洞窟の奥に進む決意を固めた一行。しかし、突如として外から伝わってきた足音に全員がぴたりと動きを止めた。
「…なんだ?」ゆうなが低い声で呟き、辺りの空気を読もうとする。
「何か…聞こえる。」萌香が身を乗り出し、耳を澄ます。
その瞬間、木々が揺れる音がして、地面が震えるように感じられた。どこかで重い足音が近づいてきている。
「これ、やばいんじゃないか?」いさなが顔を真剣にし、みりんとゆうなに目で合図を送る。
突如として、茂みの向こうから現れたのは、巨大なトラだった。大きさ、筋肉の隆起、そして鋭い眼光。まるで自然界の王者のような迫力だ。
「うおっ、こっち来るな!」みりんが叫びながら弓を構えるが、トラは全く怯むことなく、一行に向かって走り出した。
「みんな、退避だ!」いさながすぐに指示を出し、全員は急いで洞窟内に引き返す。しかし、その道中でトラは猛スピードで追いかけてきた。
「速いっ!」萌香が息を切らしながら叫ぶ。
「急げ!」いさながリオを引き連れて、必死に前に進んだ。トラの足音が背後でどんどん近づく。
一行は洞窟の中に滑り込むように入るが、トラはその巨体を持て余すことなく、突進してきた。
トラが洞窟の入口にまで迫り、全員が必死に隠れる中、洞窟の外では第二の拠点が壊される音が響いていた。
「ダメだ、拠点が!」ゆうなが駆け寄るように、隠れながら状況を確認するが、もう手遅れだった。
トラがその鋭い爪で木製の壁をひと掻き、簡単に壊してしまった。拠点は一瞬で無力化され、木材が崩れ落ちていった。
「完全に壊された…!」みりんの声は焦りと怒りで震えている。
「いさな、どうすんだよ!」ゆうなが動揺しながらいさなを見つめる。
いさなはしばらく無言でその状況を見つめ、冷静に答える。
「仕方ない、すぐに次の拠点を作ろう。今はこの洞窟に隠れて、しばらく様子を見よう。」
一行は再び深い洞窟の奥へと入ることになった。しかし、外では依然としてトラの姿が確認されており、動きが止まらない。
「どうしてこんな時に…」萌香が疲れた表情で呟く。
「でも、こうして隠れるしかない。」いさなが前を向き、決意を新たにした。
「そして、今度はもっと強力な拠点を作らないと。」みりんが冷静に言うと、いさなも頷いた。
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