テラーノベル
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「……はあ?! 何言ってんの」
愛梨の喉の奥から、乾いた声が漏れた。あまりにも突飛で、それでいて確信に満ちたその誘いに、頭の回転が止まる。
「本気だけど」
海里は動じない。それどころか、面白がるように愛梨の反応を観察している。
「あのねえ、立場分かってる? あなたは生徒。私は教師。私は……私はもう、恋愛は諦めたの」
「怖いから?」
「怖いとか、そういうんじゃないけど……」
愛梨は視線を逸らした。怖い。本当は、心臓が千切れるほど怖い。また誰かを信じて、その手が首を絞める手に変わる瞬間を想像するだけで、呼吸が浅くなる。
「この学校、田舎すぎて生徒も全然いないから、教師と生徒が付き合っても、何も思われないよ」
「……っ、そんなわけないでしょ! どこにいたって、教師と生徒がそんな関係になるのは――」
「法律で禁止されてるわけじゃない。ただの倫理観の問題でしょ? 狭いコミュニティだからこそ、みんな波風立てたくないんだ。俺と先生が『仲良く』してたって、それが復讐に役立つなら、それでいいじゃないですか」
海里はカバンを肩にかけ、ドアの方へと歩き出した。その足取りはどこまでも軽く、重苦しい愛梨の過去を土足で踏み荒らしていく。
「それに、先生。あんたが『諦めた』って言ったところで、あの佐藤って男は諦めないっすよ。逃げれば追う。それが、自分に自信がない男の性分だから」
ドアノブに手をかけ、海里は振り返った。
「俺に守られるのが嫌なら、自力で頑張れば? ……まあ、あのメッセージを見る限り、無理そうですけど」
言い捨てて、彼は保健室を出ていった。
パタン、と静かに閉まったドア。
愛梨は力なく、その場に崩れ落ちた。
机の上には、先ほど海里が置いたスマートフォン。画面はすでに暗くなっているが、その中には確かに、佑真からの「呪い」が届いている。
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