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その日も、バストロは父が射落とした鳥を追いかけ、見つけ出し掴んだ肉を誇らしげに掲げて、草原に居る父に見せながら言った。
「父上ぇー! 見事な雷鳥でございますぅ! ほら、ご覧下さいませぇ! 父上! ち、父う、え?」
体の殆(ほとん)どを石と変え、残された頭部も首筋からグレーに硬質化しながら父親は最後の力を振り絞ってバストロに告げた。
「走れぇー! 逃げるんだぁー! バストロぉー! おおぉぉおぉ、オオォォ……」
目の前で、石と化す父親の最期を見届けたバストロは、手にしていた雷鳥を打ち捨てて一目散に森の中へと走り出した。
――――石化だ、石化が来たんだ! これまで平気だった僕の村も、父上までも…… 石になってしまったっ! 多分母上も、お姉ちゃんもぉっ! 逃げなくっちゃ、そうだ逃げるんだ! 独りでも生き延びて次の時代にヒトの営みを引き継がなければならないっ! 父上の言いつけ通り、逃げなくちゃいけないっ!
「あぁっ!」
狩人以外は足を踏み入れない、数千年に渡ってヒトの手が入っていない森の中は、異界そのものである。
大きく迫り上がった松の根に足を取られたバストロは大きく転倒してしまい、そのはずみで足首を捻り、最早立ち上がる事が出来ない事は明らかであった。
――――く、くそぅ! もう逃げられない…… 僕は死ぬのか、こんな中途半端な形で…… もう少しちゃんと足を上げて走っていたら逃げ果せたかもしれないのに…… ち、ちくしょうっ!
「『鉄壁(アスピーダ)』! 少年、もう心配は要らんっ! 魔解治療を施すぞっ! 良いかっ!」
突然目の前に現れた老人がバストロを抱き上げて聞いた。
子供の頃から言い付けられていた通りに、バストロは反射的に答えたのである。
「助けてください! 魔解治療を!」
老人は答える。
「良しっ! 心配するな…… 右目は駄目かも知れんが…… 大丈夫だっ! 命は助かるっ!」
「は、はい……」
命を救われたバストロは老人に師事し、魔術師への道を歩む事となった。
師は魔法道具の盾と剣を良く使う騎士タイプであったが、バストロ自身は体術を駆使する闘士タイプを選択した。
魔術師の仕事の一つ、モンスターを狩る為の技術は大抵の場合この二つのタイプのどちらかを選ぶ事が殆どだ。
人間や野獣、魔獣、竜種にすら襲い掛かり捕食しようとするモンスターを減らす必要は言うまでも無いだろう。