかり寒くなってきた東京の、フジの住んでいるマンションの屋上で俺とフジは結ばれた。そして付き合ってから早くも3週間。12月の終わりも近づいていた。
今日も俺は最俺で実況動画を撮る約束をしている。最俺ハウスに向かう途中、思わず「ひぇー、まじさみーよ……泣」と口に出していた。俺の出身地である北海道と比べれば寒くは無いし、移動手段などの弊害になる「雪」が降ることはごく稀だが、それでも東京の冬は寒い。どこに住んでいても、「冬が寒い」という事実は変わらないんだなぁ。なんて、当たり前のことを考えている間に、俺は最俺ハウスに着いていた。
「おつかれー。」俺はそう言ってドアをくぐる。するとすぐに「キヨ!!まってたよぉ!!」とすごい勢いでフジがリビングから玄関に向かってやってきた。こいつどした、、?なんか、いつもに増してはしゃいでる……というか……。そんなフジを見て「何かいい事でもあったのだろうか?」と思った俺はフジに「なんか今日やけに元気いいなぁ笑 なに!なんかいいことでもあったんだろー。」と言った。すると俺の言葉に食いつくように「ブッブー!!外れ!キヨはばかだなぁ〜。」とフジは言った。それを聞くなり、すかさず俺は「ばかじゃねぇし!!わかるかーーー!!笑」と言った。すると、2人とも子供みたいにはしゃぐお互いの様子を見てくすくすと笑いが込み上げてくる。
ぁぁ、やっぱりフジといると楽しい。こんなにどうでもいい、普段ならなんとも思わないことですら、「楽しさ」や「面白さ」を感じてしまう。俺は本当にフジと付き合えて幸せだなぁ。と、ついつい浸ってしまった。
……って、こんなこと考えてる場合じゃねぇ!!フジがなんではしゃいでるのか聞きたいんだった。ふと我に返った俺は「で!!笑 なんなんだよ!笑 お前、なんか絶対いいことあっただろ!!笑 何あったのか俺にも教えろ!!笑」ともう一度フジに何があったのか問いかける。するとフジが「しょうがないキヨくんだなぁー。いいよ。教えてあげる。でもその前にねぇ、キヨに聞きたいことがあるんだよね。」という。聞きたいこと?なんだろう?と思ったが「いいぞ。なんでも答えるぞ!」と俺は言った。
すると
「キヨ、24日って空いてる、?」そう俺に向かって急に不安げな表情でフジが問いかけてきた。
24日、特に何も予定はなかったなぁ。と思った俺は、実況でも撮るのか?と思い「空いてるけど、何?実況でも一緒に撮る?」とフジに言った。
するとフジは、さっきとは一変してまた幸せそうな、嬉しそうにニコニコした子供のような表情を見せる。その表情に俺は見とれていたのもつかの間。フジが俺に向けて
「デート行こ!!!キヨ!!!クリスマスだよ!!!」と言いニコッと笑った。
クリスマス……クリスマス……!?24日、フジがなぜ俺に予定が空いてるのか聞いてきた理由を瞬時に理解した。
ここ数年、クリスマスの期間に彼女がいたことがなかった。そもそも、フジと付き合う2ヶ月ほど前に付き合っていたメンヘラ彼女より前に付き合っていた彼女……というと、付き合っていたのは6年以上前なので、「クリスマスは俺には関係ないもの」として思っていた俺の脳内には、「クリスマス」なんてここ数年ずっと存在していなかった。
クリスマス、それは恋人同士が愛を深め合う日。それは、異性だろうが、同性だろうが例外は無い。今年のクリスマス。俺はフジと過ごすことができるのか……。幸せすぎて、あと2週間もあとなのに、今から24日が待ち遠しくなっていた。完全に浮かれ気分になっていた俺を見て、フジが「キヨー?キヨー?」と声をかけていたようだが、その声は俺には届いていない。フジとクリスマスを過ごせる。一緒にショッピングをしたり、イルミネーションを見に行ったり……、ご飯を食べたり、そのあとは……。。と幸せな妄想が止まらなくなっていた。完全に頭お花畑男になった俺は「二へへ……」と気持ち悪い笑みを浮かべていた。すると、それを見たフジが「うわ、!!!!キヨの顔キモ!!!!」と言って軽くビンタをしてきた。突然のことに一瞬理解できなかったが、フジのおかげで俺の意識は完全に戻ってきた。妄想の世界から脱出できたのはいいことだが……てゆうか……てゆうか!!!「キモって何だ!!!!笑 てか、今ビンタした!?笑」俺はフジに食い気味にそう問いかけた。するとフジはじーっと俺を見つめて「だって……キヨ……めっちゃ顔キモかったし……ずっとニコニコしてて俺の声聞こえてなさそうだったし…………うん…とにかく……」おいこいつめっちゃ失礼だな。と思ったがフジは俺にさらに追い打ちをかけるように
「ガチで、キモかったよ。うん。笑 蛙化だよ…笑」と言ってきた。
え、俺そんなキモイ顔してた????てゆか、何度もキモイって言わないでいいじゃんさぁ……笑 俺のダイヤモンドメンタルも、パキッとヒビが入る音がする。「冗談なんだろうなぁ……てのはわかるんだけどさ……傷つくから笑 普通に笑 あんまキモイって言うなし笑」と俺がフジに言うと、「ごめんごめん、ちょっと意地悪しちゃった。笑」と言ったあと、少し間が空いてから、自慢げに
「かっこいいよ。俺のキヨはいつだってかっこいい!」……フジがニコっとした笑顔でそう言ってくる。
その表情は、まるでいたずらっ子のような、小悪魔のような感じだった。
この小悪魔め……俺もいつかやり返すからな……(圧)と思っていたが、内心、大好きな相手に「いつだってかっこいい」と言われて嬉しい気持ちでいっぱいだった。またも頬が緩みそうになる。するとフジがムっとした表情で「で、!!!キ!!!ヨ!!!デート、行く!!!?」と再び俺に問いかけてきた。ぁぁ、結局俺答えてなかったな。幸せな妄想が邪魔して、すっかり忘れてた……。
「行くに決まってんだろ。フジからのデート断る馬鹿いねぇよ。配信とかの予定あってもすっぽかして行くわ!!!笑」と俺は言った。それを聞いてフジは、「配信はあるならそっち優先しな!!笑 」と言ってきた。それを聞くなり「何言ってんだ。フジ優先に決まってんだろ。」と思ったが、これをフジに言ったところで、あいつは優しいから「ダメだ!!配信優先!!」の一点張りになると思い、俺は自分の気持ちにそっと蓋をした。そんなことを考えていると、
「ねぇキヨ、さっき俺に何かいい事があったのか、聞きたがってたよね?」とフジが言って来た。
そうだそうだ……。また話が脱線して忘れるところだった……笑 「そうそう、何があったんだよー笑」と俺はフジに問いかける。すると……
「キヨなら、きっと24日、開けてくれてると思ってね。デートにきっと行ってくれるだろうと思ったら、今から楽しみで、嬉しくて……。」といい、フジは俺に向かって、優しく微笑む。
そんなに俺と過ごす「クリスマス」を楽しみにしてくれてたんだ。と思うと俺は嬉しくてたまらなくなった。でももし、俺が断ってたら、あいつすごい落ち込んでいたんだろうなぁ……。しょんぼりしているフジの顔も可愛いから、1回「行けない。」って断るのもありだったかなぁ……と思ったりした。その後に、「行けるに決まってるだろ。」って伝えたら、きっといつも以上に喜んでくれたんだろう。だめだな笑 こんな悪魔みたいな考えは笑
フジ。俺も今から本当に楽しみだよ。クリスマス。今までの中で1番素敵な1日にしよう。どんなことをしようかな。どんなディナーを味わおうかな。
「本当にフジは可愛いな。クリスマス、絶対一緒にすごそうな。」
「かわいい」なんて言うとあいつは怒るかもだけど、俺はつい思っていたことを抑えることができず、そう言ってフジに微笑みを返していた。
コメント
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ピギャアアアアアアアア!!!!!!!!! クリぼっちだァァァ!!!!でもこれみてたらクリぼっち解消できる