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『それは───って言って、───という言葉と繋がってるんだよ』
話が始まってから数時間が経ち、解読もあと少しとなった。彼女は真剣に楽しそうに話を聞いてくれて頷いたり、そうなんだと言って笑ったり、表情がコロコロと変わる人だった。
彼女は俺にとって生まれて初めて自分の話をこうやって聞いてくれる人だった。
最後の1行の解読も終わり、別れることとなった。
『今日は有難う御座いました!お陰様でロシア語自体も分かったのでこれからまた色んな本が読めそうです!本当に…凄く楽しかったです』
そう、別れる時に俺に向かって彼女はそう言った。初めて言われた言葉だった、ありがとうも、楽しかったも、全部。彼女が初めて。
きっと、今日のことは忘れられない思い出になるんだろうな…そう俺は確信した。
『いえ、こちらこそ。そう言ってもらえて本当によかったです』────また会えませんか。…本当は言いたかったけど、俺には到底勇気が出なかった。だけどそのあと彼女の口から出たのは俺が言おうとしていた言葉だった。
『あ、あの…アリン!また、会えませんか?ここで』
…会いたいって思ってくれてるのか、彼女は。
少し顔を赤らめていう彼女程可愛いものはないと俺は感じた。きっと俺は彼女に今日だけで恋をしたんだろうな…。
『俺でよければ。明日にでもここで』
そう言った時の彼女の笑顔は今でも忘れない。
絶対にその笑顔を失くさないと、彼女の全てを守りたいと思った。これが、俺の中だけの決意。
「もうすぐでシスに到着致します。ここで終点となりその後回送となりますのでお忘れ物のないよう御降りください」
ようやくか…。現在の時刻は0時を回った頃。隣に眠る癒姫華を起こし、準備をした。癒姫華が10時間近く眠るのは珍しかったが疲れが溜まっていたんだろうと心配の言葉だけをかけ、準備を済ました。丁度済んだ頃にバスは到着し、
きっと大丈夫だと信じて、俺達はバスを後にした。
──────11月12日 0時10分をシウルが示す。
俺はあの風景の星の軌道を読み、ある程度の場所の想像はついていたため、癒姫華と手を繋ぎその場所まで向かった。