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青い人だぜ★
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#bl注意
ゆゆゆゆ
1,386
その日は珍しく静かな夜だった。
いつもみたいに騒いだり、対戦ゲームで僕がボコボコにされたりするわけでもなく。
僕とシクサーは高い塔の上に座って、夜景を眺めていた。
手にはブロキシコーラ。
足元には食べかけの塩味スナック。
平和だった。
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「なあ」
不意にシクサーが口を開く。
珍しく少し真面目な声だった。
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「ん?」
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「俺の名前」
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「シクサー?」
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「いや、Guest 666の方」
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僕は首を傾げた。
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「うん」
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シクサーは缶を弄びながら言う。
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「怖くないのか」
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風が吹く。
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遠くで誰かが花火エフェクトを使っていた。
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「みんな嫌がるだろ」
シクサーは笑った。
でも少しだけ寂しそうだった。
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「呪われてるとか」
「ハッカーだとか」
「近付くなとか」
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僕は黙って聞く。
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「お前だけだ」
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シクサーは空を見上げた。
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「普通に話しかけてきたの」
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少しの沈黙。
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それから僕は言った。
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「え?」
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「ん?」
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「怖い要素あった?」
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今度はシクサーが首を傾げる番だった。
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「いや、666だぞ?」
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「うん」
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「ゲスト666」
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「うん」
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「怖くねえの?」
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僕は少し考えた。
本当に少しだけ。
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そして素直に答えた。
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「6が3つも並んでてお得じゃん」
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沈黙。
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「……は?」
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「だって」
僕は指を折る。
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「6!」
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一本目。
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「6!」
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二本目。
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「6!」
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三本目。
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「合計18!」
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「いやだから何なんだよ」
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「いっぱいある!」
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「何が!?」
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「数字!」
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「当たり前だろ!!」
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僕は真面目だった。
本気だった。
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「ラッキーセブンみたいな感じかなって」
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「全然違うだろ」
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「でもなんか強そうじゃない?」
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「……」
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「僕好きだよ、その名前」
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シクサーが固まった。
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「かっこいいし」
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「……」
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「覚えやすいし」
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「……」
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「あとシクサーだし」
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「意味わかんねえ」
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そこで。
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突然。
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シクサーが吹き出した。
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「ぶっ……」
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肩が震える。
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「は?」
僕が目を丸くする。
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「ははっ……」
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笑ってる。
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「シクサー?」
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「はははははっ!!」
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次の瞬間。
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大爆笑だった。
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「お前っ……!」
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腹を抱えている。
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「ラッキーセブンって……!」
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「だって!」
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「そんな考え方する奴初めて見たわ!!」
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「ええ!?」
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「6が三つあるからお得ってなんだよ!!」
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「お得でしょ!」
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「意味分かんねえ!!」
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二人で笑う。
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しばらく。
本当にしばらく。
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シクサーは笑い続けていた。
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やがて笑いが落ち着く。
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「はぁ……」
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目元を拭いながら。
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「やべぇ」
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「そんな面白かった?」
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「面白い」
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シクサーは僕を見る。
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その目は少し優しかった。
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「お前ホント最高」
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「え?」
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「最高だわ」
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僕は照れくさくなって視線を逸らした。
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「大げさだなぁ」
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「大げさじゃねえ」
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ぽん。
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突然。
頭に手が乗った。
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「シクサー?」
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ぐしゃぐしゃと髪を撫でられる。
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「お前といると」
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シクサーは少し笑った。
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「変なこと考えなくて済む」
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その言葉の意味を、その頃の僕はまだ全部理解していなかった。
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ただ。
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彼が少し嬉しそうだったから。
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それだけで十分だった。
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「だから」
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シクサーが身を乗り出す。
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僕のおでこに、ちゅっと軽く触れるだけのキスを落とした。
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「!?」
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思考停止。
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完全停止。
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再起動不可。
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「し、し、し、シクサー!?」
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顔が一気に熱くなる。
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シクサーは逆にケロッとしていた。
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「ご褒美」
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「なんの!?」
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「面白かったから」
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「意味わかんない!!」
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僕が真っ赤になって抗議すると、
シクサーは楽しそうに笑った。
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「顔真っ赤」
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「シクサーのせいでしょ!!」
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「悪い悪い」
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全然悪いと思ってない顔だった。
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そしてその夜。
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僕はベッドの中で何度もおでこを触りながら、
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「ご褒美って何……」
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と一人で悶絶することになる。
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一方その頃。
シクサーは友達リストを眺めながら、
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「離せるわけねえだろ」
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と小さく呟いていた。
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もちろん。
その言葉を聞いた者は誰もいなかった。