用を済ませ教室に戻った私。席に座って趣味の読書をしようと思ったら友達の梨奈が話しかけてきた。
「ねえ、さやちゃん?さっきのやつ大丈夫だったの?」
「さっきのって?」
「ほら、田中先輩。話してたじゃん」
「ああ、そのこと。特に何もなかったよ」
「よかったぁ、もしさやちゃんが次のターゲットにされてたらって思うと気が気でなくてさー」
「私がターゲットだなんてまさか」
「いやいや、さやちゃん美人さんだしスタイルいいし、いつ狙われてもおかしくないよ」
「そうかな」
田中先輩は私の学年の間で「魅惑の悪魔」と呼ばれている。散々女を魅惑させておいていざその気にさせると体の関係だけ持ってそこで終わり。そんな理由からだ。
「ま、用心するに越したことはないよ。だっていつ出くわすか分からないんだから」
「んー、そうだね。気をつけとく」
次の日。
日直の仕事をするために朝早く学校に来た私。黒板を消したり教室の掃除をしていると廊下に人影が。ちらっと見てみるとそこにいたのは─
「お、やっぱり彩歌いた」
「なんで田中先輩が…?」
「来ちゃ悪かった?風の噂で彩歌が今日日直やるって聞いてさ」
「なんですか、それ」
「ちょっと話したかったんだよ、話すのもダメ?」
梨奈の言ってることが本当になってしまったんだろうか、私は田中先輩にターゲットにされてる?
「ごめんなさい、今から職員室行かなきゃで」
「掃除途中なんじゃねえの?」
「もう終わりましたから!」
そう言って私は走って逃げた。唖然とした顔で立ち尽くす田中先輩を置いて。
「えぇ、まじで?」
「うん…」
「さやちゃん、これは逃げて正解だった。田中先輩もすぐにほかの女見つけるでしょ」
「だよね、」
この時はまだあんな結末になるとは露知らずだった。
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