蟻という小さな虫、昆虫が存在する。
彼等は本来ならば女王を頂点とした集団で活動する虫である。だが、私がここで仕留めた人間大の大きさを誇る蟻に近い姿をしたこの魔物は、魔力溜まりから生み出されるためか単独で生息、活動している。
世界のどこかには魔力溜まりから女王が生まれ、そのまま昆虫の蟻と同様に巣を作り集団を築き上げた者もいると言う。
ロプスフォルミガン、これらの魔物はそう呼ばれている。
彼等は食べた栄養素を糖分へと変換して腹部へ蓄積することが可能であり、その糖分を少しずつ摂取し続けることで他の生物よりも遥かに長時間の活動を可能としている。
腹部以外の部位はどの部位も”中級《インター》”の魔物としてはかなり頑丈で、実力が伴っていなければ”中級”相当の装備はおろか”上級《ベテラン》”相当の装備ですらまともに通用しない時すらある。
先程の冒険者達が苦戦していたのも頷ける。むしろ、あの装備でよく討伐できたと感心するぐらいだ。
腹部に溜まった体液は、人間達からはビートルシロップと呼ばれ、滅多に食べられない、というほどでは無いが珍味としてそれなり以上に有名だ。
味も先程私が食べた通り、独特の風味が気にならなければ美味と言える味だ。
ただこのビートルシロップ、ロプスフォルミガンが敵対者に対しても使用たりするのだ。
自ら腹部を割いて、敵対者にシロップを浴びせるのである。彼等の腹部はそのほとんどがこのシロップを溜め込むための器官である。
多少損傷したところで栄養素を取り込めば、”中級”の魔物としてはかなりの速度で再生するため攻撃する部位としては、あまり適切ではなかったりする。
実を言うとこのシロップ、魔力に反応して変質する性質を持つ。その多くは相手の動きを封じるために粘性を上げたり、硬化させたりもする。
それだけならばまだ良いのだが、力を付けた個体には毒性や溶解性を持たせたりもしてくるため、成長したロプスフォルミガンはそこそこ危険な魔物とされている。
脆い部分である腹部を使用される前に損壊させてしまえば顎による噛みつきぐらいしか攻撃手段を持たないため、それほど脅威では無いのだが、碌に遠距離攻撃手段を持たない場合、先程の冒険者達のようにビートルシロップを盛大に浴びる覚悟が必要になるだろう。。
もしもビートルシロップを手に入れたければ、ロプスフォルミガンに気取られる前に外骨格を破壊して討伐するしかない。
ビートルシロップを手に入れるかどうかで討伐難易度が大きく変わる魔物だ。
さて、このビートルシロップ、味は良いのだが、実を言うとそこまで人気があるわけでは無かったりする。好んで食するのは本当にこのシロップが好物な者か、あるいは美食家ぐらいなものでは無いだろうか。
それというのも、入手難易度が高いうえに見た目があまり良くないのだ。
このビートルシロップが明るく透明感のある色をしていた場合、非常に人気のある食材として美食家だけでなく貴族などからも調達依頼が頻繁に発注されていたかもしれない。
だが、実際の色は透明感などまるでなく、暗い緑色をしているのだ。しかも粘性も持っている。
おそらく、一見したただけではこの液体が食べられる物だとは、ましてや美味であるなどとは思いもしないだろう。
この人工採取場のように薄暗い場所でなら尚更だ。食べ物どころか毒物に見えてもおかしくはない。
しかも、個体によっては本当に毒性を持たせたりもできるのだ。余計に食べ物だとは思えなくなってしまうだろう。
もしかしたら、ロプスフォルミガン達はビートルシロップを毒物だと思い込ませることでビートルシロップ目当てに襲われないようにする、一種の防衛手段なのかもしれないな。
まぁ、既に私はビートルシロップが美味いものだと知っているので、仮に防衛手段だったとしても意味は無いのだが。見た目も気にならないので、存分にこのシロップの味を楽しめるというわけだ。
何なら水分を取り除いて精製し、一風変わった砂糖のようにしてみるのも良いかもしれない。
今のところ、ビートルシロップを固形化させた食料があるとは聞いたことが無い。気が向いたら試してみよう。
さて、シロップの調達も済み、本来の目的である鉱石の回収も済んだことだし、もうこの場所には用が無い。次の依頼を片付けに行くとしよう。
人工採取場を出た時には私が『清浄《ピュアリッシング》』を施した冒険者達は既にいなくなっていた。休憩を終えて王都へと帰還したのだろう。
道中、魔物が出ないとは限らない。無事に帰還して欲しいものだな。
「あっ、お帰りなさい。ひょっとして、もう終わっちゃったんですか?」
「銀鉱石はともかく、魔鉄鉱って相当硬い筈なんですが…まぁ、でも貴女ですもんねぇ…。簡単に採取できるのか」
「ああ、採取の方は何の問題も無く終わったよ。そのうえ3体だけとは言え、ロプスフォルミガンにも遭遇できたからね。あの子達の後でこれだけ遭遇できたのは、本当に運が良かった」
私が採取場に入ってからおおよそ30分ほどしか経っていない。
彼等も言っていたが、銀鉱石はともかく魔鉄鉱をこれだけの速さで入手できるとは思わなかったのだろう。
人工鉱床から鉱石を採取する場合、当然だが目的の鉱石を破壊できるだけの実力が必要になる。
銀鉱石の入手は”初級”の装備や一般的な鉄のツルハシでも容易に砕いて採取が出来るが、魔鉄鉱はそうはいかない。
魔鉄鉱とはその名の通り魔力をが浸透した鉄である。その為か鉄よりも遥かに頑丈で鉱石の入手が困難になる。勿論、加工難易度も相応に高い。
私は見たことが無いが、市販されている魔力を持った武器というのは大抵がこの魔鉄鉱から作られている物だ。
そして”上級”冒険者ならばぜひ装備しておきたいのが、この魔鉄鉱で制作された武器である。
勿論、武器だけでなく魔鉄鉱で制作された防具もちゃんと存在している。
しかし、ただの鉄の装備と比べて、魔鉄鉱製の装備は20倍以上の価格がある。その金額は”上級”冒険者であっても、なかなか手が出せるものでは無いだろう。
そんな魔鉄鉱までも容易に採取できたことに見張り達は最初は驚いていたのだが、私が『収納』を使っていたところや冒険者達に纏めて『清浄』を使用したところを見ていたので、ランク以上の実力の持ち主だということを思いだしたようだ。直ぐに納得した表情をしてくれた。
ただ、私がロプスフォルミガンと遭遇できたことを幸運だったという発言に対しては怪訝そうな顔をされてしまった。
ビートルシロップを狙っていたとは思われていないようだ。
「ええ…。何であんなベタベタする体液を飛ばしてくるようなのと遭遇できたのが嬉しいんですか…?」
「アレって場合によっては装備が溶けたりするから、あの中では一番遭遇したく無い魔物なんですが…。現に先程帰って行った子達もアレにやられて辟易としていたみたいですし…」
「あー、やっぱり見た目が良くないから、ビートルシロップってあんまり人気が無いのかな?味見してみたけど、かなり美味かったよ?」
うん、彼等もロプスフォルミガンの厄介さはちゃんと理解しているようだ。そしてあの冒険者達がああまで汚れていた理由もロプスファオルミガンが原因である事もしっかりと見抜いていた。
だが、私がビートルシロップを手に入れたことやその味の感想を伝えたら、怪訝そうな表情は一変して驚愕に目を見開いた。
「あ、アレを採取できたんですかっ!?しかも食べてみたって!?」
「1つ丸々手に入ればそれだけで金貨一枚になる、あのビートルシロップを手に入れちゃったんですか!?」
「うん、手に入れちゃったよ。とても珍しい物らしいからね。小さじ一杯分だが、貴方達も食べてみる?なに、元々1つは自分用に回収したし、1つだけでも大量にあるんだ。遠慮はいらないよ?」
おっと?これ1つで金貨1枚もしたのか。そう言えば図鑑にはどれほどの価値かまでは記載されていなかったな。
これだけ大量にあるからな。小さじ一杯分ぐらいなら渡しても問題無いだろうと思い、見張り達に提案してみたのだが、かなり期待に満ちた目をしているな。
なんだ、ちゃんと人気があるじゃないか。これなら、一つはブライアンの所に卸しても喜んでもらえそうだな。そうだ、帰ったらマーサにも差し入れしよう。見た目に少々難があるため、喜んでくれるかどうかは分からないが…。
「い、良いんですかっ!?」
「まさに役得!ここに配属されて良かったぁ~!」
「それじゃあ、小さじ一杯分。どうぞ。ああ、その小さじも良ければもらってくれて構わないよ。私ならいくらでも用意できるからね」
そう言って、ビートルシロップをたっぷりと絡めた小さじを2人の見張りに提供すると、2人は嬉々として小さじを受け取り、何の躊躇いもなくシロップを口に入れてしまった。
彼等には見た目の忌避感は無いようだ。その甘さに顔を綻ばせてしっかりと味を堪能している。
「あ゛~、あっまい…。疲れが取れるぅ~!たぁまんないなぁー!」
「見張りの仕事って、門番と同じく立ちっぱなしだから、長時間経っていると意外と体力使うんですよねぇ~。あ゛ぁ~、強烈な甘味が体にしみるぅ~!」
「喜んでもらえたようでなによりだよ。それじゃあ、私は次の依頼を片付けに行くから、仕事、頑張って」
「「どうもありがとうございました~!」」
彼等もそれなりに消耗していたようだ。疲れた体に甘い物は体に良く染み渡ったようだ。
生物は体力を消耗すると糖分を欲するようにできているからな。見た目が気にならないのなら、ビートルシロップは優れた糖分補給食材だろう。
さて、次の依頼を片付けるために、私は現在とある村の近くにある密林に足を運んできている。場所は先程の人工採取場から更に五キロほど離れた場所だ。
何処を見ても木々の感覚が2メートル程度しかなく、その密集具合は”楽園”を彷彿とさせる。まだ2週間も経っていないと言うのに、懐かしさを感じてしまうな。
この密林には複数種類の魔物が生息しているのだが、私が受けた討伐依頼の対象が二種族ともこの密林に生息しているのだ。
魔物はどちらも2足歩行型、血頭小鬼《ブラッディゴブリン》と森猪鬼《フォレストオーク》の2種族だ。
この密林の近くにある村の人々は、この密林で狩りを行い食料を調達しているのだが、ここ最近は狩りに出た者達が頻繁に負傷して帰ってきたり、中には帰ってこなくなってしまった者もいると言う。
怪我をしながらも村に帰ってきた者達の証言によって、今回の討伐対象である魔物が原因である事が判明したのだ。
血頭小鬼、見た目は殆ど”初級《ルーキー》”が討伐しているような小鬼《ゴブリン》と変わらないのだが、所有する魔力量や密度は雲泥の差だ。そのうえ身体能力が高いだけでなく、しっかりとした装備も身に着けている。
小鬼と同じく背丈は人間の子供、矮人《ペティーム》と同等の体格ではある。
しかし、非常に機敏でいながらこの辺りの樹木ならば握り潰せるだけの握力を持っている。つまり、膂力も相当なものなのだ。
質の悪いことに、基本的に小鬼と同様に集団で活動するだけでなく罠まで使用して来るのだ。”初級”はおろか、”中級”ですらまず戦いにならない。
“上級”冒険者でさえも、魔鉄鉱製の装備を揃えていないならば慎重に戦った方が良いと言われているぐらいだ。危険度は実のところ”上級”の中でもかなり高い。
これと言った弱点は無いので、正攻法による戦いが求められる。血頭小鬼を余裕を持って討伐できるかどうかが、”上級”と”|星付き《スター》”の境とまで言われているのだ。
森猪鬼、ぶっちゃけた話、森に生息する猪鬼《オーク》なのだが、食料が豊富なためか一般的な猪鬼よりも一回り大きく、毛並みも深く、皮も厚く、そして筋肉量も多い。
知能はそれほど高くなく、装備も動物からはいだ皮をそのまま身に着けているだけであったり、使用する武器も木の幹をそのままへし折った物を纏めて、棍棒として使用している程度だ。
だが、それは素手でこの辺りの動物の皮をはぎ取り、樹木をへし折れるという事でもある。人間から見れば、それだけでも十分脅威と言わざるを得ない。
幸い魔力量や密度は一般的なそれとそう変わりは無いのだが、通常の猪鬼よりも一回りは上回る体躯から繰り出される一撃は非常に強力だ。防御に特化した”中級”冒険者ですら一撃で帰らぬ人となってしまう。”上級”冒険者であっても、真正面からの力比べは愚の骨頂だろう。真正面から戦えるのは”星付き”以降からだ。
ただ、血頭小鬼と違い明確な弱点がある。
森猪鬼は2足歩行であるがゆえに2本の足でその超重量を支えている。多少の足の負傷で行動が大幅に制限されてしまうのだ。
しかも体重を支える両足に多大な負荷がかかってしまっているため、他の部位と比べて破壊が容易なのだ。
“上級”冒険者が森猪鬼と戦う場合、まず最初にかく乱してからの脚部への集中攻撃で動きを封じることがセオリーとなっている。
動き自体は血頭小鬼と違い鈍いため、攪乱は容易だ。戦い方さえ覚えれば比較的容易に討伐は可能である。
この森猪鬼を安定して討伐できることで、ようやく”上級”冒険者としていっぱしになったと認められるとまで言われている。
今回の依頼では、どうやらこの二種族がそれぞれ集落を築き上げてしまい、数が増えすぎてしまったため密林に入った村人が頻繁に襲われる事になったようだ。
どちらの種族も雑食性だ。帰ってこなかった村人は魔物達の食料となってしまったと考えるべきだな。
目標討伐数は指定されていない。というか、集落の壊滅である。先程近くの村で確認した。
森の生態系を破壊してしまわないかという懸念があったのだが、どうも全ての血頭小鬼や森猪鬼が集落で生活しているわけでは無いようだ。
そのうえ、数が減ったとしても時間がたてば魔力だまりから再び新たに誕生してくるため、遠慮なく討伐して欲しいと頼まれた。
依頼人である村長は目尻に涙を溜めて悔しそうに懇願していた。おそらくは息子を亡くしたのだろう。同じように家族を亡くした村人達も当然いる筈だ。
人間達を贔屓する形になってしまうが、今の私は人間として活動をして、人間の依頼を受けている立場だ。彼等の願いに応えるのに躊躇いは無い。
集落を築き上げた二種族には気の毒だが、滅ぼさせてもらう。
村人達が密林で魔物の被害に遭ってからというもの、村人達は密林に立ち入り禁止となっている。
それ故に案内人などもいない。集落の場所は口頭で確認したので、それを頼りにに種族の集落を探すことにした。
正直なところ、案内人がいない方が私にとっては有り難い。
仮に魔物の集団に周囲を囲まれたとしても案内人を守り通す自信はあるが、堅苦しいのである。
人がいなければ何の制限も無く行動できるからな。『広域探知《ウィディアサーチェクション》』を使用して集落を探索すれば、すぐに確認が取れた。折角だから、久しぶりに角を出しておこう。
これで服も背中が開いている物を着ていたのなら翼も外に出していたのだが、折角親しくなった者が選んでくれた服だからな。翼を出して破いてしまうのは気が引けてしまう。
だが、角だけでも体から出すと言うのはなかなか開放感があると言うものだ。
久しぶりの感覚に気分が高揚してくる。念のため『無臭』、『無音』の意思を込めた魔力を体に纏わせてから移動を開始しよう。
まずは血頭小鬼の集落から片付けることにした。集落には100体以上の血頭小鬼が生息している。集落の中央には、人間の者と思われる骨がぞんざいに集められていた。おそく血頭小鬼の食料となってしまった村人達の物だろう。
集落からはまだ500メートル以上離れてはいるが、もうここからでも行動を開始してしまっても問題は無いだろう。
『成形《モーディング》』によって成形された刃を尻尾カバーから発生させた後に軽く駆け出して集落の中心に向かって突っ込んでいく。
集落の中央に到着してからは、その場で尻尾を伸ばしながら高速で回転を行い、尻尾を振り回してまとめて魔物の体を両断していった。
振り回された尻尾に、血頭小鬼の住宅も当然巻き込まれる訳だが、尻尾が住宅に触れた途端、砕けて吹き飛んでしまっている。そのうえ、高速で回転しているためか、私を中心として伸ばした尻尾の長さを半径とした竜巻が発生している。
私の尻尾を最大まで伸ばしても集落の端までは尻尾は届かないので、尻尾が届かない先は『成形』による魔力刃を伸して距離を補うことにした。
まぁ、ここまでしなくとも発生した竜巻によって集落は見るも無残な状態になってしまったのだが。
ほどなくして、集落の壊滅が完了した。周囲は竜巻と魔力刃の影響によって生物が住める状態ではなくなっている。
流石にこのままにしておくのは忍びないので、『|我地也《ガジヤ》』によって地面を操作して、死体や集落の残骸などを地中深くへと埋めることにした。
血頭小鬼には卸せる部位がまるで無いので、解体をする必要が無いのだ。ここまで大規模な破壊をもたらす方法を取ったのはそのためである。
ともあれ、これで血頭小鬼の討伐依頼は完了だ。森猪鬼の討伐に移行しよう。彼等の集落の場所は既に把握している。
血頭小鬼の集落へ近づいた時と同様、気配や臭いを消して集落に近づく。先程もそうだったが、万一気取られて逃げられたりした場合、少し面倒だからだ。
私の目的は集落の壊滅であって、密林の破壊ではない。極力、力を振るうのは彼等の集落の中だけにしたいのだ。
軽く走りながら森猪鬼の集落へと向かっていたので、1分もしない内に集落に到着する。此方の数は大体70体と言ったところか。
突然集落に入り込んできた私に対して、森猪鬼はかなり興奮しているようだな。
それぞれが武器、というか折れた丸太の束を持って私を取り囲んでいる。
だが、私にはまるで脅威にはならないし、その丸太の束で私に殴り掛かったところで丸太の束が派手に砕けるだけだろう。
彼等の集落には人間の遺骨などは見当たらない。せいぜい衣服だったと思われる布の切れ端が確認できる程度だ。
森猪鬼は人間を骨どころか衣服や装備すら全てまとめて食べてしまう。それ故に被害に遭った者の遺留品は何も残らない。せいぜい、先程確認したような布の切れ端程度が関の山である。
彼等魔物とて、生きるために仕留められる相手を仕留めて食事を取っただけに過ぎない。森猪鬼が人間達をいたぶると言う話も特に聞いたこともない。
彼等はただ、ここで生活をしていただけだ。
それでも依頼は依頼だ。受けた以上は遂行する。恨んでくれても構わない。
血頭小鬼を討伐した時と同様に尻尾カバーから魔力刃を成形して1体1体森猪鬼の首を撥ねていく。
その際、血がこぼれてしまわないようにワイバーンを討伐した時同様、切り裂くと同時に凍結させるのを忘れない。
瞬く間に首を撥ねられ凍結していく同胞を見て、何体かの森猪鬼が集落の外へと逃げ出そうとするが、それは叶わない。
私の足元以外の集落の地面を『我地也』によって変質させて泥沼のように変化させたのだ。
逃げ出した森猪木達は突然足元が沈みだした事態に反応できずに皆倒れ伏してしまう。
倒れてしまい泥に埋まってしまった森猪鬼達の首を撥ねるのは少々手間なので首を撥ねずに突き刺して凍結させるだけに留めておいた。これだけでも彼等の命は終わってしまっているからな。
それにしても、できると思ったからやってみたが、こうまで自在に地面を操作できるとはな。つくづく『我地也』とは凶悪な性能をしている。
これ、その気になれば相手を液状化させた金属の中に閉じ込めて固めてしまうことすらできてしまいそうだな。
まぁ、それは今更か。
ものの1分もしないうちに集落の森猪木の討伐は完了した。『広域探知』にも森猪鬼の反応は確認できない。
討伐依頼はこれで完了で良いだろう。だが、王都へ帰る前に私にはまだこの場でやっておきたいことがある。
解体の時間だ。
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