だって、そうじゃないか。
僕はそう思うよ。……
この世界にあるものはすべて幻だ。
君たちが見ているのは、僕の作った幻影なんだ。
だからね……
僕が死んだって誰も悲しまないんだよ。
いなくなっても問題ないんだ。
そう……最初からいなかったんだから。……
君たちは、僕のことをどう思っているんだろう? どうしてそんなに心配してくれるんだい? でも、それはやっぱり幻想だよ。
だって、そうだろ? 君は僕じゃないんだから。
同じ人間なんてどこにもいるはずがない。……
それでも、ここにいるのは紛れもない現実だ。
ならば、それでいいんじゃないかと思うけど。
違うかい? 誰かが言った……それは、彼が求めていたもののはずなのに。
空を見上げる余裕さえもなくして……
それでもなお、見上げたいと願ったはずの星。
流れ落ちる星の光に導かれるように、 彼は、ようやく立ち止まることができた。
彼は、その光景に見入っていた。
青白く輝く星々の下に広がる草原。
そこは、彼の生まれた場所だ。
草の匂いとともに吹き抜けていく風。
懐かしい空気に包まれながら、 彼は思い出していた。
ここは、彼にとっての理想郷なのだ。
もう、ここ以外に行くべき場所なんてないのだ。
そう思った瞬間……
彼にはわかってしまった。
この風景が、本当のものではないことに。
なぜなら、ここには誰もいないからだ。
ここにいるものは皆、幻にすぎない。
たとえどれほど美しい景色でも、 そこに生命を感じなければ、 そこに存在することはできない。
そして、この場所にいる限り……
彼は決して変わることはない。
いつか来るかもしれない終わりまで、 ずっとこのままなのだろう。
ならば、ここで朽ち果てても構わない。
彼はそう思っていた。
けれども、本当にそれでいいのか? ふっとそんな思いにとらわれ、 彼は再び歩きはじめた。
今はまだ気づかないが、 きっとどこかに答えがあるはずだ。
それを見つけない限り、 自分は前に進めない。
その想いだけが、彼を動かしていた。……
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