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一方、アストラル艦隊の旗艦では、藻舞美が苛立ちを露わにしていた。
「あの女、オンリーの邪魔するばかりか、未知の力を発現させるとは……‼︎ただのグラウンドの民ではないわ」
彼女は、直ちにアストラル本部に「特級危険事案」として報告を上げた。そして報告の末尾に、個人的な感情も込めて追記した。
「グラウンドの『特異体質者』は、オンリーの持つ『禁忌の血』と共鳴する可能性あり。早期の回収、または排除を推奨する。」
藻舞美は、おんりーへの執着と、自身の家門の栄誉のため、おら子の存在を徹底的に利用しようと企てていた。
グラウンドとアストラル、二つの世界の運命が、おんりーとおら子の覚醒した力によって、大きく動こうとしていた。
藻舞美からの報告は、アストラル本部に激震をもたらした。グラウンドに「創生術」の片鱗を操る特異体質者が存在するという事実は、彼らが長年ひた隠しにしてきた歴史の裏側を暴き出す可能性を秘めていた。特に、おんりーの「禁忌の血」との共鳴という藻舞美の推測は、アストラルの最高評議会にとって、見過ごすことのできない状態であった。
「即時、回収部隊を派遣せよ。対象は生存捕獲。抵抗する者は排除もやむを得ない。」
冷徹な指令が下される。今度は藻舞美のような貴族の意地ではなく、アストラル全体の存亡に関わる、より深く、秘密裏の部隊が編成された。彼らは、アストラルでも最高峰の「調律者」と呼ばれる能力者であり、対象の能力を強制的に制御・無効化する専門家集団であった。彼らの目的はおら子の力だけでなく、おんりーの隠された力を掌握することもあった。
グラウンドの集落では、おら子の体調は完全に回復していた。しかし、彼女の心には、藻舞美の言葉と、おんりーが自分を庇って傷ついた光景が深く刻まれていた。
「おんりー、あの時、私…何をしたの?」
おら子は、おんりーの研究小屋で、不安そうに彼を尋ねた。おんりーは、古代の文献とおら子から採取した微量の魔力サンプルを照合していた手を止めた。
「君の力は、『生命』そのものに干渉する、根源的なものだ。アストラルでは失われた、あるいは禁忌とされた『創生術』の素質。そして、俺が持つ『禁忌の血』も、その源流に深く関わっている」
おんりーは、これまでの冷徹な調査員としての態度から一変し、初めておら子に、彼自身の秘密を明かした。彼の「禁忌の血」とは、アストラルと、グラウンドの民が崇める「根源の生命」との間に、ごく稀に生まれる特異な血筋だった。その血は、強大な力を秘めるが故に、アストラルでは忌み嫌われ、徹底的に隠蔽されてきたのだ。彼の塩対応は、感情を揺るがせることで力が暴走するのを恐れるが故の、彼なりの自己防衛だった。
「私の力と、おんりーの血が……?」
おら子は、目を丸くする。理解は追いつかないが、おんりーの真剣な眼差しから、ただ事ではないことだけは伝わってきた。
「君の力を、完全に覚醒させる前に制御できるようにならなければ、アストラルはお前を『危険な兵器』と見なし、利用するか、破棄しようとするだろう。
おんりーの言葉には、一切の感情が乗せられていないようだが、その響きは、おら子を深く揺さぶった。彼は、自分を助けるために、自身の秘密を明かしてくれたのだ。
「私……頑張る!おんりーみたいに、強くはなれないけど……でも、もう、おんりーが傷つくのは嫌!」
おら子は、決意を秘めた瞳でおんりーを見つめた。その日から、おんりーとおら子の、秘密の訓練が始まった。
投稿遅れてごめんなさい!今日できれば2話投稿します!
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