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#恋愛
らりるれろ
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『……え?』
自慢ではないが、生まれてこの方異性にそんな事を言われた経験のない俺は、ピキッと固まった。
『あ、ごめんなさい。生理的に無理とか、そういう意味じゃないんです』
――生理的に無理。
その言葉もまた、グサッと胸に刺さる。
『……ど、どういう意味?』
彼女は『うーん……』と考えながら、遠慮なく鉄板焼きのステーキを咀嚼し、嚥下してから言った。
『副社長の笑い方って胡散臭いです』
――胡散臭い。
ズドン、と今度は大砲にでも吹っ飛ばされた気分だ。
『……上手く言えないんですけど、〝この人、こう言ったら喜ぶだろうな〟って思いながらセリフを選んでいるように思えます。笑顔も楽しくて笑ってるんじゃなくて、〝ここでこう笑ったら、この人は魅力的に感じるだろうな〟って計算して笑ってるみたいに感じたんです』
俺は初対面の彼女に核心を突かれ、放心した。
――なんでこの女性は、会ったばかりなのに俺を理解しているんだろう。
全身に鳥肌が立ち、味わった事のない感覚を得たそれは、――多分一目惚れだったと思う。
『私はこれから、副社長の秘書として働いていきます。阿吽の呼吸でサポートしていかなければなりませんから、私にまで〝演技〟をしてほしくないんです』
俺をまっすぐ見て言ったエミリの表情には、一切の〝媚び〟がない。
今まで出会ってきた女性は、俺が篠宮ホールディングスの御曹司だと知ると、気に入ってもらおうと必死になった。
まさに、あなた色に染まります、という女性を大勢見てきたから、エミリのようにまず本質を見抜き、仕事の邪魔だからやめてほしいと言ってくる人は初めてだった。
そして直感する。
――この女性を手放したら駄目だ。
『あの……っ』
『……はい? 失礼だったら申し訳ございません』
『そうじゃなくて! ……つ、付き合いませんか?』
『はい?』
エミリは本日二度目の『はい?』を口にし、しばし固まる。
そのあと乙女らしく照れるなどなく、『冷めちゃう』と言って次の肉を口にした。
(食べるんかい!)
俺はらしくもなく突っ込み、気がつけば何をするにも予想外なエミリに夢中になっていた。
彼女は次の肉もしっかり噛み、嚥下してからようやく答えた。
『副社長ならよりどりみどりでしょう。私を彼女にするメリットがありません。あと、経理部長が面倒臭そうなので、お断りします』
――フラれた!!
生まれて初めて、秒でフラれた俺は、初めて尽くしで情緒が追い付いていない。
『だ……っ、ちょ、待って? もう少し考えよう?』
『考える間もないって事です。一見、副社長の彼女なんて言われたら、物凄い玉の輿でしょうけど、実際は面倒な事のほうが多そうです。それに、私はフツーの一般家庭で生まれた、毒親育ちなので、付き合ってもいい結果にはなりませんよ』
彼女の家庭環境を聞き、俺は思わず苦笑いした。
『俺も似たようなものだよ。周りからは〝恵まれてる〟って言われるけど、母はあの通りだし、父は……、尊敬できない人だ。俺にとって二人は毒親ではないかもしれないけど、直接俺を害さなくても、毒になる場合はあるんだ』
『そういう事もありますよね』
エミリはサラッと言い、人参のグラッセを食べて『おいふぃ』と頬に手をやる。
明らかに、目の前の会話より食だ。
そんな反応が新鮮で堪らない。
デザートを食べ終えたあと、ようやくエミリはまじめに話してくれた。
『……私、もう他人に期待するのはやめたんです。救いを求めても誰も助けてくれない。自分を救えるのは自分だけ。人は裏切るけど、お金は裏切らない。そうやって、ドライに生きていくって決めたんです。……副社長はそっけない私を珍しいって思ってるんでしょうけど、一過性のものですよ。世の中もっと素敵な女性は大勢いますし、私みたいな〝ハズレ〟を引かないほうがいいです』
彼女が自分を卑下したのを聞いて、心がざわついた。
波立つ心の水面に、ボロボロに傷付いた尊が映る。
『駄目だ!』
俺は思わず声を荒げ、エミリの手を掴んでいた。
『……へ……?』
驚いた彼女は目を丸くし、素の表情で俺を見る。
そんな彼女に、俺はまくし立てるように言った。
コメント
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おお、第920話読んだわ!副社長が秒でフラれて「食べるんかい!」ってツッコむとこ、思わず声出た(笑)。エミリが胡散臭いって核心突くところから一目惚れ→即フラまでの流れ、初めてづくし過ぎて笑ったけど、彼女の「自分を救うのは自分だけ」って台詞、重くてグッときたわ。続き気になる🔥