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【うれしいの】: shnk
生温くて、気持ち悪い。
真っ黒な遮光カーテンは一筋たりとも光の侵入を許さない。
部屋の中から出ていくことだってない。
画面から発せられる目が痛くなるような光が唯一の光源。
明るいなら、何でも一緒。
いつの間にか麻痺した嗅覚に意識を向ける。
へんなにおいかも。
でも窓は開けたくない。
全て無くなっちゃうような気がするから。
全てリセットされて、自分に何も残らないような気持ちになるから。
俺で染った、俺だけの空間。
ここならどんな自分でも許してもらえる気がして、受け入れてくれる気がして。
それでも時々この空間から抜け出したくなる。
俺のタイミングまで待ってくれて、一緒にいる時も 自然体でいてくれる。
そんな人が俺にはいるから。
扉の前に立ち、ひとつ深呼吸をする。
ドアノブを見つめながら、やっぱりちょっと怖いなぁなんて。
静かに扉を開けて1歩だけ廊下に出た。
sh「お、なかむ」
nk「おはよ」
sh「今夕方だけど」
くすくすと笑う彼を見てると、何故かつられそうになる。
sh「なんか食う?」
nk「いらない」
sh「腹減ったらいつでも言えよ」
何の変哲もない会話。
けれど俺にとっては十分なほど温かくて。
sh「暇なら俺の部屋来ない?」
nk「ぇ、ッ…?」
何言ってんだろ。
なんで部屋に呼ぶんだろ。
リビングでもいいじゃん。
変なの。
sh「ちょっと疲れたんなら来いよ」
nk「じゃあ、いく。」
いつもの部屋とは反対方向に歩く。
違和感。
nk「っえ、ッな、…?」
sh「俺、なかむとヤりたい」
ベッドに優しく投げられる。
なにいってるの。
ヤりたいって、なんで?
俺、男だよ。
付き合おうって、こういうことも含まれてたの?
ちょっと、うれしいかも、
なーんて。
nk「ぇ…ちょッ、ぬ、脱ぐの…?」
sh「そうだろ」
nk「ぁのッ、上はちょっと…ッ」
sh「…そっちが好きなんだ」
いつもより甘い声に混乱する。
低くて、甘くて、優しくて。
ちょっと甘ったるいけど。
上の服だけは、流石にまずいから。
嫌われちゃう。
引かれちゃう。
離れていくのが嫌だから。
大好きだから。
nk「い”ッ…た、っ」
sh「は…ッ?」
sh「…お前さ、もしかして」
いや。
いやだ。
その先なんて聞きたくない。
やめて。
もうこれ以上ひとりにしないで。
やだよ。
ねぇ、しゃけ。
俺から離れないで。俺のそばにいて。
俺の味方でいて。俺と一緒に生きて、俺と一緒に死んで。お願い。
もうひとりにしないで。いや。ほんとに。こわいの。もうひとり嫌。
しゃけが居なくなったら、壊れちゃう。俺、もう。どうしたらいいか。ねぇ、お願い。しゃけ。嫌わないで。離れないで。こわい。俺を守って。気持ち悪いなんて言わないで。引かないで。お願い。お願いだよ。俺を受け止めて。俺の全部を。もう、こわいの。どうしたらいいか。助けて。俺の隣に居て。ずっと。ずっと。俺のすべてを受け入れて。
nk「ッぁ…っひ、ッ…」
sh「これ、なんでやったの」
あーあ、
ばれちゃった。
sh「理由言えない?」
nk「気持ち悪いでしょ。」
sh「なにが?」
だめだ、話が通じない。
強く掴まれたせいで治りかけの傷から赤い涙が流れていた。
nk「俺ね、しゃけのこと大好き」
nk「だから居なくなっちゃうのが怖くて。」
sh「別に居なくなんないけど」
nk「だって、かっこいいし優しいじゃん」
nk「俺じゃ釣り合わないし、まず俺男だし 」
nk「これ以上好きになっちゃだめなんじゃないかなーってさ」
nk「それでも好きになっちゃうし、俺なんにもできないし」
nk「嫌いになりたくて、でも好きだし」
nk「なんで俺だけこんなに怖がってるんだろうって」
気がつけば透明の血が頬を伝っていて、熱い手に拭われる。
sh「俺が好きになったんだよ?」
sh「そんなの、ずっと一緒にいるし、誰よりも愛してるに決まってるじゃん」
sh「俺が愛してるからなんでもいい」
お互い、自分勝手だ。
おもしろい。
nk「なッ…だ、だめだめ…!」
俺の気持ちを隠していたはずのガーゼ達は彼の手によって剥がされる。
これじゃ、全部ばれちゃう。
sh「これも、これも…」
sh「俺のこと考えて切ったの?」
nk「…そ、うだけどッ…、」
流石に嫌だったかな。
まぁ、そりゃそうか。
sh「俺の事大好きじゃん」
nk「…へへっ、そうだよ」
やっぱり、しゃけは俺の事を受け入れてくれるんだ。
さすが、俺のしゃけ。
nk「ま、ッて…あッ”! い”た、ッぃ”」
突如、何も考えられなくなるほどの痛感に襲われる。
頭、真っ白になる。
意識がそこだけに向いていて。
余韻が長い痛みに顔を顰めて耐えるしかない。
治りかけの傷を舐められて、噛まれて。
爪で抉られたそこが痛くて、でもこんな俺でも愛してくれるんだとか。
ぐるぐると渦巻く思考を遮るように痛みが強くなる。
nk「ぃや”ッ、い”ッたいっ…」
sh「かわいいね」
nk「だめ”、ッぃ”…たッ」
お互い身体に良くないなんて、とっくにわかってる。
でもさ、愛してるならなんでもいいよね。
傷口を舌で抉られて、
溢れた血を舐められて、
傷を増やすみたいに歯が立てられて。
俺の腕を、俺の顔を、俺の反応を、
見て口角を上げる彼に、
うれしくなっちゃって。
俺、愛されてるなーって。
何度も何度も俺を襲う痛み。
慣れることはないし、自分でやるときより痛い。
けどね、
うれしいの。
愛し合ってるなら、どんな行為でもいいでしょ?