テラーノベル
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「来たようね。永島啓次郎」
まぶしい光を周囲にまといながらこちらを向いている一人の女がいた。その女は神様のように神々しい。白い布地のドレスのようなものを着用し、右手には金色の長い錫杖のような長い杖を持っていた。彼女の両脇には6歳ほどの男女の子供が立っていた。しかし、その子供の目は光っておらず、死んでいるようだった。そして表情もさほど変わらない。操り人形のように見える。煌々しい光を放つ女はこちらを向き、微笑んでいる。
「なぜ俺の名を知っている…?」
「私がゲームマスターだからよ」
意味のわからない言葉に啓次郎は困惑する。
「私がこの世界をつくった」
「は?」
その場で呆然とする啓次郎にさらに混乱を招くかのようにコスモが懐から飛び出し、話す。
「レイカサマノマエデコ゚ブレイヲ!」
「は?レイカ?」
更に混乱を招き、啓次郎は頭が真っ白になる。
「私は久堂玲華(くどうれいか)今はあなたの妻ね。地球では」
「そんなわけないだろ?俺の嫁は結里だ」
「私は平安から生きる者。生まれ変わるたび、名を改め、人柄、性別すらも変える」
「でも俺の嫁ではない!そんな人見たことない!」
「ひどいわね。啓次郎」
―意味がわからない。一体なんのことやら。
「私はこの世界を変えるため、女王の位についた。どう?この世界でも私のお嫁さんにならない?」
「はあ?何を言ってる!」
「太陽と明日香は私達の子。この世でも育てましょ?私と」
「そんな結里は知らない!いい加減にしてくれ!」
啓次郎は久堂に怒りをぶつける。すると途端に久堂の様子が変わる。
「私を愛さない?なら極刑」
「は!?」
久堂は錫杖を啓次郎に向ける。そして、呪文のようなものを唱えると突如、強風が現れる。その強風によって啓次郎は背後にあった転倒防止の柵に体をぶつける。
ゴン!
「グハッ…」
頭をぶつけ、意識が朦朧(もうろう)とする。啓次郎の目の前に眩しい光が近づいてくる。ぼやけて見えるその目で少しでも情報を得ようとする。だが体力には抗えない。啓次郎のまぶは徐々に閉じていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
周りは真っ暗。
―一体どこへ…?
啓次郎の目の前に広がった景色は暗闇だった。周りは誰もいない。死んだのか?そう思うこともあるが違うと思いたい。自身の野望だ。啓次郎はその場で立ち上がり、前へ進む。「コツコツ」と足音を響かせるもその他の音は全くと言っていいほど聞こえない。
「お〜い!」
突然、どこからか声が聞こえる。若々しい、甲高い声だ。啓次郎はその正体を探るため歩き回る。一生歩いても景色が変わらない暗闇を。
ドシン!
前を見ていなかったせいか、啓次郎は自身の腰の高さほどのものとぶつかる。
「いてえ〜」
少し痛むもののその痛みはすぐ消えた。
「おにいさんだいじょぶ?」
「ああ平気平気!」
啓次郎は目線を下に移す。そこには太陽と似た男の子が啓次郎の目を見つめていた。
「太陽…?」
啓次郎の口からは思わずその言葉がこぼれ出した。
「そう!よくわかったね!ぼくのなまえは永島太陽!」
「ほんとか?」
「うん!」
啓次郎は嬉しさのあまり涙を流し、膝をつき太陽を抱きしめた。
「おにいさん?」
「ごめん…太陽…」
啓次郎は涙を拭いながらそう話す。
「俺、お前の父さんだよ。太陽」
「えっ!?パパ?」
「そっ。永島啓次郎」
「パパもこっちへ来たの?」
「ん?こっち?」
「うん。だってここはししゃのせかい。あのハッピーランドでしんだひとはここへくるんだ」
「はっ!?え!?」
先程まで流れていた涙はその途端ピタリと止まる。
「でもちきゅうのほうはしんでないから!」
「ああ…そうなんだ。でもどう帰ればいい?」
「それは…ママのはんだん…」
啓次郎はママのことをなんとなくわかっていた。きっとあの人だろうと。
「というかあいつは一体何者なんだ?」
「げーむますたーって言ってた。ぼくとおねえちゃんをあやつって」
「操る…?一体あいつはなにをしたいんだ…」
「ママはハッピーランドをアンハッピーランドにしようとしてる」
「アンハッピーランド…?」
「ママひとりでそのせかいをしはいしてじぶんのものにしようとしてる」
「は?結里が?んなこと…」
「あるよ。じっさいママはひどいことしてるもん」
「酷いこと?」
「うん。ひとのじんかくをこうかんする」
「…?」
「たとえばAさんのじんかくとBさんをこうかんするってかんじ。いっていじかんで。それでひとをかならずころす」
「最低だ……うっ…いてぇ…」
突然、啓次郎は頭痛に襲われた。
「パパ!パパ!」
頭を抱える啓次郎を心配そうに見つめる太陽。
「うっ…くっ…」
辺りもだんだんぼやけてきた。意識も薄れてゆく。
「パ……ダ………パ…」
なんといているのかわからない。そして啓次郎はその場で倒れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おい!目覚めたぞ!」
啓次郎が目を覚ますと目線の先は真っ白。左には頭が光っている太った男がいる。よく見てみると彼は白衣を着ている。医者かなにかなのだろうか。
「パパ!パパ!」
意識がはっきりしてきた。啓次郎は起き上がり声が聞こえた右を見る。そこには啓次郎の家族がいた。
「パパ〜!」
そういい啓次郎に抱きついてきたのは末っ子の太陽。
「こら!太陽。パパがもっと痛くなっちゃうよ」
そういう啓次郎の妻・結里。
「ごめんねパパ」
「いいよいいよ」
太陽の後ろで笑顔で見つめている明日香。啓次郎は声を掛ける。
「明日香!こっちこいって」
そういうと明日香は太陽と同じように抱きついた。
「ふふ」
〜〜〜〜〜30分後〜〜〜〜〜
家族が部屋を出て30分。啓次郎はふとっちょ医師から安静にしてろといわれここで横になっている。彼によると啓次郎はジェットコースターに乗っているとその道中に飛んでいたカラスと激突。意識を失い現在に至ったという。ではハッピーランドは夢だったのか…だが夢にしてははっきりと覚えている。侍と出会い、中央センターでユニフォームに着替えコスモスピーカーの誘いで銃を購入。その後、何人か倒し、忍者と出会い、女王と出会った。一体その世界は何なのか………。
コメント
4件
怖い・・・ていうかそりゃ混乱するわ