叶side
“無邪気”
幼い頃
なぜだったかはわからない
ただなぜだか丘の上の館が気になって
どんな人が住んでいるんだろう
どうしたら会えるのだろうと
ずっと憧れていた
そしてある日
館に実際に行ってみた
町の人たちはみんな近付くなっていっていたけど
それでも入ってみたかった
[おい、ガキなんだぁ?迷子か?]
いきなり声をかけられた
振り向くとそこには銀色のキラキラとした髪に真っ赤な瞳をもつ
美しい人が立っていた
迷子か?どうした?と聞かれても
幼い自分はうまく応えられなくて
怖くなって泣きそうになって
そんな僕を美しい人は必死で慰めてくれた
美しい羽を見せて楽しませてくれた。
綺麗だった。
名前が…知りたくなった
[葛葉だよ]
『 くーは!』
これが僕と彼との出会いだった
僕が君にあげたお花、とっても綺麗だったでしょ
“初恋”
そこから僕は無断でこの館に通うようになった
葛葉に会いたくて
葛葉のことをもっと知ってみたくて
でも、町の人はそんな僕のことをよく思っていないらしく
僕が小学生の頃
中学生の団体に絡まれた
「吸血鬼の館に近づくなんて変なやつ!」
「お前も吸血鬼なんじゃないの?」
絡まれて早々幼稚な悪口をはかれる
僕はそんな悪口どうでも良かった
でも。
「てか吸血鬼もおかしいんじゃねぇの?」
「こいつが通ってるのに喰らわないなんて笑」
「まぬけ吸血鬼なんだな!!」
そんなことない。
葛葉は僕にずっと優しい
帰れっていつもいってくるけど
来るなって言われるけど
いつも僕の生活を心配して
僕が本当に嫌がることはしない
僕が落ち込んでいたら必死に慰めようとしてくれる
そんな優しい人の悪口は許せなかった
『 そんなことない』
「あ?」
『 撤回して、その言葉』
「なんだと?生意気に!!」
中学生はもう一度腕を大きく振り上げた
っ、また殴られる…!
…?
[やめろよ]
!
そう思った瞬間
気がつくと目の前には葛葉が立ってた
[ガキ相手に恥ずかしくねぇのかよ]
僕を助けてくれたんだ
[いくぞ]
手を引かれるまま館に戻って
優しく手当されて、
[なにがあったんだよ]
理由を聞かれた
言いたくなかった。葛葉が馬鹿にされたなんて
葛葉は優しいのに、かっこいいのに
おかしいわけないのに
溢れそうな涙を堪えていると葛葉が頭を撫でてくれた
そして一言
[頑張ったな]
と声をかけてくれた
その言葉を聞いた瞬間
どうしてだろう
いつもは感じない、心臓の鼓動の音が聞こえた
心の奥があったかい
葛葉がいつもよりも輝いて見える
目の前にいる人がたまらなく愛おしい
この日僕は葛葉に恋をした
白のツツジ渡す時ちょっときょどっちゃったな、
“告白”
僕の気持ちを自覚してから
遠回しに葛葉の恋愛観について探ってみたりした
恋人はいたのか、今現在いるのか
好きな人は?恋愛についてどう思ってる?
など、さぐっては見るもののどれも帰ってくる返事は適当で
それでも恋人がいないことがしれた時は
たまらなく嬉しかった
もしかしたら僕でも葛葉の隣に立つことができるのではないか
その資格があるのではないか
そう思ってしまったんだ
葛葉の対応から僕のことを少なくとも嫌っていないことはわかった
なら、だったら僕でも、隣に、
そんな淡い期待から赤い薔薇を持って館へと向かう
『 葛葉、はいこれ』
心臓がどくどくと脈打つ
手が震えてうまく渡せない
薔薇を渡された葛葉は
今日はなんかの記念日だったか?と
とぼけた様子で僕から離れようとする
『 葛葉』
いえ、いうんだ
『 好きだよ』
『 君が好きだよ、葛葉』
…
沈黙の時間が流れる
すると葛葉は困惑した様子で目を逸らしそのまま
覇気のない声で言葉を発した
[俺は、好きじゃない]
答えはNOだった
葛葉の隣に立つ資格がって
少しの期待に思い上がった結果がこれだった
あぁ、馬鹿だな僕。
こんな風になるって少し考えればわかったのに
『 そっか、』
その場にいることがままならなくなり
走って町へと戻る
去り際にみた葛葉は
悲しそうな顔をしていた
そんな顔しないでよ
そんな顔して欲しかったわけじゃないよ
そのまま数日間館には行けなかった
なんだか気まずくて、行ってはいけない気がして
でも、やっぱり会いたくて
会いたくて、会いたくて
お話ししたい、いつもみたいな軽口を叩いて
笑い合って、それで…
大好きな葛葉の笑顔がみたい
その瞬間僕の中の何かが動いた
一回の拒否ではうごうごしてられない
それに葛葉を最後、あんな顔させたまま
お別れなんてできない。
僕は諦めない、振り向いてもらえるまで
“私に振り向いてください”
その決意を胸に僕は館へと走った
バンッ
そして館の扉を思い切り開けた
[うぉ、]
そこには驚いた様子の葛葉がおり、
僕をみた瞬間少し気まずそうに視線をそらした
そんな様子の葛葉に僕は思い切り
ソリダスターを投げつける
[うお!?なんだよこれ]
黄色い花びらがまう
そして困惑の中にいる葛葉に近づいて
キスをした
[!?]
葛葉は顔が赤くなる
[な、ばっ、ばか!お、おま!]
『 葛葉。僕葛葉のこと大好き』
『 葛葉が振り向いてくれるまで絶対に諦めないから』
これが僕の決意だ。
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