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聖人side
親友失格や。
自分の感情に振り回されて、自分勝手にキスまでしてしまった。
海龍はどう思ったんやろ。絶対嫌われた。気持ち悪いって思ったやろうな。
なんで自分が泣いとんねん。1番泣きたいのは海龍の方やのに。
「聖人……俺さ、」
いやや、なんも言わんといて。
「ほんまごめん、っ…もう帰るわ、」
「…おい、!」
海龍の声が遠くなる。俺は一目散に家に帰った。
なんでしてもうたんか自分でもわからへん…いや、ほんまはわかっとった。
あいつを困らせてまうんも、悲しませてまうんも、全部わかった上で、俺が勝手に限界やった。
家に帰ってから、俺は泣きじゃくった。
後悔が押し寄せてくる。情けなくて涙が止まらんかった。
夜は一睡も出来へんかった。目を閉じる度に海龍の 驚いた時の顔とか、強引に奪った唇の感触ばっか蘇ってくる。
明日どんな顔して学校行けばええん…
いつも通りでっかい声で「おはよ!」って挨拶する?…無理すぎる。そんな器用なこと俺にはできひん。
ぐちゃぐちゃな感情のまま、最悪な朝を迎えてもうた。
最寄りの駅のホームについても心臓がうるさかった。
いつもの場所で電車を待っていると、重い足取りで歩いてくる海龍がみえた。
その瞬間、海龍と目が合った。
いつもやったらでっかい声で海龍のこと呼ぶのに、喉がぎゅっと詰まって上手く声が出えへんかった。
海龍の顔を見るのが怖くて、すぐに顔を逸らした。
席に着くなり、海龍は俺の後ろを追いかけてくる。
「はいこれ、お釣り。」
「ええよお釣りくらい…」
「気にすんな気にすんな」
そう言って俺の肩をポンポンと叩く海龍。
普通に接しようとしてくれる海龍の優しさにただただ心が痛い。無かったことにしようとしてるんが伝わってきて、小さく頷くことしか出来んかった。
気づけば昼休みになっとった。
教室におる気になれへんくて、いつもの屋上へ向かう。
「……はぁ」
大好きな弁当も味がせーへん。
1人で静かに食べることなんかないから違和感しかなかった。
「ほら、やっぱりここおった」
「うわぁっ!!」
「そないびっくりすることないやろ。一緒に弁当食お」
「……大丈夫。他のやつと食ったら?」
こんな言い方しかできへん自分が嫌になる。
「なんでやねん。俺他に友達おらんの知っとうやろ」
「おるやんけ」
海龍は何も言わず俺の隣に座って、弁当を食い始めた。
「トンカツあげるから、そのグラタンちょうだい」
「は?!あかん!これ俺が好きなやつ」
「ふっ、わかっとうって。取らんよ」
一瞬、いつもの空気に戻りかけて、海龍の顔がホッとしたように緩んだ。
あぁ、やっぱこいつは俺と幼馴染でおりたいんや。
「…なぁ、なんで避けるん」
「……避けてへんよ」
「嘘つくな。…昨日のことなら気にしてへんから、お前もそんな気にせんくてええよ。」
気にしてへん?
あれだけ覚悟して奪った唇も、俺の何年も隣におったんも、全部“気にしてへん”で片付けられるんや。
「本気やと…思ってないん」
「え、?なにが…」
「そうやと思っとったわ。じゃあもうなにやっても無駄やん、笑」
どれだけ足掻いても、俺はこいつの男にはなれへん。幼馴染は、思ったより辛かった。
「俺のことなんでもわかるんやったらはよ気づけよ、っ…」
涙が出そうになったけど必死にこらえる。
「俺はずっと幼馴染なんかいややった、ずっと好きやってん、っ!!」
今まで溜まっていたものが全部口から自然と溢れ出す。
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「…もう話しかけんといて」
「…は?なんでそうなんねん!」
「しんどいねんお前とおると!!」
海龍の顔を見ると、涙目で今にも泣きそうな顔をしている。
自分が泣かせたも同然やのに顔が見れへん。
「……来んな」
ちゃう、こんなこと言いたくない。
でも今の海龍の隣におるんは、もうしんどかった。
俺は逃げるように屋上を後にした。
なんであんなん言ってもうたんやろ。