叶が14歳になった
といっても今までと特に変わったところはないけど
強いていうなら少し背が伸びたような気がする…
『 ね〜葛葉〜』
[んー?なんだー?]
『 葛葉って恋人とか…いないの?』
[なんだよ、急に]
恋人か…遠い昔にいたような、いなかったような
そのくらい朧げな記憶だ
それにいまはこの館にいないとならないし
だから他の吸血鬼とは会えていないし、
会う人間もこいつくらいだし…
まぁいるわけがない
[いねぇよ、そんなの]
『 !へぇー!ふーん!そうなんだ!』
あからさまに声色変えやがって、
なんか腹立つ
叶は嬉しそうに、噛み締めるようにガッツポーズをしていた。
…俺はその行動の意味が、なんとなく分かってしまう
分かってしまうから、無視をした
『 はい、これ葛葉』
[今度はまたなんだよ、なんかの記念日か?]
叶は俺に赤い薔薇を渡してきた
赤い薔薇…流石の俺でもわかる
この花にどんな意味があるのか
なぜ叶がこれを渡してきたのか
『 葛葉!…その、あの!』
あぁこれ以上は聞きたくない
[あーそういえばなんか用があったような気がするわ!]
この場から早くさらなければ
『 まっ、』
『 好きだ』
あぁ、ほら
『 君が好きだよ、葛葉』
だと思った
分かっていた
いつからか叶が俺の言葉に赤面し
一喜一憂するようになってから
そんな気はしてた
こいつは俺に好意がある
友情ではなく、愛情として
でも、俺は
俺は、
人間と深く関わる気はない
それに、気持ちには応えられない
だってあまりにも人種が違うだろ
暮らしが違う、考え方が違う、寿命が違う、見た目が違う、価値観が違う
何もかも異なってるんだ
同じ人種同士、言葉がわかる同士ですら
分かり合えず衝突しているのに
異なっている2人が寄り添うなんて
そんなのは不可能なんだ
[俺は、好きじゃない。]
なぜだか叶の方を見ることができず、
斜め下を向きながらそう返事をする
『 …』
返事がない?
不思議に思い俺は顔を上げた
…
あぁ、ほら
叶。
そんな傷ついた顔…するなよ
お前の傷ついた顔には弱いんだ
『 そっ、か』
叶は顔を伏せて小走りに出ていった
はぁーこれで終わりかー
80年一緒にいるとかほざいてたけど
結局たかが10年程度だったじゃないか
きっともう叶はここには来ない
俺に会いに来ない
[ほんと清々するわぁー]
重荷が取れたはずなのに
なぜだか心が痛い
なんでなんだろうな
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