テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【8話】任務を終えた二人は、月明かりの差し込む森の小道を歩いていた。 握られた手は温かく、夜風よりもずっと心地よい。
「……夜道は危ない。離すな」
海星 の低い声に、くらげの心臓が跳ねる。
「う、うん……」
そのまま指を絡めたまま歩く時間は、魔法よりも不思議で甘い。
――だが、その空気を裂くように、前方からひゅっと風が吹き抜けた。
次の瞬間、木陰から一人の青年が現れる。
「やっぱり……君が星影海星だよな」
鋭い金色の瞳に、銀色の髪。
海星は険しい顔をし、くらげの手を強く握り直す。
「……紫苑(しおん)。なんでここに」
紫苑は口元だけで笑い、視線をくらげに移した。
「へぇ……これが“ルージュの最強”か。思ったより可愛いじゃないか」
くらげは戸惑いながらも、「あ、ありがとう?」と返す。
「紫苑、くらげに近づくな」
海星の声は低く、普段よりずっと鋭い。
しかし紫苑は一歩前に出て、くらげの目を覗き込む。
「――君、今度俺と手合わせしてみない?興味がある」
空気が一瞬で張り詰める。
くらげは無意識に海星の方へ寄り添い、海星はそれを守るように前に出た。
月明かりの下、二人と一人の視線が交錯した――。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!