テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夢梨「こんちゃ」
「続きを書く」
「どぞ」
第二話 「昼食」
翌日、12時00分。事務所近くの通りにて
都心にある爆豪の個人事務所。そのエントランス前、約束の1分前には緑谷出久の姿があった。 仕事着であるコスチュームではなく、落ち着いたグリーンのコートにタートルネックという私服姿だ。手持ち無沙汰にスマートフォンのスケジュールを確認していると、自動ドアが勢いよく開き、爆豪勝己が現れた。
黒のライダースジャケットに、タイトなジーンズ。相変わらず隙のない、威圧感すら漂う着こなしだ。
「……1分遅ぇぞ、クソナード」
「あ、かっちゃん! お疲れ様。ちょうど今着いたところだよ」
「チッ、待たせんじゃねえよ。行くぞ」
爆豪は挨拶もそこそこに歩き出す。緑谷は慣れた様子でその一歩後ろに並んだ。
「お疲れ様くらい言わせてよ。……あ、今日のそのジャケット、新作のやつ? 似合ってるね」
「うるせえ、服の話なんかしてねえだろ。……おい、おまえ昨日何時に寝た」
「え? ええと……パトロールから戻って、報告書を書いて……2時半くらいかな?」
「あぁ!? ふざけんな、睡眠時間が足りてねえ。さっさとそのクマを消せ」
「これでも寝た方だよ……。かっちゃんこそ、目がちょっと充血してるよ? 朝トレ、やりすぎたんじゃない?」
「俺のトレーニング量に口出ししてんじゃねえ、デク。てめえの軟弱な体質と一緒にすんな」
毒づきながらも、爆豪の歩調は緑谷が隣に並びやすいよう、絶妙に調整されていた。
定食屋『荒川』にて
二人が入ったのは、大通りから一本入った路地裏にある、小綺麗な定食屋だった。 お昼時で混み合っていたが、運良く奥の座敷席が空いている。
「いらっしゃい! ……おや、爆豪さん。今日はお連れさんも?」
「……あぁ。こいつにまともなもん食わせねえと、うるさくてかなわねえからな」
「まあ! 緑谷さんもご一緒なんて。光栄だわぁ」
店主の妻が嬉しそうに二人を案内する。No.4とNo.5が揃ってランチをしている光景は、一般客から見れば驚天動地のはずだが、この店は爆豪が「馴染み」として選んだだけあって、客層も落ち着いており、騒ぎになる気配はなかった。
「……かっちゃん、ここ、いい雰囲気だね」
「黙ってメニュー見ろ。おまえは『日替わり御膳』一択だ。鯖の味噌煮と、小鉢が5つ付く。鉄分とタンパク質だ」
「あはは、勝手に決められちゃった。……でも、美味しそう。僕はそれで。かっちゃんは?」
「俺は激辛麻婆豆腐定食。山椒多めだ」
注文を終え、温かいお茶をすする。湯気の向こうで、緑谷が少しだけ真面目な顔をした。
「……ねえ、さっき言いかけたけど、今日の朝トレ何したの?」
「……指先と腕の瞬発力強化だ。昨日の現場で、一瞬だけ反応が遅れた。あれじゃNo.1は獲れねえ」
「やっぱり……。かっちゃんの爆破の初速、最近また上がってるよね。でも、反動が肘にきてるんじゃないかなって、映像を見てて思ったんだ。少し射出角度を外側にズラせば……」
「……おまえ、飯の時まで分析(ノート)モードかよ」
爆豪は呆れたように息を吐いたが、その瞳には熱が灯っている。
「言われなくても修正済みだわ。それより、おまえの『黒鞭』の取り回しだ。捕縛の際、末端の振動がブレてんだよ。もっと体幹で押さえ込め。無駄な動きが多いんだよ、おまえは」
「う……痛いところを突くなあ。最近、同時発動のバランスに気を取られすぎて、基礎が疎かになってたかもしれない」
「反省してんなら今すぐその猫背を伸ばせ。飯が不味くなる」
二人の会話は、どこまでもヒーローとしての高みを目指す内容だった。けれど、その言葉の端々には、お互いの戦い方を、誰よりも深く、細部まで理解し合っているという自負が滲み出ている。
「お待たせしました! 日替わりと、麻婆豆腐ね」
運ばれてきた料理を前に、緑谷の目が輝いた。
「わあ……すごい、小鉢が本当にたくさんだ。……いただきます!」
「……食え。一口30回は噛めよ、クソナード」
「かっちゃん、お母さんみたいだよ」
「……ぶっ殺すぞ」
爆豪は真っ赤な麻婆豆腐を口に運び、緑谷は丁寧な味付けの鯖を咀嚼する。 しばらくの間、食器が触れ合う音と、賑やかな店内の喧騒だけが流れた。
「……ねえ、かっちゃん」
ふと、緑谷が箸を止めて、少しだけ声を潜めた。
「なんだよ」
「こうやって二人で普通にランチに行けるようになるなんてさ。……中学の頃の僕たちが聞いたら、信じないだろうね」
爆豪は麻婆豆腐を飲み込むと、少しだけ視線を外した。
「……過去の話なんかして何になる。俺は今の話をしてんだわ」
「ふふ、そうだね。……今度は、僕の事務所の近くにも良いお店があるんだ。今度、行かない?」
「……気が向いたらな」
爆豪はぶっきらぼうに答えたが、否定はしなかった。 緑谷は満足そうに笑い、再び煮物を口に運んだ。
二人の間にあるのは、まだ名前の付かない、けれど他の誰とも共有できない特別な信頼の形。 冬の陽光が差し込む定食屋の片隅で、No.4とNo.5は、ただの「幼馴染」としての時間を静かに噛み締めていた。
夢梨「終わり」
夢梨「まぁまぁ」
夢梨じゃ
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!