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#溺愛
桜咲かな
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18
#先生
なべたろう
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#14..手術
ついに手術当日
私は運が良く、今日は休みだ
だから一日中祈ろうと思っている
本当に今日を休みにしてくれた先生には感謝だ
今日まで自分らしく、楽しくやってこれたと思う
これが最後などとは思いたくないが、悔いは残らないように過ごせたはずだ
だがいざ想像してみると、悔いが残らないわけがなかった
悲しいという気持ちと、そう想像をしてしまった自分への怒りが混ざる
朝起きたのは休日のいつもより早いAM6時前後
この時間、君は何をしているだろうか
もう手術がはじまっているのか
それとも今はまだ準備中なのか
満を持して、声をかける
【りーちゃん、?】
【今いる…?】
するとすぐに返ってきた
〔うん、始まるのは8時からだよ〕
そう言う貴方の手はきっと震えているのだろう
怖くて、明日が来るかもわからない
そんな状況なのに、貴方は今そこに立っている
本当に勇気のあることだと思う
私にはできない
きっと逃げ出してしまう
貴方だから、ここまで来れたと思える
【そっか…、】
【ねぇ、今誰も起きてないの】
【少しだけ電話できる…?】
〔俺も言おうとしてた、w〕
こうやって気が合うところは数ヶ月も前から変わらない
双子のように思っていること、言うこと、全て同じだった
それがまた嬉しくて、何度も微笑みを隠せなかった
プルプルと、電話の呼び出し音が鳴る
『あ、いけた』
「おはよw」
『おはよ、w』
やはり声も震えている
当然だろう
数時間後に生死を分ける大切な手術があるのだから
「急にごめんね、話したくなっちゃった、w」
本当は私の気持ちを落ち着けるためと、貴方の気持ちも落ち着かせるため
でもそんなドラマチックじゃない理由はいらない
ただ話したくなったと、今も貴方が必要だと
伝えないといけない気がしたから
『僕も、w』
「一人称戻ってるよw」
『あw』
涼太は何故か一人称が僕だということを隠している
どちらでも可愛らしいと思うが
「ねぇ、手術が始まったら、私ずっと祈ってるね」
「で、いつでもおかえりって言う準備しとくから」
「必ず、ここに帰ってきて、」
朝方誰もいないベランダで泣きそうになる
『うん、約束』
『必ず戻ってくるよ』
そう言ってくれる貴方の声はもう震えていない
少しは元気づけられたらしい
会話時間はあっという間に過ぎ、1時間が過ぎる頃
『あ、そろそろ呼ばれる、』
「…そっか、」
「っ…、いってらっしゃいっ、愛してるよ、」
言い残すように
戻ってくると期待するように
“いってらっしゃい”と送り出す
『うん、僕も愛してる』
『いってきます』
そこで涼太との通話は終わった
1時間15分
今日はこれだけの間話せた
長いようで短い
きっと、今からの時間は貴方がいないから、とてもゆっくりに感じるんだろう
早く戻ってきてほしいという願いと、遅くてもいいから無事に、と思う気持ちが混じる
どちらでもいい
結局の所、無事に帰ってきてくれさえすればなんでもいい
できれば昔のように元気に笑って、走れるようになっていてほしい
でも、そうならなくとも私は絶対に側を離れたりしない
忘れたりなんてしない
ずっとずっと、私の心の中に貴方はいるから
忘れることなんてない
できやしない
「どうか無事に……」
繋がっていないスマホに向かって1人で願う
これは私の一生のお願いだ
#15..沈黙
涼太が帰ってくるまで、私はしばらくの間あのアプリはおやすみすることにした
貴方がいないここなんてなんの価値もないから
妹と昼ごはんを食べながら、4日ぶりの休みを堪能する
でも心の中では祈り続けている
貴方がまた『ただいま』と言ってくれている姿を想像しながら
そして、既に30件を超えている貴方へのメール
既読はつかない
まだいい
どれだけだって待つ
これが既読になって、貴方が帰ってきてくれるまで
私は貴方への思いを綴るだけだ
涼太が言っていた手術から2日後
涼太の目論見通りなら、今日帰ってくるはずだ
_だった
いつになっても医師からの連絡もなく、涼太に送ったメッセージの既読もつかない
さすがに胸がざわついてきた
夜8時
結局今日、涼太は姿を現さなかった
不安でしかたがない心臓を落ち着かせ、深夜1時眠りに落ちる
それまでも音沙汰がなかった
もしかしたらという嫌な想像が頭を過る
眠りたくても眠れない
嫌な事ばかり想像してしまうから
夢にまで出てきそうだから
両親共々寝静まった深夜3時
1人肌寒いベランダに出る
カーディガンを着ているとはいえ少し寒い
空を見上げ、街灯や家の明かりが消えて、より見やすくなった星を見つめる
「貴方は今どうしているの…?」
「まだ、ここにいますか…?」
誰の返事もこない言葉を投げかける
「ねぇ、っ…」
「返事、してよっ、」
「貴方がいない世界なんて、どうでもいいのにっ…」
ベランダで泣き崩れる
まだここにいるという確証がないから、ネガティブな思考に陥ってしまう
しゃがみ込んだまま、星々に祈る
「一生のお願いです、」
「私におかえりと、言わせてください…っ、」
ぽつぽつと、小雨が降り始める
私の願いは雨に掻き消されて、天まで届くことはなかった
明日こそはと期待して、ベッドに戻る
だが、その後も安眠できるわけがなく、眠れない夜が明けた
次回➸#16
コメント
16件
まって 、泣く 、
ああ、もう……胸がぎゅっとなりました。 「いってらっしゃい、愛してるよ」って送り出すシーンと、涼太くんが「いってきます」って返すところ、涙が止まらなかったです。あの1時間15分の電話が、どれだけ大切な時間だったか――。 それから手術後の沈黙も。返事が来ない不安、ベランダで泣き崩れるりーちゃんの気持ちが痛いくらい伝わってきて、一緒に祈る気持ちで読みました。次、涼太くんから「ただいま」が聞けますように……本当に、そう願わずにはいられないです。