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「ではまず、このBOM社のホームページを見てください」

スクリーンに映った画像は、先ほどまで話し合っていた商品に瓜二つ。

「ほんの少しディティールに違いがあるだけで、ほぼウチと同じです」

そういいながら、ホームページ上に載っているここ数ヶ月で売り出された商品を次々と映し出していく。

「これらはこの数ヶ月間で発売されています。特にこの商品は開発に何年もかかり、特許申請中ものです」

これを無断で製作するのは、法に違反する可能性があると篤人は訴える。

「これは明らかに、社外秘の機密情報がBOM社に漏洩したといっていいと思います」

会議室全体が静かになる。燎子は俯き、伊吹は壁にもたれて腕を組み、苦虫を噛みつぶしたように顔を歪ませていた。

「私が先日、美濃さんから聞いた話では、美濃さんは機密情報にアクセスするためのパスワードを知っているとのことでした」

「で、でもっ!! それは社長から聞いたことで、自ら教えてほしいと言った訳ではありません!!」

わあっと泣き出す燎子。これが演技なのかなんなのかわからないけれど、社長も顔色が悪くなっている。

「社長、申し訳ありませんがお答えください。社長と各部署の部長だけが知っている機密情報のパスワードを、美濃さんに教えたのは本当ですか」

篤人の冷たい声が会議室に響く。

「あぁ、……そうだ」

「それは、どんな理由があろうと就業規則違反となります」

「……すまない」

項垂れた社長。私は燎子がわざと聞き出したのかと思っていたけれど、もしかしたら社長にも非があるのかも。

「なんですって……!!?」

声と同時に、ドンっ!! と大きな音がする。山田さんが机を叩いて、わなわなと震えながら立ち上がった。

「あなた!!! また若い子にちょっかいかけたの!? 機密情報のパスワードを教えるなんて、何考えてんのよっ!!」

あ、あなた!? 山田さんはツカツカと社長の席まで歩いて行こうとする。隣に座っていた営業部長が後ろから追いかけて、社長と山田さんの間に割って入った。

「奥さま、落ち着いて!!!」

「いいからそこをどきなさい!!」

「すまなかった!! 調べものをするときにいちいち面倒でっ!! もうしない、もうしないからっ!!」

ぽかんと開いたままの口が塞がらず、その茶番をただ見ているしかない。

奥さま? 山田さんが社長夫人? 社長と苗字ちがうよね?

「すみません、話はまだ終わっていません。落ち着いてください」

ふんっ!! と鼻息が荒いまま、山田さんは仕方なしに元の席に戻る。

「美濃さん、あなたはこの情報をBOM社に売りましたね?」

んんんっ!? なんでそうなる? 伊吹と2人で共謀していたのでは? 思っていたのと違う展開に、弾かれたように篤人の顔を見た。

それと同時に、ガタンっとイスから立ち上がる音がする。燎子は顔を真っ赤にして叫んだ。

「違います!! 私は機密情報を売っていません!! それを教えるかわりに、風見さんが私に協力してくれるって言ってっ……────!!!!」

「協力?」

バッと口を両手で抑えた燎子。こうなったらもう誰も止められない。

「おい、俺にそれを吹っ掛けたのはお前だろ!!」

「あなたが最初に機密情報知りたいって言ってきたんじゃない!!」

伊吹の荒げた声と、悲鳴にも似た燎子の声が会議室に響き渡る。

「花音を陥れるのに協力したら、機密情報を渡すって言ったのはお前じゃねーか!!」

「それをBOM社に売ったのはあなたでしょう!!? 私は機密情報をあなたに渡しただけよ!! それ以上のことはあなたが勝手にやったことだわ!!」

「いい加減にしろよ!! このビッ○!!!」

言い争う声だけが聞こえる。このやり取りからして、2人に恋愛感情がないことを感じとる。伊吹は機密情報を売って、お金にかえたかったのだろうか。

いったいなぜ? 何のためにそんなことを? この会議室だけでなく、会社全体がそんな空気に包まれているのだろう。

バタン!!! と、ものすごい勢いで

会議室のドアが開いたと同時に、本部長が会議室に駆け込んでくる。

「おいっ!!! 今の話、本当か!? 放送で会社中に垂れ流しだぞ!!?」

シンとその場に誰もいなくなったような静けさが広がる。時間は13時過ぎ。社内は休憩が終わり、それぞれが仕事をはじめた頃だ。

全体会議や、社長の朝礼も多いうちの会社。この会議室には、放送設備もついている。

篤人が小さく息をついて、マイクとそのすぐ横にある社内放送のスイッチを切っているのが見えた。

伊吹と燎子は本部長に連れられて、別室へと移動していった。

山田さんにキツく怒られた社長も、よろよろしながら別室に向かった。

会議室はあまりのことにまだ誰も喋らず、その場にみんな座ったままでいた。

私も頭が真っ白で、なかなか立ち上がれない。

「……あんな男と結婚したのが運のツキね」

ふんっと腕を組み、頬を膨らませた山田さん。ぶりぶり怒っているのなんか、初めて見た。

「息子の前でけちょんけちょんにされて、いい気味よ」

「むむ、む、息子!? 息子って、だ、誰ですか!?」

私は驚いて声を上げた。この中に、息子? 山田さんが社長の奥様ってことは、御曹司がこの中にいるってこと!?

ここにいるのは、山田さん推定50代、商品開発部長推定50代後半、営業部長40代後半、永井篤人26歳……。

「まあまあ、奥さま」

商品開発部長推定50代後半が山田さんに声をかける。私は演台の前に立っている篤人を、ぐぎぎっとサビついたロボットのようにぎこちなく首を動かして見つめた。

「永井くん、お手柄じゃないですか」

「ありがとうございます」

蜜音の花が開くとき~復讐のためにイケメン後輩と夜のサブスク契約結びました!?~

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