誘うような凪の甘美な声は、千紘を煽る。余裕そうに演じてみても、内心貪りつきたくてたまらなかった。
凪の反応はとんでもなく可愛くて、いくらでも甘やかしてやりたくなる。しかし、このまま射精させてしまえば、満足感を得て先程のようにもういいと突っぱねられてしまうだろう。
同じ過ちはもうしない。そう思った千紘は、淫らに輝く指先を滑らせて竿の付け根の膨らみに触れた。柔らかな感触を感じると同時に、スベスベとした肌触りが心地良い。陶器のように滑らかな部分を通って、後口を撫で上げた。
凪は目を見開いて腰を引いた。千紘が軽く竿に触れてくれたものだから、そのまま扱いてくれるものだと思っていた。
それなのに期待とは裏腹に感じる違和感。凪が拒否するよりも早く、千紘の指がゆっくりと侵入した。
凪の滴る液体が潤滑油となって、指を押し進めていく。
「ねぇ、凪ここ触って欲しかったの?」
千紘は違うと言われることをわかっていながら尋ねる。あまりにもキツく締め付け、体が拒絶していたらどうしようかと思ったが、凪が何度か自ら触れていた事もあって入口は柔らかく解れ始めていた。
「ヒクヒク動いて俺の指が進むの待ってるみたい」
耳元で囁けば、千紘の指を締め付けるかのように中でぎゅうっと力が入った。凪が真っ赤な顔をして口を開いた瞬間に、千紘はそのまま唇を重ねて舌をねじ込んだ。
開口していたため、千紘の舌は凪の上下の歯列の隙間を通って舌の上を滑っていった。
広範囲で絡め合う舌は、唾液を多く含みねっとりとした水音を生み出した。
凪の神経がキスにいくと、千紘はその隙を狙って指を軽く曲げた。中で動く刺激が全身をビリビリと痺れさせた。
「んーっ!」
声が出せないまま、指の動きはゆっくりと中を探るように動く。凪の反応を見ながら、いいところを突き止めるべく進む。
指を入れて5cmほど進んだあたりで、千紘はゆっくりと腹部側を押し上げる。膀胱と性器の間にある窪みに触れると、凪は体を大きく跳ね上がらせ、助けを求めるかのようにギュッと力強くシーツを握った。
「凪、女の子の体には詳しくても自分のここは知らないでしょ? ここが前立腺ね。神経終末が集まってるから特に敏感なんだよ」
説明するかのようにゆっくりとわかりやすく言葉にするが、凪は目をギラギラと血走らせて、ふーふーと息を激しくつく。
「前に触ってから時間も経ってるから、ちゃんと解そうね」
優しく凪の髪を撫でた千紘は、時折凪の蜜をすくっては後口に塗りたくり、潤滑を良くさせる。
何度か中を刺激する内に、凪の竿がビクビクと反応し、白濁の液が迸る。バラバラと撒き散らすように凪の体やシーツを汚していく。
凪も、まさか射精するとは思っていなかったのか、驚いたように瞼を上げて体を起こした。しかし、その動きによって更に千紘の指が奥深くに刺さり、凪は「っあ……」と足をギュッと閉じて三度体を痙攣させた。
「またいっぱい出たね。やっぱり中気持ちいいんだね」
思った通りの反応に、千紘は当然だとばかりに頷き尚も指の動きを速めた。その刺激に凪は、倒れるように頭を勢いよく後ろに押し付け悶えた。
「あっ、待って! っんぁ、はぁっ……今、出たばっかでっ」
「うん。刺激で出ちゃったね。でも自分でもよくわかんない内に出ちゃった感じでしょ? ちゃんとイキたくなるとこまでしよっか」
「ああっ、無理っ! ソコ、ヤダっ……」
「ん? 痛い?」
「っ……痛く、ないけどっ……んっ、あっ……」
シーツを握ったままブルブルと震える凪は、吐息混じりに喘ぎながら千紘の指から逃れようとする。
同じことを数分繰り返すと、もう一度凪は絶頂を迎えた。その頃には千紘の指がスムーズに動くようになっていて、柔らかくスペースを広げていた。
「指増やすね」
ちゃんと行動を起こす前に言葉をかけてくれる声は優しいが、訪れる刺激は息が止まりそうなほどの圧迫感。
しなやかで美しい手をしていても、それは男の手だ。2本の指はギチギチと凪の後口を広げた。
「うぁ……待って、苦しっ」
「大丈夫。最初だけだよ」
「でもっ、むっ……ひぁ!?」
ふるふると顔を左右に振った凪だったが、意識が飛びそうなほどの快感が駆け巡って、体が勝手にピンッと張り詰めた。
「もっと気持ちよくなれるよ」
凪は千紘の声を聞く度に、自分の知らない快感がどんどん押し寄せてくるのを感じた。囁かれると、次にまた別の気持ちよさがやってくる気がして身構えると同時に少しだけ期待する。
まだまだ刺激が続くのかと思うと、もうイケないかもしれないと思いながらも、どこまで意識を保っていられるか試してみたくもなる。
それほどまでに凪の頭はまともな思考ができなくなり、目の前の千紘と彼が与えてくれる快感に溺れていった。
恐怖しかない感情の中で、ひたすら体だけが反応を示した前回とは違った。凪にも少しばかり好奇心が芽生え、この快楽に身を任せるのも悪くないと思い始めていたから。
中を擦られる度に全身が性感帯になってしまったのではないかと疑うほどに、どこを触られても気持ちよく感じた。
その内になんとなく前回の記憶が蘇る。体位を変えて何度も千紘に突き上げられたこと。腹の中がいっぱいになるまで奥まで刺されたこと。あの時は頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなった。一瞬、恐怖さえも忘れた。
今だけでこんなに気持ちよかったら、あの時の感覚を得たらどれほどのものなのだろうか。元々性欲が強い凪は、本能的にあの時の刺激を求めていた。