テラーノベル
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ミィは俺の返事を聞くことなく冷蔵庫の扉を開け、ブツブツと呟いている。
「卵……牛乳……バターはないけれど……。」
ミィはピンクのメッシュが入ったボサボサでボリューミーな黒髪を後ろにまとめ、ポニーテールにしながら俺の方を向いた。
「油はある?」
「オリーブオイルなら……。」
「OK。」
ミィは手慣れた手つきでボウルに卵を割っていく。卵はビタミンC以外の必須栄養素が取れ、たんぱく質も多いと聞いてから常にストックをしているのだが、家にストックしておいた6つの卵を全てボウルに入れて、菜箸で軽くかき混ぜた。その後、牛乳を計量カップで測り卵の入ったボウルに注ぐ。
黄色と白のマーブル色になったボウルの中に目分量で塩を加えてしっかりとかき混ぜ俺に渡した。
「空気を含ませながら、しっかりと混ぜて! こぼさないようにね!」
俺はミィに言われた通り菜箸を使い、なるべく泡が立つようにボウルの中身をかき混ぜる。その間にフライパンを取り出し、オリーブオイルを目分量で入れてからフライパンを火にかけ油を馴染ませる。しばらくするとフライパンから白い煙が出始めた。
「ボウルを貸して。」
ミィにボウルと菜箸を渡すと、ボウルの中身を半分だけフライパンに流し込む。そしてフライパンをゆすりつつ、今、流し込んだ牛乳入りの卵を菜箸でかき混ぜる。
フライパンの淵の卵が固まり始めたら菜箸で卵を返しつつ、フライパンの淵で成形をすると、プルプルと震えるほど半熟のオムレツが出来上がった。
あまりの手際の良さに関心をしてしまう。ミィが俺の家の冷蔵庫を開けてから、まだ10分も経っていない。
ミィはお皿に盛り付け、再びフライパンにオリーブオイルを引いて同様の方法でオムレツをもう一つ作りテーブルの上に置いた。そして、オムレツの上にケチャップで波線を描く。
「どうぞ。」
ミィは髪を解き、俺にスプーンを渡す。長くウェーブの掛かった髪が広がり、フローラルな香りが広がった。
見た目は良い……手際も良かった……しかし味は別だ……。そう思いながら手を合わせ、オムレツをスプーンで割り口へと運ぶ。口の中に入れた瞬間、半熟の卵がトロリと溶け出し卵と牛乳の甘味と塩の塩味――そしてケチャップの酸味がちょうど良く口の中に広がった――。簡単に言えばめちゃめちゃ美味い!
以前メルラブでミィは「メルラブは料理に力を入れている。」「キャストもみんな料理が出来る。」と言っていたが、メルラブのキャストはみんな、こんなに美味い料理を作ることが出来るのか!?
ミィは何かを言って欲しそうにこちらを見ている。
「メッチャ美味しい。ミィのおかげで最高の朝食になったよ。ありがとう。」
ミィは耳を真っ赤にして俺から目線を外した。
「こんなので良いのなら、明日も作って……///。」
「いや、それは結構だ。服が乾いたら帰れ。」
「もう! 本当に私を帰しちゃって良いの? こんなかわいい女の子が、こんなに美味しい料理も作ってくれたり、添い寝をしてくれることなんて、なかなか無いんだから!」
「それとこれとは話が違うの!」
ミィは頬を膨らませ、拗ねたようにオムレツを口に運んだ。
◆◆◆◆
ミィの作ったオムレツを平らげた後、身支度を終わらせてノートPCを開いた。今日こそは新作のプロットとキャラクターの原案を作成し、早めに編集者さんと会話をしたい。
「時間をかけても良いから、良い作品に仕上げましょう。」
と編集者さんからは言われているが、良いラブコメ作品なんて俺一人で作り上げられる自信がないため、早い段階から編集者さんの意見を聞きたい。それに……新作の発表は早いに越したことはないのだ。
メルラブで出会った人達との会話の内容をメモしたファイルと、アイさん、マイ、そしてミィのキャラクター性を抽出しながらヒロインの性格を考え書き出していく。しばらくパソコンと睨めっこをして試行錯誤を繰り返し、書いては消しながら少しずつヒロインやプロットを作り上げていった。
何時間か経った頃、俺の肩が重くなる。ミィが俺の肩に顎を乗せたのだ。ミィはつまらなそうな表情を浮かべながら、甘えるような声を上げる。
「ね~え~。休みの日も仕事をしているの?」
とらえ方によっては確かに俺の行っている事は仕事(労働)なのかもしれない。しかし小説を考えたり書いたりすることは楽しく、仕事という感じは一切しない。まあプロである以上、一定以上のクオリティの作品を世に出さなければならないというプレッシャーはあるが……。
上手い言い方はできないのだが何というか……。
「好きでやっている事だからな……。それに、休日にまとめて考えたり書き溜めた方が、効率が良いんだ。」
「でも、さっきから書いては消してを繰り返しているだけで全然進んでいないじゃん。」
ミィのやつ、いつから見ていたんだ……。あまり進んではいないため痛い所ではあるが、それでも昨日に比べれば少しは進展している。
「書いて消してを繰り返すことで、少しずつ良い作品になって行くんだよ。」
「ふ~ん。でも、完成まで時間がかかり過ぎたら旬を逃しちゃうんじゃない? もしかして、まだラブコメについて悩んでいるの?」
確かにミィの言う通りだ。正直焦りはある。前作が終了したタイミングから期間が開けば開くほど、世間は俺の事を忘れてしまうだろう……。
曲がりなりにも3年近く続巻が出続けていた。それに、WEB小説サイトでも、それなりに人気はあったため少しくらいはファンもいる……はずだ……。その俺のファン達が離れたら、また一から博打のような勝負をしなければならない……。
かといって、一度打ち切り同然の終わり方をした作家が、二度目に出した作品で大ゴケすれば、三度目のチャンスは貰えないだろう……。つまり、早く良い作品を生み出す必要があるのだ。
「……ミィちゃんの言う通りだよ。だから、良いラブコメ作品を生み出さないとダメなんだ。」
「じゃあさ、私とラブコメをしようよ。」
#ラブコメ
モノクロナツキ
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#AIイラスト
コメント
2件
みぅさん、コメントありがとうございます! >>ほっこり日常の中にちゃんとシリアスが混ざるバランスが好きです ラブコメって、ラブとコメとシリアスと……様々な要素をバランスよく混ぜるのが難しいんですよね~ 頭を悩ませているポイントなので、褒めて頂けて嬉しいです! これからもよろしくお願いいたしますね!
第14話、読み終えたよ〜🌙 ミィのオムレツ作りの手際、めっちゃ丁寧に描かれてて、普段ヤンデレっぽい子が無意識に優しいことしてるギャップにやられた…💘 あと「私とラブコメしようよ」って最後の一言、重すぎず軽すぎず、でもちゃんとミィの執着っぽさ滲んでて、続きが気になって仕方ない…! 主人公の焦りとかプレッシャーもリアルで、ほっこり日常の中にちゃんとシリアスが混ざるバランスが好きです🥀