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【9話】翌日、放課後の訓練場。 紫苑は片手をポケットに入れたまま、余裕の笑みを浮かべていた。
「じゃあ始めようか、“ルージュの最強” 」
くらげは軽くストレッチをし、にこっと笑う。
「うん、よろしくね」
観戦席には海星が腕を組んで立っている。
(……絶対に怪我させない。少しでも危なくなったら止める)
内心そう決意していた。
◇◇◇
開始の合図と同時に、紫苑が銀色の魔力を纏い、疾風のように踏み込む。
「――《ルナ・エッジ》!」
月光を刃に変えた一撃がくらげへ迫る。
だがくらげはひらりと身をかわし、光の花びらを舞わせる。
「《ミラージュ・ガーデン》」
幻の花びらが紫苑の視界を奪い、その隙に光の矢を放つ。
「ほう……!」
紫苑は矢を弾きながらも笑みを崩さない。
「噂通りだな。……でも、これならどうだ!」
彼の周囲に銀の狼が五体現れ、一斉にくらげへ襲いかかる。
海星の拳がわずかに握り締められる。
しかしくらげは怯まず、指先をぱちんと鳴らした。
「《ルミナス・ケージ》!」
黄金の檻が狼たちを包み込み、光とともに消滅する。
そのままくらげは紫苑の目の前に瞬間移動し、手のひらに光を宿す。
「――終わりだよ」
眩い閃光が弾け、紫苑は一歩後ろへ下がった。
「……参った。完敗だ」
笑いながら降参を告げた紫苑の視線は、悔しさではなく興味と好意を含んでいた。
「やっぱり面白い。もっと君と戦いたい」
その言葉に、海星の表情は僅かに陰る。
くらげは無邪気に笑って「うん!」と答えるが、海星は彼女の背後に立ち、静かに紫苑を見据えていた――。