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注意
オメガバース
モブさんと玲王が結婚+番契約します。
ガバガバ設定、間違っている点ありましたらごめんなさい。
凪ベータ、玲王オメガ
時代背景?は大正時代くらいです
ーーーーーー
俺は今日、結婚する。
好きな人を、唯一無二の宝物捨てて。
「はい、出来ましたよ。玲王様」
使用人の声で閉じていた目をゆっくりと開ける。鏡に映る自分は真っ白な白無垢を着て、結婚相手の好きそうな薄めの化粧が施されている。
この己の姿を見ると、結婚という事実が逃れることの出来ない現実だと嫌でも突きつけられて、胸が鋭利な刃物で刺され続けられているかのような苦しさに襲われる。
その現実を分かって尚どうにも出来ない自分自身の情けなさで2ヒットだな、オーバーキルにしてもやり過ぎだ。心の中でそんなことを考えては乾ききった笑いを出す。
そろそろ相手と面会する時間だ、そう思うと一気に気が沈む。無理やり気合いを入れようと頬をピシッと叩く。
オメガバース。
それは男女二つの性別の他に高い能力を持つアルファとなんの特徴も持たないベータ、ヒートという症状を定期的に起こすがアルファとの子を男女関係無く孕むことの出来るオメガの三種に分かれる性別の事だ。
明治時代中期からその存在が知られ、現在に至るまで研究が進められているそんな第二の性別だが、バースの性質上オメガとアルファは少なくその中でもヒートを持つオメガへの偏見は絶えない。
それ故一般家庭の子ならば神への生贄と称し殺され、上流階級ではヒートを抑制する薬を飲ませるが、現代の科学技術では中途半端な薬しかない。
そこでもう一つの選択肢としてあるのがアルファとの結婚だ。アルファとオメガは、アルファがオメガの首を噛むことにより番を結ぶことが出来る。それによりオメガはヒートを抑制出来るのだ。
上流階級は基本この性質を利用して、オメガと判断された子を世間に知られずにひっそりとアルファと結婚させ番契約を結ばせる。
こうしてオメガの俺は結婚となったのだ。
当然結婚は極秘とされるためベータ同士の結婚に用いられる神前結婚ではなく、家で結婚式をあげるし、婚約指輪を付けることも無く神棚にしまわれる。
オメガ側に拒否権は無い…こんなの人としての権利を踏み潰されているに過ぎない。
目の前に居る婚約者に仮初の愛情を込めた笑顔を向けることもオメガとなれば拒否権は存在しない。
相手からの全身を品定めされるように舐めまわしている気色の悪い視線が突き刺さる。
何とか式も無事に終わり今日の疲れを癒すためいつもより早めに寝床に着く。
式が進む事に自分が穢れていってるようでなんとも虚しかった。それに連れて俺の宝物を裏切ったことも覆せなくなる。
大切な大切な元宝物、凪。
あいつとの出会いは偶然の連続だった。家族と喧嘩した時、家出の真似事のようなつもりで近くの商店街に行った。
そこでガラの悪い俺と同年代かと思う子供に絡まれて、そこで彼奴に助けられたのが出会い。
礼のついでにどうして助けたか聞けば
「分からない、なんか気づいた時には声掛けてた。」
なんてこちらが呆けてしまうようなこと言うから、その時から俺は凪に夢中になって定期的に家から抜け出せば凪に会いに行った。
今思えば昔から俺に使えてくれてるばぁやにはバレてたんだと思うけど、まぁ黙ってくれてたんだな。感謝しねぇとな
それはさておき、最初は警戒していた凪も俺がしつこく話しかけたことによってだんだん距離が縮まっていった。
プロポーズに似たことも子供ながらにしてみたり、だが凪はベータで、決して俺とは番にはなれなかった。
「もっとあいつと居たかったなぁ…」
その呟きは虚しいことに真っ暗な夜空に溶けた。涙も流れていたが、それも無視して枕に押し付けて何も視界に入れないようにしたらいつの間にか寝てしまった。
タッタッタッと規則的な音と稀にギィと古くなった木材が軋む音がする。それらの音で目が覚める。
目線の先には
凪の眠たげで相変わらず何を考える分からない無表情な顔があった。
思わず声を出してしまいそうになると、凪の腕が声を放つのが阻止して凪から外に出るまで待っててとか小声で制止の声が掛かる。
音を立ててしまって居るので後ろからこちらを追う使用人だろうか、それらの足音と指示が聞こえる。だが流石凪、ベータとは思えない程の才能を持つ凪は、相手からどんどん距離を取りあっという間に使用人を撒いた。
「…もう追って来ないかな、ごめん玲王急にこんなことして。」
ゆっくりと俺を下ろす凪は流石に疲れたのか額に汗が一つ垂れていた。
いいんだ凪、お前が謝らなくてむしろ嬉しい。だがそれを伝える前に言うべきことがある。
「俺こそ…ごめん、お前を裏切るようなことして…」
「それって結婚の事?しょうがないことじゃん、玲王は悪くないよ。それに俺は、玲王が何をしようが味方って決めてるし」
初めて自分を肯定されたようでまた涙が出てしまう、今度は嬉し涙だ。
その俺を見て凪は見るからにあたふたしてしまい、そっと俺を抱きしめた。
「…玲王、泣かないで。…あそうだ、これ言いたかったんだけど。
玲王、俺と駆け落ちしませんか?」
駆け落ちの事は連れ去られた時点でそんなこと薄々気付いてた。勿論答えはイエスしかない、だが俺は他の人と番だしヒートだってある。凪に迷惑かけまいと思考していた隙に凪が話を続ける。
「駆け落ちすることは玲王に色々迷惑掛けちゃうかもしれないけどさ、でも俺頑張るよ。玲王も俺に迷惑掛けるとか思ってるかもしれないけどそんなことないよ、だからさ」
「もう一度、俺と駆け落ちしませんか?」
凪なりに言葉を尽くしてくれているのだろう。抱きしめられているから顔が分からないが視線を横に動かすことで見える首筋がほんのり桃色に染まっている。
いつの間にか涙は引っ込んでいて、自分の頬が熱くなっていることから俺も凪と同じように、いやそれ以上に真っ赤になっているのかもしれない。
そんな状態でもこれだけは言える、たとえどんな状況になろうともこれだけは死んでも言えるだろう。なぜなら俺は凪を
「愛してる、凪。勿論喜んで。俺と駆け落ちしよう」
その言葉を放った途端、凪の俺を抱きしめる力が少し強くなった気がした。
この先何があろうとも俺たちならば生きていける。そう思った。
終わり