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オブスペラはわずかに動いた。手にしていたギガバトルナイザーをゆっくりと持ち上げ、
静かな仕草で──
デビルスプリンター/ベリアル因子 として知られる物質を呼び出した。
黒紅色の閃光がその物体の周囲で脈動し、
ジード、タロウ、そしてゼロがかつて感じ取ったことのある気配が解き放たれる。
「そ、それは……」
ゼロが息を呑むように呟く。
「デビルスプリンター……」
Zが続けた。
「正解だ。」
オブスペラは答えながら、
光の国全体を照らすプラズマスパークの輝きの下で、それを高く掲げた。
「デビルスプリンター。
ベリアルの肉体の欠片。
引き裂かれ、無数の宇宙へと散らばり、破滅を撒き散らすための断片。
これはベリアルの遺骸の一部だ。」
その声は静かでありながら、揺るぎない確信を帯びていた。
ジードは硬直し、言葉にできない衝撃がその身体に走った。
ビクトリーは背筋を伸ばし、眉を寄せ、鋭い声で尋ねた。
「『十以上の創造物』とはどういう意味だ?」
ベリアル因子を警戒しながら見据える。
オブスペラは続けた。
「私はこの断片を、さまざまな世界から回収した。
本来なら人間の手のひらほどの大きさであるはずだ……だが見ろ。」
握りしめたベリアル因子は、もはや平均的な怪獣の心臓ほどの大きさにまで巨大化していた。
その危険性と異常性を、否応なく示していた。
「ベリアルの遺伝子が散らばったまま、
破壊しか知らぬ存在を増やすことなど……私は耐えられない。」
オブスペラはかすかに呟くように言った。
「現時点で判明しているだけでも、この因子から生み出された産物は十を超える……
そしてその一つが、お前だ、ジード。」
オブスペラは変わらぬ静かな眼差しでジードを見つめた。
ジードは俯き、拳を握りしめる。
想像をはるかに超える残酷な真実を前に、受け止めるしかなかった。
だが、オブスペラは止まらなかった。
声が変わった。
平坦で、冷ややかに。
それでもどこか気品を宿したまま。
「理解してほしい……私だけがベリアルの痕跡を持つ存在ではない。
しかし、その中で──
たとえ私のDNAが純粋にベリアルのものであったとしても、
それは彼が私を『子』として認める証にはならない。
ジードとは違う。」
オブスペラは視線をそらす。
「完全に『息子』として認められたのは、ジードだけだ。」
その言葉に、ジードは困惑と衝撃の入り混じった表情を浮かべた。
ウルトラたちは息を呑み、静寂が広がった。
しかしオブスペラは、その沈黙すら許さなかった。
彼はまっすぐ立ち、
議場の光が背に背負ったギガバトルナイザーの黒曜石の表面に淡く反射する。
そして低く、鋭く告げた。
「全員が知っているはずだ。
ジード──ベリアルが成功させた息子。
だが、ベリアルの実験から生まれた存在は他にも三体いた。
彼らは『ジードの兄弟』(ジードの兄弟)と呼ばれている。」
ロッソの隣にいたブルは、反射的に身体を強張らせた。
好奇心から、信じられないという表情へ変わっていく。
グリージョは息を呑み、目を大きく見開いた。
「ジードの兄弟……?そんな話、聞いたことないよ……」
ブルが囁くが、ロッソはすぐに肘で制した。
「静かにしろ、イサミ。」
「いっ……痛っ!カツ兄、やめてよ……!」
ブルが情けない声を上げる。
すぐそばで見ていたグリージョも叫んだ。
「カツ兄!乱暴にしないでってば!」
ロッソはつまんでいた手を離し、
弟と妹を鋭い目で睨む。
「二人とも落ち着け。今は口を挟むな。」
オブスペラは兄妹の騒ぎを完全に無視し、淡々と続けた。
「彼らはベリアルの初期実験によって生み出された存在だ。
ウルトラのDNAを無制限に混合した産物。
しかしベリアルは彼らを『失敗作』(失敗作)と判断した。
短い戦闘に現れただけで、歴史から消えた。」
「だが──それで終わりではない。」
オブスペラの声はさらに深く落ちた。
「二体は死亡し、一体は消息不明。」
ジードは両拳を握りしめたまま、オブスペラだけを見ていた。
疑念と恐怖、そして知りたいという焦がれる思いが交錯していた。
「……会ったことがある。」
ジードが震える声で言った。
「僕に似ていた。でも……違った。」
オブスペラは一瞬だけジードを見て、また視線をそらす。
声は低く、どこか遠い記憶を辿るように。
「そして彼らだけではない……ニクスがいる。」
その名が空気を冷たく震わせた。
「ただし、ジード──
ニクスはお前とは違う。」
「ニクスはウルトラではなく、人型生命体だ。
お前が完全にウルトラマン・ベリアルのDNAから生み出されたのに対し、
ニクスはレイオニクスの側から造られた。
しかし彼もまた──ケイ・フクイデによって廃棄された。
ゴミのように。
ベリアルの軍に加える価値すらない『失敗作』だと判断されて。」
オブスペラは一瞬だけ言葉を止め、そして静かに首を振った。
「……いいえ。彼のことを語る時ではない。今は脇に置こう。」
重苦しい沈黙が場を満たしたが、再びそれを破ったのもオブスペラだった。
ゆっくりと視線を落とし、手の中にあるベリアル因子を見つめる。
その断片の表面に走る亀裂から、淡い影のような光がにじむ──
まるでベリアルの凄惨な歴史を静かに語る証人のように。
オブスペラは静かに息を吸い、右手に握ったギガバトルナイザーを持ち上げた。
暗い紫の光が武器を包み込む。
見覚えのある、不吉な輝き……
オブスペラはベリアル因子を元の場所へ戻し始めていた。
「……また眠る時だ。」
冷たく、しかし抑制された声で呟く。
ギガバトルナイザーの先端に黒い渦が生まれ、
真夜中の霧のようにゆっくりと渦巻き、
ベリアル因子を飲み込んでいく。
ウルトラたちは息を呑み、警戒と好奇心を抱えたまま見守った。
ベリアルの肉片が完全に姿を消すと、
その場には凍りつくような空白だけが残った。
ベリアル因子が完全に消えると、
オブスペラはギガバトルナイザーを下ろし、
何事もなかったかのように体側へと戻した。
「では……話を続けよう。」
オブスペラは無機質な声で告げ、
父・ウルトラと他のウルトラ戦士たちを真っ直ぐに見据えた。
再び沈黙が落ちる。
それは戦いへの恐怖ではなく──
オブスペラという存在が紡ぎ出す、新たな謎の重みだった。
答えを求める者としての影。
父・ウルトラが一歩前へ進み、
張り詰めた空気を切り裂くように、低く威厳ある声で問うた。
「なぜ、そのようなことを私たちに語るのだ、オブスペラ?」
その声音には、頑なな子を宥めようとする父の色があった。
オブスペラはわずかに間を置き、再び口を開いた。
声はまだ冷たい──だが先ほどよりも深く、
その場の全てのウルトラの心へ直接流れ込むようだった。
「知ってほしい……ベリアルの遺産は、私とジードだけではない。
彼の闇から生まれた存在はまだ多くいる。
ニクス──ジードの兄弟──そして、あなたたちが知らぬ者たちも。」
ギガバトルナイザーを握る手に力がこもる。
父・ウルトラはさらに問いかけた。
「ならば、オブスペラ。」
威厳を保ちながらも柔らかな声音で続ける。
「お前が光の国へ来た、本当の目的は何だ?」
重要なウルトラ戦士たちは半円を描くように立ち、緊張を帯びた表情で見つめる。
ゼロは拳を握りしめ、オブスペラを鋭く見据え、
その横でジードは落ち着かない様子で立ち尽くし、
時折父へ視線を向けていた。
ビクトリーとギンガは目を合わせ、
母・ウルトラは夫の隣で慎重なまなざしを向けていた。
オブスペラはしばし沈黙し、
冷静でありながら冷たい双眸で、一人一人を見渡した。
そして──
ゆるやかな動きで外套を整え、
まるで重大な告白へ備えるかのように皺を撫で落とした。
その声は、平坦でありながら深く響いた。
「安心してほしい。私は破壊をもたらすために来たのではない。」
柔らかく告げる。
「私はただ、ベリアルの遺志を継ぎたいだけだ。」
その瞬間、ウルトラたちは一斉に反応した。
「遺志……だと?」
父・ウルトラが警戒を込めて繰り返す。
「どういう意味だ?」
オブスペラは背にあるギガバトルナイザーへ視線を向けた。
重々しい黒が、議場の柔らかな光を鈍く反射していた。
「かつて皆が知っていたとおり……
ベリアルもまた、あなたたちと同じウルトラ戦士だった。
だがプラズマスパークを奪おうとし、追放された。」
声は揺らがず、静かな信念を湛えていた。
「闇へ堕ちようとも……
私はただ、彼が果たせなかった『戦士としての務め』を継ぎたいだけだ。」
堪えていたゼロがついに口を開く。
その声にはまだ疑念が滲んでいた。
「俺たちと同じ“英雄”になりたいって?
それとも……お前の父親がやったみたいに、また俺たちを騙すつもりか?」
オブスペラはゼロへ視線を向ける。
その眼差しは静かで、どこか翳っていた。
「すぐに信じてもらえるとは思っていない。」
穏やかに返す。
「だが私は違う。破壊の道を拒んだ。
自分の道を歩きたい……ベリアルの罪を背負ったまま。」
ビクトリーが一歩前へ進む。
困惑を含みながらも、真っ直ぐな声で言った。
「贖う、だと?
オブスペラ……ベリアルは宇宙の破壊そのものなんだぞ。」
オブスペラはビクトリーを見据え、わずかに頷いた。
「理解している。だからこそ贖いたい。
血を否定することはできない。
だが流れ方は変えられる。」
母・ウルトラは小さく息を吐いた。
同情と警戒、その狭間で揺れながら夫へ視線を送る。
父・ウルトラは彼女へ落ち着くようにと静かな合図を返した。
「父の罪を贖うと言うのですね。」
彼女は優しく、しかし厳しく言った。
「だとしても……信頼は簡単には得られません。」
「わかっている。」
オブスペラは頭を下げ、静かに言う。
「優しい言葉はいらない。望むなら監視してくれ。
私は逃げない。行動で証明する。」
……
ジードが一歩前へ出た。
まだ不安を抱えながらも、かすかな声で問う。
「じゃあ……本当に僕の“兄弟”ってことなの?」
オブスペラは表情を変えず、ジードを見つめた。
「私たちの血は同じだ、ジード。
だが……ベリアルが私を“子”として見たかどうかはわからない。
ただの“創造物”だったのかもしれない。」
声は弱く沈む。
「答えはない。
だが一つだけ確かなことがある。
私はあの男にはならない。
私は……私として存在する。」
「オブスペラ……」
ジードの声は震え、ほとんどかすれていた。
「わかるよ。君は……僕と同じだ。」
オブスペラは顔を上げ、ジードの瞳とまっすぐに向き合った。
二人は動かず、ただ静かに互いを見つめ合った。
言葉ではなく、共有された痛みだけがそこにあった。
やがてジードは息を吸い込み、震える声で続けた。
「僕たちは望んで生まれてきたわけじゃない。
ベリアルから受け継いだものなんて、重荷でしかない。
でも……僕たちは同じ道を選ばない。
もっと良い存在になれるって証明したいんだ。」
オブスペラはすぐには答えなかった。
ただ静かに息を吐き──
その視線はほんの僅かに、柔らかく揺らいだ。
「……そうだ、ジード。」
掠れた声で呟く。
「私たちはあの男ではない。
自分の足で歩ける。」
ジードの表情にわずかな安堵が浮かんだが、
不安はまだ完全には消えていなかった。
ゼロはジードへ目を向けるが、
ジードはただ小さく頷いた。
「でもわかってるよね、オブスペラ。
僕は……すぐには信じられない。
父さんから裏切られたこと、何度も見てきたから。」
オブスペラは薄く、しかし誠実な笑みを浮かべた。
温かさのない、真実だけの笑み。
「知っている、ジード。信頼など求めない。
ただ──機会をくれ。」
沈黙が訪れたが、
それは先ほどのような窒息する沈黙ではなかった。
空気はわずかに軽くなり、
重さの奥に小さな余白が生まれていた。
ギンガはロッソとブルを横目で見やり、
彼らはひそひそと囁き合っていた。
父・ウルトラは再びオブスペラへ視線を戻し、
鋭く問いを投げる。
「ならば、どうすればお前が誠実であると判断できる?」
オブスペラはゆっくりと息を吸い、
構えていたギガバトルナイザーを背へ戻した。
伝説の武器が静かに収められ、
オブスペラはわずかに両腕を開く。
攻撃の意思がないことを示すように。
「もう一度言おう。私は攻撃しない。」
低く、しかし揺るぎない声で告げる。
「和平を求めに来た。監視も受け入れる。
抵抗はしない……あなたたちが強制しない限り。」
空気が変わった。
張り詰めた緊張がゆっくりとほどけていく。
父・ウルトラは深く息を吸い、
周囲──ニュージェネレーション、ウルトラ兄弟、母・ウルトラを見渡し、
再びオブスペラへ向き直った。
「では……監視の条件について話し合おう。」
静かに、しかし確かな決断を持って告げる。
「お前の一挙一動は監視される。
これは我々を守るためだけでなく、
宇宙の均衡のためでもある。」
オブスペラは深く頭を下げた。
「了承した……わかっている。
慈悲は求めない。
ただ、言葉の証明の機会だけを。」
父・ウルトラはゆっくりと頷いた。
意味のある沈黙が再び場に落ちる──
希望と疑念が同居する、重く静かな間。
そして父・ウルトラは二人を見据え、
賢く厳かな声で告げた。
「よかろう、オブスペラ。
その覚悟が本物ならば──
次の一歩で証明してみせよ。」
オブスペラは静かに頷き、
再びジードへ視線を向けた。
それは言葉ではなく、
ただ“理解者”だけが共有できる絆だった。
*To be continued.