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夕方、机の上に並べた教科書をぼんやりと眺めていた。明日提出のプリントがそのままになっていたけれど、なんとなく手をつける気になれなかった。時計の針の音だけが静かに響いていた。
外からは夕飯の匂いが漂ってくる。リビングでは誰かがテレビを見ている音がする。笑い声が遠くで聞こえるたび、どう反応すればいいのか分からなくなる。
昨日の夜、ふと聞こえた言葉が頭から離れなかった。悪気はなかったのかもしれない。そんなの分かってる。でも、どうしてか、胸がざわついて眠れなかった。
何かが喉にひっかかっているみたいに、言いたいことが言えなかった。
誰かが部屋のドアをノックする音を期待していた。話しかけてくれるだけで、きっと、今日の感じは変わったかもしれない。でも足音は通り過ぎていった。
そんな日が、何日続いただろう。
ふと、明日が来なかったらどうなるのかと考える。誰が気づくんだろう。誰が何か言ってくれるんだろう。誰か一人でも、本当に気にしてくれるのかな。
そうじゃなかったら、それはそれで仕方ないのかもしれない。
窓を開けた。風がカーテンを揺らしただけだった。