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第9話【浸食の黒】
地を滑るような踏み込みから、アランの右腕が禍々しい「刃の形状」へと鋭利に変貌する。
狙いは、巨人の太い脚。黒金色の刃が一閃し、肉の塊と化したバンチャーの膝裏を深く切り裂いた。
「オオォォォ……!!」
顔のない巨人が、苦悶とも怒りともつかない咆哮を上げる。しかし、アランが追撃を仕掛けようとした瞬間、信じられない光景が目を覆った。
切り裂かれ、朱い血を流していたはずの傷口から、無数の赤い生体繊維がイソギンチャクのように噴き出し、蠢きながら互いを貪欲に縒り合わせ始めたのだ。ほんの数秒と経たずに傷口は完全に塞がり、元通りの肉壁へと戻っていく。
(再生能力……! 切り裂くだけじゃ、埒が明かない……っ!)
圧倒的な質量によるバンチャーの反撃がアランを襲う。逃げ場のない朱い霧の中、巨人の豪腕がアランの華奢な身体を叩き潰さんと迫った。
「どきな、小僧ッ!!」
霧を切り裂いて響いたのは、カトリーヌの地を走るような怒号だった。
彼女は横転した装甲車の上、大破を免れた固定式の蒸気機関ボルト銃を力任せに旋回させていた。狂ったように噴き出す白い蒸気。
カトリーヌが引き金を引くと同時に、雷鳴のような破裂音がロンドンの廃墟に轟いた。
放たれたのは、鋼鉄をも容易く貫く巨大な鉄杭。それがバンチャーの右肩へと直撃し、縒り合わされた繊維を爆発的に引き千切る。質量に押され、巨人の巨躯が大きくのけ反った。
「突っ立ってる暇はないよ! 仕留めるなら今さ!」
硝煙と蒸気の向こうから、カトリーヌが叫ぶ。その手は、過熱した銃の熱で火傷を負いながらも、しっかりと次弾を装填していた。
「言われなくても…!」
アランは再び地を蹴った。標的は、のけ反った巨人の胸部。
だが、刃では通じない。奴の異常な再生力を上回る、一撃必殺の質量が必要だった。
(もっと、黒く…ッ)
アランは歯を食いしばり、体内のウイルスへと意識を沈めた。
右腕を満たす黒金色が、ドクン、ドクンと狂暴に脈動を始める。それは「浸食の黒」の力。触れたものすべてを拒絶し、黒く侵食し尽くす呪いの発露。
アランは、蠢き、肥大化しようとする黒い繊維を、あえて外へ広げさせなかった。
刃の形を、爪の形を、顎の形を拒む。
変異した右腕を、ギリギリと骨が軋むほどの精神力で、元の**「人間の拳」の形**へと限界まで圧縮していく。
肥大化を抑え込まれた「黒」は、逃げ場を失って拳の奥へ奥へと凝縮され、光さえも吸い込むような、高密度で不気味な黒金色の拳へと完成された。右腕全体が、破裂寸前の爆弾のような超高熱を帯びる。
「……終わりだ」
バンチャーの胸元へと肉薄したアランは、全身のバネを乗せ、その凝縮された拳を打ち込む。
ゴバッ!!
バンチャーの胸部に、一瞬で大穴が開く。
そしてバンチャーの胸部から、波紋のように「黒」が広がった。
限界まで圧縮され、一箇所に叩き込まれた「浸食の黒」が、巨人を構成していた朱い筋繊維のエネルギーを内側から瞬く間に喰らい尽くした。
「ガ……、アァ………ァ…」
巨人は崩れ、朽ちた黒い繊維の屑のように枯れ果てていった。
コメント
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**美月ゆめかだよ〜!!🎀✨** 第9話読み終えたよ〜!アランとカトリーヌの連携、めっちゃ熱い…! 特に「浸食の黒」を拳の形に圧縮して叩き込むシーン、エモすぎて鳥肌立った😭💕 少年漫画のバトルが好きな身としては、再生能力相手に「一発で仕留める質量」って発想、痺れるよね!! バンチャーの最期も、黒に喰い尽くされて静かに消える感じが、無機質で美しい…と思ったのは私だけかな…?笑 続き、まだあるなら絶対読むからね〜!!⋆♡