リメイクです!
第1話
春の風が、校舎の窓をかすめていく。
新学期のざわめきの中、まだどこか制服の着こなしにも慣れていない新入生たちの姿がちらほらと見える。
「ねぇ、ないくん。こっちの校舎、去年工事してたとこだよね?」
赤髪の少年――りうらが、晴れた空を見上げながら話しかける。
「んー、知らん。俺、そっち側通らんし」
ぶっきらぼうに返すのはピンク髪の少年、ないこ。口調は冷たくも聞こえるが、その言葉の端々には少しだけ照れが滲んでいた。
りうらとないこは、小学校からの付き合い。ずっと同じクラスになるわけでもないが、なぜか春になると再会する――そんな奇妙な縁で結ばれていた。
「ほら、今年も同じクラスだし。俺たちって、そういう運命なんじゃない?」
「アホ言うな。偶然だよ」
口ではそう言いながらも、ないこはその言葉を少しだけ嬉しそうに呟いた。
──
そんなふたりが教室に入ると、すでに何人かの生徒が席に座っていた。
窓際の席では、白髪の男子生徒が静かに文庫本を読んでいた。
隣の席では、黒髪の生徒がイヤホンを片耳につけて、ぼんやりと窓の外を見ている。
「初兎、また読書か?」
りうらが声をかけると、白髪の少年――初兎は顔を上げた。
「あ、りうちゃん。うん、ちょっと気になってたミステリーがあってな」
「しょう、本当に本好きだね。あにき、また無口モード?」
りうらが軽口を叩くと、黒髪の少年――悠佑は、少しだけ口角を上げて「まぁな」とだけ返す。
初兎と悠佑も、中学の時からの知り合いだと聞いている。どうやら、まだお互いに踏み込めていないような、そんな距離感があった。
──
そのとき、教室のドアが元気よく開いた。
「おはよーっ!!」
明るい声と共に、水色の髪が揺れる。
少年の名前は、ほとけ。どこからか駆け込んできたようで、ネクタイはゆるゆる、カバンは片方だけ肩から外れていた。
「うわっ、まだ誰も来てないかと思ったけど、結構いるじゃん! おー、りうちゃん! 元気してたー?」
「ほとけっち……相変わらず元気だなぁ……」
りうらが苦笑すると、ほとけはひょいと机に乗りかけそうな勢いで手を振る。
「今年も同じクラスって、ほんと運命感じる〜!ね、いふくんもそう思わない?」
後ろから歩いてきたのは、青髪の少年――いふ。ほとけとは対照的に、落ち着いた様子で教室を見渡す。
「そない言われても……まだ担任の発表も終わってへんし、そないはしゃがんでもええんちゃうか」
いふの声は低く、優しげだった。春の光のように穏やかで、聞いていると心がなごむ。
「まーた真面目なこと言って~。いふくんってば、そういうとこが可愛いんだって!」
「は……? 誰がや……」
いふは頬をかすかに赤らめながら、ほとけの軽口をやんわりといなす。そんなふたりの様子を、初兎が微笑ましそうに見ていた。
──
その後、担任教師が現れ、新学期最初のホームルームが始まる。
クラス替えの発表はなく、りうらたちは全員同じクラスだった。
「……なんか、不思議だなぁ」
悠佑がぽつりと呟いた。
「こうして、みんな揃ったの。偶然にしては、ちょっとできすぎてる」
「うん……でも、悪くない偶然、やと思うよ」
初兎が静かに答える。
春の光が、窓から差し込んだ。
始まったばかりの新学期。これから彼らにどんな日々が待っているのかは、まだ誰も知らない。
ただ一つ――この教室には、確かに“何か”が始まりそうな空気があった。
そして、それはやがて、恋という名の物語へとつながっていく――。
コメント
4件
教科書に載ってても違和感ないわ、、、w