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湊

1,222
(🍓視点)
「っ、よっしゃぁ…っ、!」
ドアを閉めた瞬間に、リュウキのなんだか嬉しそうな声が外から聞こえて、思わず吹き出しそうになった口を手で抑えた。
……いやいや。普通に聞こえるだろ。
せめて、もう少し時間置いてから喜べって。
そんな事を思いながら、俺もなかなか自惚れてんな、なんて恥ずかしくなる。
それでも、純粋に喜んでくれたことが嬉しくて、抑えた口はどんどん綻んでいく。
……聞こえてるって、言ったら、どんな顔するんやろ。
『聞こえてるよ。笑』
送信して、リュウキの反応を想像する。
焦った顔、すんのかな。
それとも、照れて赤くなんのかな。
ふふっ。……見て、みたいかも。
“今、ライン送ったら、どういう顔するんやろって、見てみたかったけん”
「………一緒やん、」
スマホを眺めながら、リュウキの言葉を思い出して、聞こえないように小さく呟いた。
***
仕事をしていると、あっという間に時間が過ぎていく。
少しトラブルがあって、その処理に追われているといつの間にか外は暗くなっていた。
パソコンから時計に目を移して、時間を確認すると19時を過ぎていた。
「…っ、やば、」
リュウキ、待ってるだろうな…
一度連絡を入れようとスマホを見ると、あれだけ毎日何度も何度もラインを送ってくるくせに、朝に会って以来何の通知も来ていなかった。
“仕事、頑張って…!”
もしかして、仕事の邪魔にならないように、気を遣っているのかもしれない。
そんなの、普段、気にせず送るだけ送るくせに。
……それほど、楽しみにしてくれてんのかな。
そう考えながら机に視線を落として、この間リュウキがくれた、謎のキャラクターのキーホルダーを眺める。
「……ごめんね、」
申し訳なく思いながら、その頭を、なんとなくよしよしと撫でた。
リュウキに電話を掛けようとスマホを触っていると、仕事の電話が掛かってきて操作を遮られる。
仕方なく電話に出て、再び仕事モードに頭を切り替えた。
***
(🐿視点)
「……ねぇもういい加減にしてくんない?」
「ええやんけ、話そうや!」
「も〜うざい〜!今課題やってんの!」
たっくんを待っている間の時間が耐えられなくて、家でゴロゴロしながらトムに電話を掛けた。
電話を掛けて1時間ちょっとが過ぎ、トムにそろそろうざがられた頃。
通知を確認するも、たっくんからの連絡は来ていない。
いつもならラインを送ってしまうけど、”仕事が終わったら連絡する”と言ってくれたたっくんを待つことに決め、あれからずっと連絡せずに今に至っている。
「てか課題ってなん?」
「えっ?まじで言ってる、?」
「どれ?レポート?」
「うん。必修のやつだから絶対やってよ?」
「……あ〜、……あれね。」
「……あ、……っ、ごめん、、」
「いや…、ええけん、別に。」
“必修のやつ”
トムが言ったそれは、あの先生が担当の課題だった。
……たっくんの、元恋人で、好きな人。
トムには、たっくんの過去の事情は話してないけど、たっくんが先生と付き合っていたことと、辛い思いをしたってことは、相談も兼ねて話してしまった。
「……あーあ、単位、落とそっかな。」
「っ、…気持ちは分かるけど、必修なんだからさぁ……、」
「……たっくんに辛い思いさせた奴の単位とか、まじでいらんけん。」
「……そんな事したら、先輩怒るんじゃないの。」
「……怒るってか、…まぁ、気にすると思う」
「じゃあ頑張るしかないじゃん」
「あ〜!も〜!まじで嫌や!」
トムにだけは、本音で、嫌だということを堂々と言える。
諦めんとか、忘れさせるとか、たっくんの前では散々カッコつけたけど、実際は、たっくんが他の人を好きという事実に、度々押し潰されそうになっていた。
「……まぁ、ハヤトにだけは、本音で話しなよ。」
「…うん。まじで助かるわ、ありがと。」
「で、先輩からの連絡はまだ来てないの?」
「来とらん、」
「……もうすぐ20時半だよ?1回連絡してみたら?」
「……いや、今日は待つって決めとうけん、」
「……え、ねぇ、待ってる間、ずっとハヤトと電話するつもり?」
「その為に電話したんやん」
「はぁ〜?!ちょっと!こっちにも予定ってもんがあるんやからね!」
ハヤトがぷりぷりと怒りだして、さすがにそろそろやばいか、なんて思いながら耳からスマホを離して時計を確認すると、ちょうどたっくんからのラインの通知が入り、速攻で既読をつけた。
『タクト:遅くなってごめんね。もうすぐ終わりそう。』
慌てて電話をスピーカーにして、ラインを見つめながらトムに報告する。
「トム!たっくんからラインきた!!」
「え?!なんて?」
「もうすぐ終わるって!」
「よかったじゃん!…え、でも、今からご飯行くの?」
「え?」
もうすぐ終わるってだけで、まだ終わってはいないらしいたっくんの仕事。
確かに、終わってから集合して、…あんまり時間ないかも。
何時になるかわからないから、お店も予約してなかったし。
どうしよう、と少し不安になっていると、再びラインの通知が来る。
『タクト:ちょっと電話してもいい?』
「っ、トム、ごめん!たっくんから電話していいかってライン来たけん…っ、」
「はいはい。いいよいいよ、電話しな?やっと解放される〜笑」
「おい!笑 ……ありがとね!じゃあまた、!ばいばい!」
「はいは〜い。バイバーイ、頑張って〜!」
トムとの電話を切って、いいよ、とたっくんに返事を送ると、すぐに電話がかかってきた。
「もしもし、リュウキ、?」
「もしもし、たっくん?おつかれさま、」
「…ごめんね?こんな時間になっちゃって…、」
「ううん。…しょうがないやん、仕事やし、」
「本当にごめん…もう終わるから、」
申し訳なさそうな声で謝るたっくんに、なんだか胸が痛くなる。
俺が急に、何も考えずに誘っちゃったし、悪いことしちゃったかもな…と反省する。
「うん…、たっくん、俺、また誘うけん。……また、ご飯、行ってくれる、?」
たっくんも、今日は疲れとるやろうな。
正直名残惜しかったけど、たっくんを優先しようと決めて、そう言葉にした。
「……リュウキ、今どこ?」
「え?家やけど…」
「……ご飯、食べてないよね?」
「え…っ、うん、、」
「……じゃあ、うち、来る?」
「っ、え、?!」
「今からお店行くのも、遅くなっちゃうし。…俺が作るご飯でいいなら、来…
「行く!絶対行く…っ、」
思いもしなかった提案に、嬉しくてつい食い気味に返事をすると、たっくんが笑いながらも話を続けた。
「っ、ふふ…っ、…じゃあ、リュウキんちに迎えに行くから。住所送ってくれる?」
「うん…っ、わかった、」
「ありがとう。…じゃあまた後でね、」
「うん……っ、」
電話を切った後、ベッドに横たわって、枕に顔をうずめた。
「やば……っ、うぁ〜、、/」
今からたっくんに会える嬉しさと、家に行く緊張と、たっくんが作ったご飯を食べられる喜び。
全部が一気に胸に押し寄せて、1人で小さくなりながら、その感情全てを噛み締めていた。
***
『タクト:着いたよ』
ラインを確認して、ドキドキしながら家を出ると、車の前に立ってスマホを眺めているたっくんがいた。
近寄っていくと顔を上げたたっくんは、ニコッと俺を見て微笑んだ。
あぁ、やばい、まじでどうしよ。
たっくんが笑うと、いちいち胸がきゅんとしてしまう。
俺、今から家なんて行って、心臓持つん、?
そんな緊張を隠しながら、たっくんに声を掛けた。
「たっくん、お疲れさま。まじでありがと…っ、」
「ううん。遅くなってごめんね、」
「全然ええけん、もう謝らんでよ、」
「…うん、ありがとうね。…乗って、?」
車に乗り込むと、たっくんの香水の匂いがふわっと香って、久しぶりの至近距離に心臓がうるさくなる。
1人で内心ソワソワしていると車が出発し、多分俺がガチガチすぎたのか、たっくんが笑い始めた。
「ぶっ、ふふ……っ、笑」
「……っ、わ、笑わんで。」
「っ、だって、あんな食い気味に、行くって言ってたくせに。…緊張してんだ、?」
「するやろ!車、乗ったんも久々やし…っ、」
「そんなんでよく誘ったな。笑」
からかわれながらも、そう言って笑うたっくんの横顔を眺めた。
理由はどうでも、やっぱり、たっくんが笑ってくれると嬉しくなる。
笑顔を見ると、もっと、近付きたくなる。
「……だって誘わんと、会えんけん。」
「……、あんな毎日ラインしてくるのに、誘ってこなかったじゃん。」
「仕事、邪魔したくなかったし、」
「ラインはいいんだ?」
「……え、やっぱだめ?うざい?」
たっくんの表情を確認しようとするも、ちょうど曲がろうとしている方向を見ていて、顔が見えない。
「……ううん。」
「え、?」
「……今日、送ってこなかったじゃん。なんで?」
「っ、……たっくん、」
「…気、遣っただけ?」
「………もしかして、寂しかったと、?」
なんだか少しだけ、気にしているようなたっくんの口ぶりに、そんな事を聞いてしまった。
その瞬間に車が曲がって、少しだけ身体が揺れる。
また真っ直ぐに走り始めると、たっくんが小さく口を開いた。
「……ちょっとだけね。」
「っ、え、?」
「あ、俺ん家あそこだよ。」
「…ねぇ、寂しかった?」
「……リュウキは、?」
「おれ、?」
「連絡来なくて、寂しかった?」
真っ直ぐ前を見ながらそう聞かれて、強がる理由は俺にはなくて、素直な気持ちを呟く。
「……もう、会えんと思ったけん、悲しかった、」
駐車場に車が停まって、俺の声が車内に小さく響いた。
途端に恥ずかしくなって、やば、誤魔化さんと、と口を開こうとした時、たっくんの手が頭に触れた。
「……ごめんね、?」
俺の顔を覗き込みながら、頭を撫でてくる。
胸が、ぎゅうっと締めつけられて、顔が熱くなる。
こんなん、ずるい。ずるすぎるやろ、、
「っ……もう、見んで…っ、」
「…なんで?」
「恥ずいけん……っ、」
顔が赤いのを隠したくて、俯いてたっくんの視線から逃れようとすると、少し拗ねたような声が飛んでくる。
「……俺のこと、試したくせに。」
「え、、」
「………ライン送って、反応見てたくせに。自分だけずるいだろ、」
「…え、や、…ごめん、ごめんって、」
「……じゃあ見せて?」
「っ、え、?いや、たっくん、ちょ…っ、!」
頭に触れていたたっくんの手が、頬を掴んで、ぐいっと顔を上げられる。
すぐ目の前にたっくんの顔があって、目が合った途端に顔に熱が集中して、心臓が跳ね上がった。
「っ、/…たっくん、ねぇ、やだって、、っ、」
「りゅうき?……俺の気持ち、わかった、?」
「…っ、/わか、…っ、わかったけん、ごめんって…!」
「ふふっ。顔真っ赤。笑」
俺の顔を見ると満足そうにそう笑って、 ほら降りるよ、と車から降りていくたっくん。
気恥ずかしさとドキドキが残りつつも、車を降りてたっくんの後を着いて行った。
「入って。」
「お邪魔しまーす、、」
家に入ると、車の中よりももっとたっくんの匂いがして、急に変な緊張が走った。
家の中が気になって、ついキョロキョロと見渡してしまう。
色んな趣味のコレクションとか、写真とか、物は多いはずなのに、綺麗に並べられていてごちゃごちゃしていない。
……なんか、ちょっと、たっくんのダンススタイルみたいやな、なんてよく分からないことを考えていた。
色んなスキルがあるのに主張が強くなくて、一つ一つが綺麗に見えて。まとまってて。
ここに、たっくんが住んでるんやなぁ、なんて、また一つ、たっくんを知れた気がして嬉しくなる。
「……リュウキ?」
「えっ、?」
「……じろじろ見すぎ。笑」
「っ、え、ごめん…、だって見たいやん、」
「別に大したもの置いてないよ。笑」
「そういう事やないけん……、」
「ん、?」
「っ、ううん…/」
「……ふふっ。まぁ、じゃあ、適当に待ってて?俺、ご飯作るから。」
「あっ、うん、ありがと、!」
キッチンに消えていくたっくんにお礼を言いながらも、また部屋を眺め始めた。
***
(🍓視点)
告白をされて以来、リュウキは、俺への好意を隠さない。
隠さないのか、…隠せないのか、分からないけど。
車に乗っただけでガチガチに緊張したり、悲しかった、と素直に気持ちを言葉にするリュウキの事を、なんだか無性に可愛いと思ってしまった。
若さ故の、甘え方。
昔の自分を、見ているようだった。
俺も、……先生に、
先生の事が好きだと自覚してから、
とにかく一緒にいる時間を作ろうとした。
少しでも、俺の事を、意識してほしくて。
リュウキの頭を撫でながら、少しだけ、
あの時の自分の事を、思い出していた。
……先生も、こういう気持ちに、なってたのかな。
こういう風に、俺の事を、見てくれてたんだろうか。
「……たっくん、手伝う?」
「え、?」
キッチンのカウンターからリュウキに声を掛けられて、我に返る。
手が止まっている事に気付いて、慌ててフライパンの中を掻き回した。
「考え事?」
「…ううん。大丈夫。」
「何作っとん?」
「パスタ。ごめん、簡単なやつで。」
「え、いや、むしろごめん。疲れとるのに作ってもらって…」
「いいよ、口に合うかわかんないけど。…はい、できたよ。」
「あ、じゃあ俺持ってく!」
リュウキにお皿を渡して、2人でテーブルにつくと、いただきますと挨拶を交わす。
パスタを口に運んでいくリュウキを、少し緊張しながら眺めた。
「……どう、?」
「、ん!…え、!めっちゃ美味しい!!」
「本当に、?良かった…」
「っ、…ん、まって、」
「ん?」
「……からっ、辛くない、っ、?」
「え?そう?」
「たっくん、辛いのいける人…っ、?」
「うん、めっちゃ好き。…ごめん、いつもの感じで唐辛子入れたかも。笑」
「っ、、」
「リュウキ、?無理すんなよ…?」
「へーきっ、、」
「涙目やん。笑」
「せっかく作ってくれたけん、食べたいもん….」
頑張って食べようとするリュウキを見兼ねて、お皿を奪った。
「あ、!」
「ちょっと待ってて。」
そのままキッチンに持っていき、中身をフライパンに戻すと、リュウキが席を立って様子を見に来る。
「何すんの、?」
「作り替えるの」
「え?そんなことできると?」
「うん、多分。笑」
やった事ないけど、水で薄めて、適当に調味料で味を整えてみる。
「…ちょっと食べてみて?」
「え、うん、」
少し取ってリュウキの口に運ぶと、目をまん丸くしながらキラキラと輝かせて、嬉しそうに俺を見た。
その顔を見て、ふ、と顔が綻ぶ。
「やばい天才やん!めっちゃ美味しい!!」
「そう?笑」
「ちょっ、たっくんも食べてよ!」
「えっ?」
「はいっ。」
俺からフォークを奪って、フライパンから掬うと、俺の口に運ぶリュウキ。
「口開けて?」
「えっ?あ、うん…、」
小っ恥ずかしかったけど、促されて口を開ける。味見すると想像以上に上手くできていて、思わず笑ってしまう。
「うっま……、笑」
「やろっ、?!あははっ、やばー!ばか天才やん!笑」
さっきまで辛くて涙目になっていたのに、今度は楽しそうに笑いながら目の端に涙を滲ませているリュウキ。
その姿を見ていると、どんどんと顔が綻んでいく。
リュウキが笑っていると、なぜかホッとする。
落ち着くとかでもなく、胸の中が、じんわりと、熱くなるような。
つい、こっちも、笑ってしまうような。
元気をもらえる、そんな笑顔。
「ねぇ早く食べたい!」
「うん、じゃあ持ってって。」
「おっけー!」
席につくなり、さっきとは違う食べっぷりで美味しそうに平らげていくリュウキ。
やっぱり辛かったんやな、なんて笑いそうになって何とか堪えるも、口いっぱいに詰め込んでいくリュウキを見ていると、余計に笑いが込み上げてくる。
「っ、ふ、はは…っ、!」
「え、なん?」
「…なんかリュウキ、リスみたい。笑」
「りす、?は?なんで?」
「ほっぺパンパンやん。笑」
「だって美味しすぎるってこれ!」
「ふふっ、かわいいな。」
「え、?/」
リスみたいなその顔がやけに可愛くて、思わず可愛いと口にすると、リュウキは照れたように今度は少しずつ食べ始めた。
「…そんなに美味しかった、?」
「うん、最近食べたもので1番美味しい。」
「絶賛やな。笑」
「嬉しい?笑」
「まぁね。笑」
「うわ〜無くなるん嫌や〜」
「…また作ってあげるよ、」
「…えっ、?」
「そんな喜んでくれるんだったら、作りがいあるし。笑」
「っ、…約束やけんね、?」
「ふふっ、うん。」
「…っ、やったぁ、、」
小さく、やったぁ、と口にして、嬉しそうにまた食べ始めるリュウキ。
感情が豊かなリュウキを見るのが楽しくて、自分の食事が進んでいない事にふと気付き、フォークを動かした。
***
(🐿視点)
ご飯を食べ終わって、また部屋に飾っているものを眺めていると、後片付けを終えたたっくんがこっちにやってきた。
「たっくん、ご飯、ありがとうね。後片付けも。」
「ううん、全然。何見てたの?」
「ん?写真。」
「あぁ、…なんか気になるのあった?」
「ん〜、、あれ?これ、ラン兄やん!」
「え?」
何人かで写っている写真の中に、ラン兄の姿を発見して思わずテンションが上がった。
たっくんがその写真を手に取り、懐かしそうな表情で眺め始める。
「若いなー。笑」
「ラン兄、髪ながっ。」
「ははっ、そうそう。長かったんよね昔は。」
「へぇ〜…」
ラン兄の話をしながらも、視線はすでに、そこに写っている昔のたっくんの姿にいっていた。
……先生と付き合ってた頃やん、なんて、内心そんな事を考えてしまう。
写真の中で笑っているたっくんの笑顔は、あの先生が作っていたもので。
悔しがったって意味ないのに、悔しさが込み上げてくる。
「……俺も、この頃に、出会いたかったな、」
「…え、?」
「……たっくんが、…ラン兄と出会う前に、出会いたかった。」
ラン兄に出会う前に、たっくんは先生と、付き合い始めたから。
たっくんが、先生と、付き合う前に、出会っていたかった。
そしたら、何か変わっとったんかな。
……たっくんは、辛い思い、せんでよかったんかな。
「っ、……この頃に出会っても、俺、ほとんど大学にいなかったよ、……それに、自分勝手だったし、」
「…っ、え…、?」
「……多分、リュウキを傷つけてるよ、」
「っ、……たっくん、やめて。」
たっくんは、全部自分が悪いと思っとる。
なんで?
だってたっくんは、ちゃんとずっと、……先生の事、想っとったんやろ。
浮気したのは、相手やんか。
たとえ、どんな理由があったとしても。
たっくんを捨てたのは、先生やろ。
……なんで、そんな奴のこと、まだ好きなんよ。
「……俺、怒るよ。たっくん。」
「……、なんでだよ、」
「………それ以上、自分のこと責めんでよ。たっくんは何も悪くないけん。…もう、そんな事言うのやめて、」
「っ、…リュウキにはわかんないよ、」
「わかるけん。…たっくんは悪くない。……もし、たっくんがそうやって苦しくなるんやったら、俺を頼ってよ。…俺が、何回でも、悪くないって言ってやるけん。」
ただただ、たっくんを救いたい一心で、強気にそう言ってのけると、持っていた写真をゆっくりと棚に戻すたっくん。
「……たっくん、、?」
「………うん。ありがとね、リュウキ。」
口は微笑んでいるけど、やっぱりどこか寂しそうな顔をするたっくんを元気づけたくて、どうにかしなきゃと焦っていると、テレビの横に置いてあるゲーム機が目に入った。
「…っ、たっくん、アレ、やりたい。」
「えっ、?」
「ゲーム!俺も好きやけん、」
「そうなん?……じゃあ、する、?」
「うん!やろ!」
空気が変わったことに安堵しながら、2人でソファーに座ってゲームの準備を始めた。
***
「はっ?!まって、たっくん強いやん…っ、!」
「もしかして舐めてた?」
「だってなんか弱そうやん。笑」
「おい。誰がやねん、笑」
「あははっ、!笑」
予想外にたっくんはゲームが上手くて、俺は何度も負けてしまった。
少しからかってみると、ツッコミを入れながらも笑顔を見せたたっくんに、内心嬉しくなる。
「ねぇもう1回やろ!」
「いいよ?……あ、ちょっとまってて。」
「あ、うん、」
再びゲームを始めようとした時、急にたっくんのスマホが鳴った。
画面を確認した後、電話に出るためか、部屋から出て行くたっくん。
なんだか気になって、少しだけ近付いていく。微かに聞こえるたっくんの声に耳を澄ますと、内容的に、仕事の電話のようだった。
そういえば、”もうすぐ終わる”とたっくんが言ってから、そんなに時間が経たずに俺を迎えに来てくれた。
……もしかして、まだ仕事、終わってなかったとか、?
「……ごめん、お待たせ。」
何事もなかったかのようにたっくんが戻ってきて、心配になって声を掛けた。
「……たっくん、」
「ん?」
「…もしかして、まだ仕事残ってたりするん…?」
「…え、?」
「今、仕事の電話しとらんやった、?」
「……そんな事リュウキが気にしなくていいの。…でも、ちょっとだけごめん、ゲームしてて?」
そう言うと、たっくんはパソコンが置いてある机に向かい、なにやら仕事をし始めた。
仕事、まだ終わってなかったのに、
もしかして、……俺を待たせてるからって、切り上げてくれたんかな。
だとしたら、申し訳なさすぎるやろ…、
謝ろうと、邪魔しないようにそっと後ろから声を掛けた。
「……たっくん、ごめん、…仕事、終わってなかったんやろ、?」
「…大丈夫だから、リュウキ。ゲームしてな、?」
「……でも、…俺が急に誘ったけん、」
「……いいよ、俺も会いたかったし。」
「………え、?」
パソコンを見ていて顔が見えないまま、たっくんが小さくそう呟いて、言葉を理解した瞬間、嬉しくて軽くパニックになる。
「え、今なんて言ったと?!たっくん、もっかい言って、?!」
「っ…おいこら、仕事してるから。大人しくあっちでゲームしてなさい、」
「……っ/、はーい、、?」
俺を見ないまま、少しだけ照れたようにあしらってきたたっくんに、思わずニヤけてしまった。
仕事の邪魔はできなくて、そのまま引き下がってソファーに戻ったけど、さっき小さく聞こえたたっくんの言葉が、ずっと頭から離れずにいた。
……
しばらくゲームをしていると、さっきまで聞こえていたはずの、たっくんがキーボードを打つ音が聞こえない事に気が付いた。
「……たっくん、?」
気になってたっくんの方へ向かうと、机に顔を伏せて、肩が小さく上下しているのが見えた。
寝てしまった様子のたっくんに、ゆっくりと近付いていく。
組んだ腕から少しだけ顔が覗いていて、初めて見る寝顔に、いつもの大人なたっくんとは違う幼さを感じて、思わずたっくんの前にしゃがみ込んで見つめてしまう。
……今日、少しでも、”リュウキのため”って、思ってくれたんかな。
少しでも、たっくんの心の中に、居れたんかな。
そんな事を考えていると、目の前の寝顔が愛おしくなって、ゆっくりと手を伸ばして、たっくんの頭にそっと触れた。
「……たっくん。おつかれさま、」
こっそりと、そう呟きながら、頭をよしよしと少しだけ撫でた。
初めてたっくんに触れた手が、じわりと熱くなる。
……なんか、今、
俺とたっくん、
恋人、みたいやん。
……本当に、そうやったらいいのに。
「……ねぇ、たっくん。……俺の方、向いてよ、」
もう一度たっくんの頭に触れて、そんな言葉を、1人で小さく呟いた。
コメント
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みちさん!待ってました♡ 🍓早く、、、先生以上に🐿の事を好きになってくれよ😭こんなに🐿は🍓を思ってるのに😤って思わず叫んじゃいました🤣 今は🍓も🐿に会いたいとか嬉しいとかの気持ちがあるかも?でも先生と会ってしまったら好きになってもらえるように頑張る🐿も、先生と幸せになって。諦めよう。とか言うんじゃないか?!とかもう感情がぐちゃぐちゃで涙と鼻水で洪水警報出まくりです😳
ッスゥ………衝撃のあまり言葉が出ません……とりあえず分かることはタクリュキ最高、みちさん最高ってことです……
キュンキュンがと止まらーーん!ストーリーが毎回良すぎてすぐ読み終わってまう笑 続き待っとーよ🤭