「本気の度合いなんて人によって違うだろ。俺とお前とじゃ本気の上限が違うんだよ」
凪は面倒くさそうにそう言った。千紘がカットした髪をかきあげ、少し色が褪せた青が綺麗に光った。
「上限ね。じゃあ、俺のMAXはここかぁ。……凪大好き」
千紘がにっこりと笑っていう。全く害がなければまるで天使のような笑顔に、凪はぐっと顔をしかめた。
「大好きとか言うなよ。俺はそれに応えられない」
「いいのいいの。今はね」
「だから今はとかじゃなくて」
「ねぇ凪、エッチしよ」
千紘はスマートに体を起こすと凪の上から覆い被さった。その瞬間、凪は大きく目を見開いた。
「……は?」
「後ろが原因だったのか結局わからず仕舞いだし、凪が満たされるようにとりあえず体で満足させてあげるから」
「……お前、何言って……」
凪はさあっと顔を青くさせた。今日は無理矢理しなかった。やめてほしいと言ったら止めてくれた。それ以上苦痛を与えることはなかった。だから、今日はもう帰るだけ。そう思ってたのにまさかのどんでん返し。
それも本来ならとっくに時間は過ぎていたのに、この男のことを少しだけ信用してここに留まったのだ。これ以上の裏切りはないと凪は顔を引き攣らせた。
「大丈夫。全部俺に委ねて」
千紘はふわりと笑う。本気の恋愛というものを知らなそうな凪に、嫌というほど愛情を注ぎたいと思った。
「絶対嫌だ。お前、俺が嫌がることしないって言ったじゃん」
「うん。言った。嫌なことしない」
「言ってることと、やってることがっ」
千紘はまだ凪が喋っている内に、凪の前髪を上に上げてそこに唇を軽く押し当てた。チュッと軽くリップ音が響く。
凪はぐっと眉間に皺を寄せるが、千紘はそんなものなどお構いなしに、左頬にもキスを落とした。
「やめっ……」
凪が抵抗する中、千紘は優しく至る所にキスを落としていく。千紘との距離が近付く度に前髪と襟足が凪の頬を掠める。それが何とも言えずくすぐったくて、凪は身を捩った。
千紘の唇が凪の耳元に近付くと、急に濡れた感触に襲われた。すぐに舐められたのだと気付くが、その頃には体の方が早く反応していた。
「ふぅ……」
自分の意思とは関係なく漏れる声と、しなる体。嫌で仕方がないはずなのに、快感はどこからともなくやってくる。
数時間前に千紘に射精させられたことを思い出すと、急激に羞恥心を感じた。またあの時みたいに色んな快感が押し寄せるのかも。そう思った瞬間、ゾワッと全身に鳥肌が立った。
体の奥底でそれを求めているかのようだった。
そんなはずない……。凪はそう思うが、なぜかそれとは裏腹に抵抗する手の力が緩んでいく。当然千紘もそれに気付き、穏やかに微笑むと優しく耳から首筋を攻め立てた。
あれから時間が経ってしまったから、また徐々に慣らしていかないと。そう思いながら千紘は先程の要領で同じように凪に触れた。
「はっ……ぁ……」
ビクビクと小刻みに凪の体が震え、竿の先からは蜜がゆっくりとこぼれ落ちる。先程と違うのは、千紘がそこには触れないこと。
早い段階で凪の硬く膨れ上がった部分に触れた千紘の指は、そっとシーツに縫いとめられたまま。
もう片方の手は、ゆっくりと焦らすように凪の太腿の内側を撫で上げた。その度に触れてもいない竿がピクンピクンと上を向く。
凪はその状態で10分以上焦らされ、腹部の奥がギュッと熱くなるのを感じた。痛いくらいにパンパンに膨れた竿は、もう外に飛び出したい何かが、中で渦巻いているようだった。
早く解放されたくなって、凪は自ら腰を上げた。腰を動かせば微かに腿に乗せられていた千紘の指先に触れた。
「っっ……!」
たったその一瞬で、凪は声にならない声を上げた。
千紘は軽く目を閉じたままゆっくりと口角を上げ「凪はえっちだなぁ。自分からおねだりするなんて」と低い声で呟いた。
その言葉に凪はたまらなく情けない気持ちになる。嫌だと言いながら、体は自分の意思とは関係なしに動く。
更に、触ってほしくないのかと問われれば既に触るなとは言えない状況になっていた。
「違……」
「違うの? 凄いね。お腹汚れちゃった」
腹部まで付くほどそそり立つ竿は、ボタボタと先走る蜜をこぼし、凪の臍辺りを汚していた。
そこに千紘が筋張った長い指をそっと這わせると、ビクンっと激しく体を揺らした凪の竿が跳ね上がり、千紘の手背を叩いた。
パチンと小気味いい音が響き、その硬さを顕にしていた。
さすがにここまできては凪も言い訳ができない。射精したくてもできないもどかしさもあるが、自らソコに触れるにはプライドが邪魔をしてそれもできない。
自ら自慰行為を見せつけるような真似はしたくないと歯を食いしばる。それでも下半身はギューっと熱くなるばかりで、凪は呼吸を荒くさせた。
「……苦しい」
凪は、潤んだ瞳で千紘を見上げた。もう脳が射精することでいっぱいになって、まともな判断ができそうになかった。
今すぐ解放されたくて、どうにかしてほしくて、凪は千紘の腕を掴んだ。
「そっか、苦しいね」
千紘は穏やかな声で甘く囁きながら、凪の額にキスをする。それすらも焦らされているように感じて、凪は近くなった千紘の腹部に腫れ上がった竿を押し当てた。
「ここ、苦しいの?」
千紘は人差し指の先で尿道口に触れる。大量の蜜がすくい取られて、千紘の指を伝って流れるほど。粘度の高い光は指を擦り合わせれば容易に糸を引く。
親指で擦り、人差し指で擦り、2本の指で挟み込むように同時に擦り上げた。
「あぁっ……」
凪から普段よりも少しだけ高い声が喉を通り、千紘の鼓膜を震わせた。
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