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私
にとって、それは雨上がりの虹だった。
あの日、君と出会った瞬間に 僕の心の空にも七色の橋がかかったんだ―――。
「おはようございます! 今日もいい天気ですね!」
「ああ、そうだね……」
朝っぱらから元気いっぱいの少女に、俺は生返事をする。
この子は俺と同じアパートに住む大学生だ。名前は知らない。
名前を聞くタイミングを逃したまま今に至る。
ちなみに年齢は多分10代半ばくらいだと思うのだが、正直よく分からない。
「あーっ!! また聞いてないでしょう!?」
「悪い。ちょっと考え事をしてた」
「む~っ!!」
頬を膨らませている少女だが、なんとも可愛らしい仕草である。
「ごめんよ。それで何の話をしてたんだい?」
「もういいです。今日は何曜日ですか?」
「水曜日だけど」
「正解です。じゃあ今日のお昼ご飯は?」
「カレーかな」
「残念外れです。今日のメニューはラーメンですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「むぅ……やっぱり興味なさげだね……」
彼女は自分の本棚を見て嘆く。そこには、漫画や小説しか並んでいない。しかも、全部恋愛モノばかり。
「そりゃあ、そうだろ。俺は今年受験だし、勉強漬けの生活になるんだぞ?」
「えぇー!? それじゃあ、つまらなくない?」
「別に。それにお前だって似たようなもんじゃん」
「うぐっ! た、確かにそうなんだけどぉ~!」
俺とコイツ――月宮真夜は同じ高校に通う同級生。クラスも同じだ。だが俺は今年転校してきたばかりなのでまだ顔見知り程度だったりする。
「おい、そこ邪魔だからどけよ」
「あぁん?」
真夜の机の前に座っていた女子生徒がメンチを切るような目つきで睨んできた。
名前は星崎彩音(ほしざきあやね)。この学校では不良として有名らしい。茶髪に染めた髪をポニーテールにしている。スカートは校則違反すれすれまで短くしているし、シャツの第一ボタンも開けている。顔立ちは整っているのだが、表情のせいで台無しだ。
「おい真夜。お前あたしのこと馬鹿にしたろ?」
「してないよ」
「嘘つけ! 今鼻で笑ったじゃねぇか!」
「笑ってないし、そもそも君の名前すら知らないんだけど」
僕の名前は月影真夜(つくかげまなよる)。一応この学園の生徒会長を務めている。そして目の前にいるのが、なぜか生徒会室にいた不良の女の子である。どうしてこんなことになったのかと言うと、少し時間を遡る必要がある。
***
昼休みの時間になった。僕はいつも通り自分の教室を出て屋上へと向かう。ここは僕のお気に入りの場所の一つなのだ。階段を上っていくと、踊り場の壁にもたれ掛かっている一人の男子生徒がいた。
「おーい真夜、ちょっと待ってくれよ」
彼の名前は黒瀬光輝(くろせこうき)。