「……マジカルバナナ、バナナと言ったら物質!」
「おいそれズルだろ灰野ー!!」
どっっとバスの中が笑い声に満ちる。
修学旅行、2日目。芽白市第二中学校、3年B組のバスの中は、外の土砂降りからくる暗がりも吹き飛ばすほど明るかった。
普段と違う環境、友だちと一緒の旅行…テンションの上がった彼等は、スクランブル交差点も顔負けなほど口を動かし、バスの中を音の洪水で埋め尽くしていた。
「いやーしかし、爽のやつも災難だったよな。」
一人の男子が思い出したかの様に口を開く。
青柳爽。3年B組の一員であり…不幸にも修学旅行当日にインフルエンザに罹り、修学旅行を休んだ男子だ。自他ともに認める彼の幼馴染みにして親友、柊鳴琉叶は眉を寄せ、親友の名前を出した。
ちょっと変人だがよくクラスの中心にいる彼のことを思い、皆が口々に修学旅行にこれなかった彼に同情する。修学旅行という一大イベントに来れなかったのはどれほどの無念だろうか。すかした顔をしているがイベントごとが好きな彼は、随分と悔しがっているだろう……
お土産渡して煽ろうぜ、というお調子者の頭を赤いピンを付けたしっかり者の彼女が叩く。大声自慢のがマジカルバナナを続けようとし、ブーイングの嵐に泣きまねをする。そうして話題が移り変わり、バスも山道に差し掛かろうというとき……
バスは大きく揺れ、天井がしなって凹み、石が誰かの頭を押しつぶした。途端にパニックになるバスの中。血の鉄臭い匂いが蔓延する空気は、徐々に酸素が失われ…一人、また一人と意識を手放していく。
彼等は知る由もなかったが、大雨で山が崩れ、土砂崩れを起こしたそうだ。石と土の波は3年B組のバスを飲み込み、彼等の命を奪った。
後日、捜索隊が派遣されたが、一部遺体は発見されなかったそうだ。遺族は一抹の希望を掛け、未だに彼等を探しているらしい。
「爽ーー!!遅刻するわよーー!!!今日から新学期でしょ、新学期早々遅刻してどうするの!」
「わーかった、起きるって…」
暖かく心地よい布団から、一人の男子が名残惜し気に姿を現す。彼の名前は青柳爽。…とある事件により同級生を失い、色々苦労してきた一人の男子だ。
泣きじゃくる親友の妹の背をさすり続けたことも、B組が居なくなったため映らされたA組のやつらの好奇と同情に満ちた視線も、まっ白な卒業アルバムも、記憶に新しい。
そんな彼もこの春から高校一年生。新しい出会いに胸を弾ませないほどませてはいない。
「えーと、俺のクラスは…またB組か……ん?」
クラス表を見渡す彼の視線の中に、少しの違和感が混ざった。何処かで見たことのあるような名前が、目に入った気がしたからだ。
だが、どうも思い出せない。それに次々とくる新入生が、確認したなら退けという顔で彼を見る。彼は考えを諦め、新入生の波に乗って教室までたどり着いた。
がらがらがら、クラスの扉を音を立てて開く。教室の中には、中学の時より若干大きい気がする机と、これからともに勉学を励む予定の同級生たちがちらほら座っていた。
彼は黒板に張られた自分の席を探しに行こうとして…固まった。
黒板の前に居た一人の少女。三年間見続けてきたその姿を見間違えるわけがない。だが、彼女がここに居るわけもない…はすだった。
彼女は視線に気づいたかのようにこちらに顔を向け、そして太陽の様に明るく微笑んだ。
「あ、おはよう、久し振り!」
彼女の名前は灰野芽萌。あの日自分がいけなかった修学旅行で、命を落としたはずの彼女。
その彼女が、記憶の中と何も変わらない姿で、高校の制服に身を包み笑っていた。
|紹介|
◆青柳爽 / iemn
∟あおやなぎ そう
◇柊鳴琉叶 / rk
∟ひいな るか
◇灰野芽萌 / mm
└すみの めめ
お久しぶりです、ヨゾラです。
数ある小説の中から、この小説に興味を持ってくださってありがとうございます💖
久し振りに小説を書いたので、ところどころおかしい部分があると思いますが目をつぶって読んでください。
リハビリ目的の小説です。できる限り早めに完結させたいとは思っています🤔
ハートとコメント、励みになりますので良ければお願いします🙏
ここまで目を通してくださってありがとうございます🙇
コメント
9件
ヨゾラの小説だ!!!めっちゃ嬉しい!!! え、リハ‥、ビリ…??何言ってんだこの人… 上手すぎて脱帽🙃更新待ってます!!!
うっっっっっま、すげぇ……リハビリでこのレベルはヤバすぎる…!!続き求む!!!!
きちゃァああ!!!うまぁ!?本当に最近書いてなかったんかって思うレベルでうまい!!完結してくれよ…?頼む…!!