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新たな拠点を作るため、一行は一時的に洞窟内で身を潜めていた。トラの脅威は一旦去ったものの、再び出現する可能性があったため、準備を怠ることはできなかった。
いさなは周囲を見渡しながら、頭の中で作戦を練っている。その思考は驚くほど冷静で、効率的だ。
「ランチェスターの法則…か。」いさなが呟いた。
「え?」萌香が首をかしげる。「それ、何?」
いさなはしばらく黙っていたが、口を開いた。
「ランチェスターの法則は、数の力で劣るときにどう戦うかの理論だ。数の少ない側がどんな戦略を取るべきか、って話だ。」
「でも、うちには数が足りないし、どうやって戦うの?」ゆうなが不安そうに問いかける。
いさなは自信満々に微笑んだ。「だから、補完するために『小型肉食獣』をテイムするんだよ。」
それから数日間、一行は周辺のジャングルを探索し、小型肉食獣を捕まえる準備を進めた。これらの肉食獣は、トラほど大きくはないが、鋭い爪と素早い動きで非常に危険だ。
「いさな、これを使うといいよ。」みりんが、手作りの罠をいさなに渡した。
「ありがとう。」いさなはその罠を受け取り、慎重に設置していく。罠の周囲には草や木の枝を使って隠し、動物の目を欺こうとしていた。
数時間後、罠に小型肉食獣がかかる。5匹の獣が、罠に引っかかっておとなしくなっていた。
「成功だ。」いさなが満足そうに頷く。「これで、数の力を補える。」
獣たちはまだ慣れていないが、いさなは手早く縄を使い、それぞれの肉食獣を確実に固定した。その後、慎重に目を見つめながら、テイムを始める。
「大丈夫だ、怖くない。」いさなの声は静かだが、威圧感を持っていた。
テイムの過程は難しく、何度も獣たちは暴れたが、いさなは冷静に対応し続けた。最初は反抗的だった獣たちも、次第に彼の言葉を理解し、少しずつ落ち着いていった。
「これでいける。」いさなが最後の獣に手を触れた瞬間、獣はやっとその目を和らげ、首を下げた。
「うまくいったね。」ゆうなが驚きの声をあげる。「これで、僕たちの戦力が増えた。」
「さあ、次はどうする?」みりんが聞いた。
いさなは獣たちを訓練しながら、少し考えた。「数の力を使って、周囲を守るのが最も重要だ。今後、私たちが戦わなければならない相手は、数が多くても、適切な戦術を使えば勝機がある。」
「それで?」萌香が興味津々に聞く。
「例えば、私たちの小型肉食獣を使って、敵の進行を食い止める。少人数でも、相手の進行を遅らせ、時間を稼げる。『攻撃』ではなく、『防御』を重視するんだ。」いさなが説明する。
「なるほど…少数で戦うってことか。」ゆうなが納得する。
「正確に言えば、戦力の差を補うためには『戦術』が必要なんだよ。」いさなは少し誇らしげに言った。