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眠狂四郎
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コメント
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読み終わったよ〜〜!!😭✨ めっちゃスカッとした!!慧太、団長を瞬殺とかマジでカッコよすぎる…「右投げ左打ち」に困惑するナルゾと、その後のスピード勝負の差よ…! そして後ろから殴りかかってきたナルゾを逆に地面に叩きつけるシーン、鳥肌立ったわ…「武器持ってなくてよかった」の余裕がエグい🔥 団名「ウェントゥス(風)」の意味を今さらユウラが聞いてくるのも、なんかほっこりしたし、慧太の世界観がしっかり滲んでて好きだな〜。 今回も最高でした、柊遊馬さん!!続きも楽しみにしてるよ〜!!🌸
三メートルほどの距離をとってにらみ合う、傭兵団団長がふたり。
慧太は、左手にダガーを逆手に持ち、ガントレットを装着した右手は何も持たなかった。対戦者であるナルゾは首を横に振った。
「貴様は左利きなのか」
「右投げ左打ち」
「?」
怪訝な顔をされた。当然だろう。この世界には野球はないだろうから。
団長同士の決闘。周囲はどのような戦いが展開されるか期待――している者はさほどいなかった。
「ウェントゥスの女たちは強かったけど、あの団長あんま強そうに見えない……」
「わからんぞ、戦ってみたら案外強いかも?」
「いやでも、ナルゾだぞ? 剣の腕前なら傭兵ギルドで五指に入る。相手が悪ぃよ」
「ゴールドランカーだもんな」
どうやら周囲の予想では、圧倒的にナルゾが優勢と見ているようだ。腐っても魔法剣持ちということだろう。
「ケイタさーん! 頑張ってください!」
キアハが声援を送ってくれる。慧太は片手を挙げて応える。サターナにしろ、ユウラにしろ、微塵も心配していない様子だ。……まあ、こんなところで負ける気はないが。
「最期に言い残すことはあるか、少年?」
「寝言は寝てからほざけ?」
「どこまでも口の減らない奴だ」
ナルゾは肩をすくめた。構え、とプロートルに言われているが、彼は身構えもしない。傭兵長はそれを咎めるように見たが、ナルゾは「始めてください」と促した。
プロートルは決闘者を交互に見た後、中央に視線を向けた。
「始め!」
その合図の刹那、慧太は踵を浮かせた軽い前傾から、風のような突進加速。
あっという間に距離は十数センチまで縮まる。……身体の作りが違うんだ。人間の加速とは桁が違うぞ!
驚愕しつつ、盾と剣を構えるナルゾ。わずかな間での反応は見事だが、遅い!
慧太はガントレット付きの右手を突進の勢いそのまま、ナルゾの胴――鎧に叩き込んだ。身体をくの字に曲げ、ナルゾの身体が飛んだ。そして彼が地面に叩きつけられた時になって、観客たちはすでに第一撃が放たれたことに気づき、口をあんぐりと開けた。
「がはっ!? ぐっ……!」
胴体への強烈な一撃に、ナルゾは咳き込む。鎧ごしとはいえ、肋骨をやったかもしれない。それが打撃によるダメージ。棍棒(メイス)やハンマーが、血が出ない攻撃だと言っても、人体内部でおぞましい被害を与えていることが多い。
「あんたの敗因は、己を過信するあまり、オレへの分析を怠ったことだ」
慧太は片膝ついて、ナルゾのすぐそばにつくと、左手のダガーの刃を彼の首もとに当てた。
「オレの身なりを見れば、スピード型だって見当くらいついただろう? ダガーしか持っていないオレがどんな手で来るか――あんたは予想すらしなかった。自分の剣と盾に絶対の自信があったんだろうな。見てからでも間に合うって」
慧太は、どうしようもない間抜けを見る目になった。
「油断しすぎ。オレがあんたの剣の技を見てやるほど、お人よしだと思ったか?」
プロートルさん――慧太は振り返った。
「オレの勝ちでいいですよね?」
「ああ、勝者、ハヅチ・ケイタ!」
おおっ、とギャラリーが唸る。一方、ナルゾは顔を強張らせ、盾で地面を叩いた。
「あんなの認められるか! あんな不意打ち――」
「あ? 『始め』の後で不意打ちもクソもあるかよ。戦場じゃ、待ったはねえんだよ」
慧太は悠然(ゆうぜん)とナルゾを見下(みおろ)した。
「油断したあんたが悪いだろうが。……これ以上、恥の上塗りはやめろ」
「ぐぅ……くそっ! くそぉ!」
人目も憚らず悔しがるナルゾ。貴族の三男殿は不甲斐なさで憤っているらしい。慧太はばつが悪くなって髪をかきながら、その場を離れる。
「許さない……こんな勝負ぅ……!」
バッとナルゾは立ち上がる。
「ナルゾ!」
プロートルが声を上げ、周囲からも「あっ!」と声があがった。
慧太の背後から殴りかかるナルゾ。手甲に守られた右拳が、慧太の後頭部に迫り――
逆に顔を掴まれた。驚くナルゾは次の瞬間、地面に叩きつけられていた。
「お前、いま武器持ってなくてよかったな。でなけりゃ殺していたぞ」
掴んでいた手を放し、慧太は今度こそナルゾから離れた。
プロートルは、しばし呆然とした顔だった。慧太は彼のもとに歩み寄ると頷いた。
「面倒をかけました。手続きと……あと銀竜退治の話でしたね。よければ今からでも」
「あ、ああ。こちらも君たちの力を実際に目に出来てよかった。……さあさ、皆、騒ぎは終わりだ、散れ散れ!」
傭兵長が手を叩きながら周囲に促せば、職員は本部建物に戻り、ギルドに用のあった者はその後に、野次馬たちは去っていった。
慧太たちはギルド建物へと向かう。プロートルに続くのだが、慧太の隣でユウラは言った。
「これで、目論見どおり、『ウェントゥス』の名は傭兵の中でしばらく話題になるでしょう」
銀竜殺しに、ライガネン傭兵ギルドの上位ゴールドランカーを瞬殺。前者については銀竜の首という証拠、後者は、多くの傭兵がそれを見届けたのだ。
「これで以後、他の傭兵と絡むようなことになった場合、新人だからと無視されたり雑用を押し付けられないで済む」
「竜退治するツワモノ集団を、使い捨てにはしないだろうしな」
もしするようなら、そいつはモノの価値のわからない愚か者だろう。そんな奴にはこちらからお断りである。
「セラがアルゲナム奪回に動いた時――」
「他の傭兵団がその遠征に加わったとしても」
ユウラが後を引き継いだ。
「僕らがセラさんの近衛的配置についても、他から難癖をつけられ難くなるでしょう」
「セラに余計な気苦労をかけさせないで済む」
慧太は頷いた。
わざわざ、ライガネンの傭兵ギルドに乗り込んで、傭兵団を新設して、さらにランク上げにこだわったのもそのためだ。……もちろん、ランクが上がれば割りのいい仕事を受けやすいというメリットがあるが、同時に余計な面倒事も増える可能性があった。名を上げるというのはいいことばかりではないのだ。
「ところで慧太くん――」
ユウラが今思い出したとばかりに言った。
「団新設の際、あなたは『ウェントゥス』という名前を登録しましたが、あれどういう意味なんですか?」
「いまそれを聞くか?」
慧太が皮肉っぽく口もとを緩ませれば、ユウラは至極真面目ぶる。
「他の誰かが聞くと思ったのですが、誰も聞いてくれなかったので」
「……オレの世界の言葉だ。ラテン語だったかな」
『風』って意味さ――慧太が言えば、ユウラは、それを口の中で繰り返した。
「風、ですか。……悪くないですね」
「ありがとう」
慧太は頷いた。